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アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴーストタウン化

ロイター / 2024年6月1日 14時57分

 5月27日、アルゼンチンのミレイ政権が昨年12月に行った通貨ペソの大幅に切り下げやその直後に導入した「クローリング・ペッグ制」、そして根強いインフレが、輸入と輸出の両面を通じて経済活動や国民生活に痛みを与え続けている。写真は16日、アルゼンチン国境に近いパラグアイ・ナナワで、アルゼンチンとパラグアイの紙幣をやり取りする店員と買い物客(2024年 ロイター/Cesar Olmedo)

Daniela Desantis Lucinda Elliott

[ナナワ(パラグアイ) 27日 ロイター] - アルゼンチンのミレイ政権が昨年12月に行った通貨ペソの大幅に切り下げやその直後に導入した「クローリング・ペッグ制」、そして根強いインフレが、輸入と輸出の両面を通じて経済活動や国民生活に痛みを与え続けている。

クローリング・ペッグ制は、毎月2%と抑制された幅でペソ切り下げを容認する仕組みだが、これはペソの過大評価をもたらしており、再切り下げの可能性もくすぶる。

一方で物価上昇率を加味したドル建て価格は高騰が止まらない。例えば今年初め時点で1000ペソの商品は公式レートを適用すると1.24ドルだったが、4月までの65%という累積的な物価上昇率を踏まえれば、4月末の同じ商品は1650ペソ、1.88ドルと50%余り値上がりしたことになる。

ウルグアイ・カトリック大学でウルグアイとアルゼンチンの物価動向を比較研究している経済学者のヒメナ・アブレイユ氏は「アルゼンチン国民にとってこのプロセスは苦痛だ」と述べ、短期的に輸出と観光が打撃を受けると付け加えた。

アブレイユ氏の研究チームがまとめたデータによると、ミレイ大統領就任前の昨年9月はウルグアイよりアルゼンチンの物価が180%低かったが、今年3月になるとアルゼンチンの物価上昇によって差は50%に縮小。アブレイユ氏は「目先、アルゼンチンの輸出品は競争力が低下する」と指摘した。

<消費に悪影響>

物価上昇に歯止めがかからず、一般的なアルゼンチン国民の消費にも悪影響が出ている。

昨年9月は牛肉1キロ当たりの平均価格が2846ペソ(当時の並行市場レートで約3.70ドル)と、最低7ドルだったウルグアイ首都モンテビデオやチリ首都サンティアゴを大きく下回っていた。

ところが今年4月の牛肉は1キロ6505ペソ、7ドル近くに跳ね上がっている。

17年前に米国からアルゼンチン首都ブエノスアイレスに移住したページ・ニコラスさん(37)は「比較的余裕のあるドル収入の生活は極端に正反対の方向に振れてしまった。今は支出項目を念入りに考えなければならない」と話す。

ニコラスさんはロイターに、昨年12月のペソ切り下げ以降、主に医療費や公共料金、食料品などの負担が膨らんだため、家計支出は約150%も増加したと明かした。

アルゼンチンではオリーブ油や歯磨き粉までがちょっとしたぜいたく品になりつつある。ロイターが調べたところ、ブエノスアイレスではオリーブ油500cc(500ミリリットル)の平均価格が15ドルで、幾つかのブランドは26ドルに設定されている。コルゲートの90グラムの歯磨き粉は平均4976ペソ、5ドルとパラグアイやウルグアイの小売店の2倍だ。

旅行業界で働くニコラスさんの話では、アルゼンチンの商品やサービスはかつて観光客にとって割安だったが、今は近隣諸国や米国とさえも同じ水準になってきた。ブエノスアイレスでの外食費用は1年前のほぼ倍に上がっているという。

<隣国の町にも逆風>

こうしたアルゼンチンの経済情勢は、同国との国境にあるパラグアイの町ナナワにまで逆風をもたらしている。

かつてのナナワは、割安だったアルゼンチンの燃料や医薬品、食料品などを求めるパラグアイの買い物客で大賑わいだったが、現在は「ゴーストタウン」に変わった。アルゼンチンの急激な物価上昇とクローリング・ペッグ制の下でのペソの過大評価により、肝心の割安感がなくなってしまったからだ。

当地の薬局で働くマルタさん(57)は「以前は万事が順調で何でも売れたが、今はもう何も出て行かない。2カ月間ずっとこんな調子で、町は死んでいる」と語る。

ナナワの複数の商店経営者はロイターに、ミレイ政権が発足した昨年12月以降で売上高は60―80%も落ち込んだと明かした。

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