【ぴいぷる】チンパンジーとヒト比較 人間はたやすく絶望、彼らは「今・ここ・私」 霊長類学者・松沢哲郎氏

夕刊フジ / 2018年5月17日 17時1分

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松沢哲郎氏(夕刊フジ)

 京大霊長類研究所で1977年秋、「チンパンジーの心と生態を研究する「アイ・プロジェクト」がスタートする。以来、その牽引役となってきた。チンパンジーとヒトを比較することで「人間とは何か」を追究する「比較認知科学」が専門。「アイ」はチンパンジーの名前だ。

 「“彼女”は今41歳。最初に会ったとき、じっと見つめ返してきた。他の動物は人間と目を合わせないが、人は親愛の情を伝えるため見つめ合う。チンパンジーも同じなんだと驚いたものです」

 ■チンパンジーには人より優れた記憶力

 写真はパル(16)の学習光景。アイの息子のアユムの異母兄妹だ。

 「コンピューターパネル上にランダムに現れる1~19の数字、またそれらの飛び飛びの数を小さい方から順に指差します。正しいとブザーが鳴り、8ミリ角のリンゴを1個、ごほうびにもらえる。それが30分間。ほかにも数字をマスクして(=伏せて)記憶力を試したり、色が付いた漢字を選ばせたり、お絵かきにも挑戦する。アイから連綿と続くこの実験で、チンパンジーにはヒトより優れた記憶力があることも分かりました」

 数や漢字がわかる“天才チンパンジー・アイ”の名前が世界を駆け巡ったのも、一連の学習の結果だった。

 「アイたちの研究のかたわら僕は、アフリカで野生チンパンジーの研究もしてきました。彼らは地域ごとに固有な文化を持っている。例えば、ギニア・ボッソウで親から子に文化が伝わる様子を観察したとき、アイたち同様そこでも“教えない教育・見習う学習”が見られました」

 ボッソウでは2つの石を使い、硬いアブラヤシの種割りをする場合、親はその行為を子の前で披露するだけ。子が失敗しても手を添えはしなかった。人間は先回りして子や部下にあれこれ教えすぎる。「見習う学習」の大事さを人も認識すべきなのかもしれない。

 「僕は何も言いませんよ。単に僕というヒトの先生とチンパンジーの生徒が積み上げてきた学習から見えてきたものを紹介しているだけです」

 ■人間はたやすく絶望 彼らは「今・ここ・私」

 この研究所のチンパンジーから新たな能力も発見された。協調性、思いやりといった情動。次の実験でそれが明らかとなった。

 「“2人”は2つのパネルを前にそれぞれ座り、1~19の数を小さい方から順に交互にタッチします。正解が分かってもわれ先にタッチするといったことはしません」

 チンパンジーも協調性の大事さを知っている?

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