西日本豪雨で痛感…自衛隊派遣で懸念される「複合事態」 防衛問題研究家・桜林美佐氏が緊急リポート

夕刊フジ / 2018年7月12日 17時1分

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西日本の豪雨災害でボートで住民を救出する自衛官=岡山県倉敷市(夕刊フジ)

 西日本を中心に甚大な被害を出した「平成30年7月豪雨」で、自衛隊は、広島や岡山、愛媛など7府県から災害派遣要請を受け、住民救助や行方不明者の捜索、水害対応に当たっている。大阪北部地震などへの、災害派遣が続くなか、懸念される「複合事態」と、自治体側の課題とは。防衛問題研究家の桜林美佐氏が緊急リポートした。

 自衛隊が、消防や警察と連携して西日本各地で救助活動を続けているなか、関係者の血の気が引いたのは7日夜だった。千葉県で最大震度5弱の地震が発生したのだ。

 幸い災害派遣には至らなかったが、自衛隊として最も起きてほしくないのは、同時に2つ以上の災害などが発生する「複合事態」だ。

 6月18日には大阪で震度6弱の地震が発生し、災害派遣活動を続けていた陸上自衛隊の部隊は同28日に撤収したばかりだった。同時多発、あるいは立て続けの災害に自衛隊が対応しきれるのかと問われれば、はっきりと「ノー」と答えなくてはならない。

 毎度の繰り返しになるが、自衛隊の人員規模(陸海空で23万人弱)では、さまざまな要望に応えるのは不可能である。自衛隊への全面的な依存を見直し、地域それぞれの対応力を高めていくことが急務といえる。

 かつての「隣組」のような地域コミュニティーをつくる、あるいは退官した地元の自衛官たちで自治体の防災組織を構成するなど、でき得ることはあるはずだ。

 また、SNSなどで情報が得やすくなったことはいいが、一方で自衛隊に対する誤解も根強いことが分かる。「自衛隊が来てくれない」というものだ。自衛隊は自治体からの災害派遣要請を受けて派遣されるものであり、翻れば要請という根拠なしに勝手に動くことは許されていない。

 大規模な災害が発生した際に要請を待たずに自主派遣という形で緊急的に駆けつけることはできるが、これはあくまで初動にすぎない。具体的な行動は自治体が要望しない限りできないため、「自治体が自衛隊に何をしてほしいのか指示がなく困っている」という声は、しばしば耳にする。

 他方、受け入れ側も、何をどう頼んでいいのか分からないのもやむを得ないとも言える。実際には自衛隊の指揮官には、役場を叱咤激励し、自衛隊に依頼する内容を示唆する役割までも求められているのが実態だ。

 しかし、最終的には、やはり県や市町村がオーダーをする必要がある。防衛省としては、いかなる要請を受けて活動しているかを防衛相に伝え、それを国民に知らせなくてはならないからだ。そんななか、各地の議員からは要望が次々寄せられるようになり、自衛隊が戸惑うことは常である。

 いずれにしても、自衛官たちは人々を助けたい一心で懸命に活動している。その献身を生かすためにも自治体の能力向上は「災害大国・日本」にとって欠かせないと改めて感じている。

fuji

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