インタビュー:新型ウイルスで「原料高・製品安」、ダウンサイドに備え=日鉄副社長
ロイター / 2020年3月2日 7時52分
3月2日、日本製鉄の宮本勝弘副社長はロイターとのインタビューで、戻りつつあった鋼材価格が新型コロナウイルスの影響で値下がりに転じており、再び「原料高・製品安」に陥っていると述べた。写真は千葉県の君津製鉄所で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
清水律子 大林優香
[東京 2日 ロイター] - 日本製鉄<5401.T>の宮本勝弘副社長はロイターとのインタビューで、戻りつつあった鋼材価格が新型コロナウイルスの影響で値下がりに転じており、再び「原料高・製品安」に陥っていると述べた。現時点では新型ウイルスの影響は大きく出ていないが、今後の感染拡大や工場稼働は不透明で「ダウンサイドに備える」としている。
宮本副社長によると、鋼材市況は少し回復し始めていたものの、新型ウイルス感染拡大により、弱くなっているという。中国の製鉄所の2月上旬の在庫が前年比3割増加しており「それが市場に出てくると思ってユーザーは買い控えている」。
日鉄でも「上海では引き取りが止まっていて、出荷ができないため、製鉄所の中に置いている」という。
また、中国は原料炭の3割強をモンゴルから輸入しているが、新型ウイルスの影響で、モンゴルが中国との国境を封鎖。これにより、原料炭の価格が上がっているという。さらには、鉄鉱石は豪州のサイクロンの影響で上がっており、再び「原料高・製品安」の状況となっている。
宮本副社長は、生産調整は「今のところない」としながらも「(工場などの)再開が遅れたりすると、いろいろ効いてくる。(新型ウイルス拡大は)決してプラスには働かない」と、先行きの不透明さを指摘した。そのうえで「やるべきことを粛々とやる。どちらかと言うと、ダウンサイドに備える」と述べた。
<必要ならさらなる削減検討も>
同社は2月、呉製鉄所の全面休止などを盛り込んだ構造改革を発表。現在、連結ベースで5400万トンある国内粗鋼生産能力を約500万トン削減する。
宮本副社長は「今の生産量なら、他で吸収できるため、限界利益を失うものではない。ここからさらに削減すると、限界利益を失うことになる」と指摘。そのうえで「すぐにやる必要はないが、この先の国内需要や輸出規模を見ながら、必要ならば、さらに検討していく」と述べた。
2019年の全国の鋼材消費は5980万トンの見通し。宮本副社長は「大変厳しい状況。自動車、産業機械、造船とあらゆる産業で間接輸出を中心に量が落ちている」と指摘。輸出についても「中国の沿海部にも製鉄所ができており、そこから輸出が増える可能性もある。将来的に輸出比率40%をずっと続けていくのは難しい」との見通しを示した。
*インタビューは2月27日に行いました。
(編集:青山敦子)
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