【命を奪う心不全を防ぐ!】大動脈弁狭窄症 高齢者に手術の道開いた最新治療

夕刊フジ / 2018年5月17日 16時57分

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渡辺弘之医師(夕刊フジ)

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 心臓には4つの部屋があり、その境には血液が逆流しないように4つの弁がついている。このうち、左心房と左心室の間にある僧帽弁と、左心室と大動脈の間にある大動脈弁が悪くなる「弁膜症」が増えている。

 弁膜症には、弁の閉じ方が不完全で血液が逆流してしまう「閉鎖不全」と、弁の開きが悪くなり血液を送り出すのに余分な力がいる「狭窄」がある。そのうち増えているのが「大動脈弁狭窄症」と「僧帽弁閉鎖不全症」だ。今回は大動脈弁狭窄症の治療法を説明する。

 病気の原因は、本来3枚ある弁が生まれつき2枚であるため(先天性2尖弁)や、子供の頃に感染するリウマチ熱によるもの、そして何と言っても多いのが加齢により弁が硬くなることだ。弁を取って人工のものと入れ替える外科的治療が根本治療となる。大動脈弁狭窄症の外科的治療には、「大動脈弁置換術」と「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)」の2つがある。

 前者は胸の真ん中を縦に開いて胸骨を切る、標準的な治療だ。切開部分が大きく骨も切り、心肺を止めて行う手術なので、体力のない高齢者はできないことも多かったが、東京ベイ・浦安市川医療センター、ハートセンター長の渡辺弘之医師は、「治療の選択肢、可能性を広げたのがTAVIと低侵襲心臓手術(MICS)だ」と話す。

 TAVIは、カテーテルという管を太ももの付け根の動脈や左胸を少し開いて心臓の先(心尖部)に穴を開けて挿入し、風船と折りたたんだ人工弁を大動脈の位置で止めて、風船をふくらませて広げて留置する。MICSは、大動脈弁置換術を行う際に、胸骨を通常の半分だけ切って行う、傷が小さく目立たない手術だ。

 「TAVIもMICSも従来なら手術に耐えられなかった高齢者などに治療の道を開きました。さらにMICSは、働き盛りの中高年の入院、社会復帰までの時間を短縮しました」(渡辺医師)

 最新治療でも標準治療でも欠点は必ずある。たとえばMICSは傷が小さいので、患部が見えづらい中で繊細な作業をしなければならず、通常の開胸手術より時間がかかる。何がベストかは患者個々の状態で変わるので医師とよく相談したい。

 手術法や病院選びについて、同病院心臓血管外科部長でMICSの第一人者の田端実医師がアドバイスする。

 「手術法の選択肢が多い病院を選ぶといいでしょう。たとえばTAVIの手術件数がとても多い病院で、本当は開胸手術やMICSの方がより患者に合っている場合でもTAVIを勧められることがあります。逆も然りで、腕に覚えのある外科医がTAVI適応の患者さんに開胸手術を勧めてしまうこともあります」

 また、せっかくTAVIやMICSが成功しても、術後ケアやリハビリをしっかりやらないと早期退院、早期社会復帰につながらない。

 「日本の医療は優れているが、それでもとくに心臓手術は医師や病院によって実力差が出る。患者さんご自身、そしてご家族のためにぜひ良い病院を選んでください。目安は、欠点を含め術式をていねいに説明し、医師だけでなく他の医療者も含めたチーム医療を大切にしているところです」(田端医師)

 次回は僧帽弁閉鎖不全症について。(石井悦子)

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