【マンション業界の秘密】業界悪弊の一種、都市伝説化する「モデルルーム見学」

夕刊フジ / 2018年4月17日 16時57分

写真

モデルルームより、建設予定地を確かめることだ(夕刊フジ)

 もうすぐゴールデンウイーク(GW)。マンションのモデルルームを見学する方も多いと思う。

 モデルルームというのは大規模マンションでもない限り、敷地の外の便利な場所にある。だいたいが駅の近く。ほとんどの人が、そこで販売担当者に説得されて購入の意志を固めていく。私から見ると実に不思議な仕組みだ。

 というのは、都市型の住宅であるマンションの資産価値は9割が立地で決まる。ということは、その物件にとって9割分の情報は現地にあるはず。逆に言えば、モデルルームでは1割程度の情報しか得られないとも言える。

 私は1カ月に50カ所以上、販売中の新築マンションの現地を見に行く。たいていは昼間。土曜や日曜に行く場合も多い。

 しかし、そこで検討者らしき人を見かけることはめったにない。図面と照らし合わせながら、ぜひ現地を見てほしいと思う。

 また、現地の周辺も歩き回ってほしい。あまり知らない街に建つマンションなら、なおさら歩き回るべきだ。

 販売サイドはモデルルームを重視する。「モデルルームがないと販売できない」と考える業界人も多い。物件の規模が小さく、これを設営する販売予算がない場合は、「竣工販売」と称して建物の完成後、その一室を躯体内モデルルームとして客に見せながら販売する。

 ただ、モデルルームが販売活動にとって必要不可欠なアイテムとは思えない。現にほとんどの自社物件で設営せず、建物完成までに完売させる有力デベロッパーもある。モデルルームは販売にとって絶対必要-というのは都市伝説なのだ。

 マンションを買おうと検討する人にとってもモデルルームはほとんど意味がない場合が多い。その理由はいくつかある。

 まず、いくつもある間取りプランの中で、もっとも格好がいいタイプで作られるケースが多い。販売側にとって見せやすい、つまり購入を決断させやすい間取りだ。

 しかし、客側からすると、モデルルームの間取りが自分の買いたいタイプと同じだとはかぎらない。間取りが異なれば、ほぼ意味がない。設備や仕様を確認できるだけ。そういったものはサンプルを見せてもらえば十分とも言える。

 それでいて、モデルルーム内は専門のインテリアコーディネーターが腕によりをかけてデコレーションしてある。そんな現実離れした空間は、その物件の資産価値とは何の関係もない。見る人に妙な幻想を抱かせるだけだ。

 本来、モデルルームを作るのならインテリアは極力シンプルにすべきだろう。強烈なイメージを避けた方が、見る人は自分たちの現実の生活についてシミュレーションしやすいはずだ。

 結局、モデルルームとは検討客に勝手なイメージを抱かせて、購入意欲を高めさせるためのイリュージョンの仕掛けである。この業界の悪弊の一種と言っていい。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

fuji

トピックスRSS

ランキング