【定年世代の最新事情 60代への助走】香港出身の妻と二人三脚でアパート経営 家賃収入は年間720万円

夕刊フジ / 2018年8月10日 17時2分

★(3)

 年金受給年齢は引き上げられる。預金金利はほぼゼロ。ああ、将来への不安は尽きない。だからこそサラリーマンにとってアパート経営は憧れの的なのだ。

 けれども、落とし穴がある。

 「女性向けシェアハウス『かぼちゃの馬車』に投資した人はほんとうにかわいそう。少なくとも半分は自己資金がなくては危ういですよ」

 そう語るのは、家賃収入が年間720万円もある神山正さん(仮名、59)だ。

 元をただせば神山さんも普通のサラリーマン。社会に出て最初に就いた職はプログラマーだった。印鑑証明、住民票、戸籍謄本などに関わるシステムを作っていたが、1年もたたずに超長時間労働に音を上げ退職した。

 「半年後に新聞広告で見つけた古タイヤを輸出する会社に入社した。日本の古タイヤは品質がよく、海外で再生タイヤの材料として使われていました」

 神山さんは古タイヤの品質を見分け、輸出営業のノウハウを培い、ニッチな業界になじんだ。その上、香港出身の現在の伴侶と知り合い、33歳のときに結婚している。

 「取引先の娘だったんです。義父がやっている会社で、日本からの購買を担当していました。そのうち、所属していた貿易部が本社のある茨城に移ることになった折に思い切って35歳で独立・起業しました」

 アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、香港、マレーシアなどに古タイヤを輸出。貿易は同じことの繰り返しなので妻との二人三脚で十分仕事は回った。年商は1億円を超え、商売は有卦(うけ)に入った。そんな折に妻が言った。

 「アパート経営を始めましょう。どんな商売もいつまで続くかわからないから」

 最初は東京・小岩に、次に浅草の中古マンション3階建てを一棟分購入した。いずれも最寄駅から歩いて2、3分。価格は4000万~5000万円。浅草の物件は、1階は店舗で家賃20万円、2階、3階が1LDKで総計6部屋。家賃6万5000~7万円。

 「3LDKよりも1LDK3つのほうが利回りが高いんです。ちなみに浅草は14・5%の利回り。半分は自己資金で購入し、借入金利は1・7%です。都会でも駅のそばが絶対条件です」

 小岩の物件はすでに売り払ったが、今は横須賀、所沢にもアパートを持つ。一方、古タイヤの商売は閑古鳥が鳴くようになった。日本の取引先が自分で輸出をやりはじめて、商売のうまみがなくなったという。

 「不動産も人口減少を考えるとそろそろ手じまいしたほうがよさそう。昨年からはビットコインに手を出して100万円少し儲かりました。でも年金はもらえても月8万円前後で、子供2人はまだ私立の大学生。老後は妻が不動産投資をしている物価の安いミャンマーあたりで暮らすのも一考かなと…うらやましい? ええ、妻は商売にはシビアな目をもっていますから」

 持つべきは目先の利く華僑系の妻なのか。 (つづく)

 ■風樹茂(かざき・しげる) 著述業。国際コンサルタント。アルバイター。世界40カ国を踏査。ベネズエラ、カタール、ボリビアに駐在。著書に『東京ドヤ街盛衰記』『ホームレス入門』『ラテンの秘伝書』など多数。

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