【米中熱戦と日本の針路】3原則を裏切り続ける中国に安倍首相が「強烈な皮肉」

夕刊フジ / 2018年11月8日 17時1分

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 安倍晋三首相は10月末、500人もの財界リーダーらを引き連れて、訪中した。日本では平凡に、日中友好平和条約締結40周年を祝賀するものと報道された。

 だが、マイク・ペンス米副大統領による「対中宣戦布告」演説の直後だけに、「安倍政権の対中接近は、日米同盟にヒビを入れるのではないか」と危惧する向きもあった。安倍首相は9月末の日米首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領と「日米が固く結束し、対中包囲網をつくる」と約束していたからである。

 事態を詳しく見ると、安倍首相は決して原則的問題でチャイナ(中国)には妥協していなかったことが判明する。

 筆者が注目したのは、10月25日のレセプションでの安倍首相のあいさつである。表面上の言葉では穏やかに、日中平和友好条約締結40周年を祝賀しているものの、肝心のところでは、中国側に「強烈な批判」を投げかけていたのである。

 そして、安倍首相は翌26日、習近平国家主席と李克強首相と個別に会談し、「新たな時代」の日中関係構築に向けて、「競争から協調」「脅威でなく協力のパートナーに」「自由で公正な貿易の推進」という3つの新原則を確認した。

 安倍首相が指摘した3原則は、中国が裏切っているものばかりである。

 実際、安倍首相の訪中時も、中国海警局の艦船が、沖縄県・尖閣諸島の接続水域に侵略していた。安倍首相の3原則発言は、中国の「侵略主義」を強烈に皮肉ったものといえるだろう。

 また、安倍首相は訪中で、対中ODA(政府開発援助)の終了を宣言した。今まで継続していた方が異常だった。日本はもはや、「暴走する中国を援助しない」と宣言したのである。

 ただ、禍根を残したのは「日中通貨交換(スワップ)協定」再開である。この協定は、尖閣諸島をめぐる日中関係悪化に伴い、2013年に効力を失っていた。今回の再開は、上限が3兆4000億円で、失効前の約10倍となっている。

 米国が高関税で、中国のドル獲得能力を強制的に削減しようとしているときに、多額の通貨スワップを提供することは、中国に助け舟を出すものだ。日本側が供給するのは円だが、円はすぐにドル転換できる。事実上、ドル不足に陥った中国を救済するものといえる。

 おそらく、安倍首相としては、自民党総裁「連続3選」に協力してくれた党内の親中派や、連立与党の公明党、親中勢力の強い財務省に促されて、協定再開を決定したのだろう。

 中国の対日ロビイングが成功したかたちだ。協定は再開されたが、実際に実行するかは、時の政権の判断に委ねられる。日米同盟に離反するようなかたちでのスワップの実行を、安倍政権は拒絶するものと期待したい。

 ■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオなどで活躍する。著書に『国境ある経済の復活』(徳間書店)、『太平洋戦争の大嘘』(ダイレクト出版)など多数。

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