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アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代の環境戦士ら

ロイター / 2024年6月2日 8時8分

 抗議行動から政治の世界へ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんから影響を受けて育った若き活動家らが、成人しつつある。そして、路上で抗議しているだけでは不可能だった変革を実現するため、政治の世界を目指そうとしている。写真は、独ハンブルクでプラカードを持ち、抗議活動を行うグレタさんと活動家ら。2020年2月で撮影(2024年 ロイター/Fabian Bimmer)

Joanna Gill

[ブリュッセル 28日 トムソン・ロイター財団] - 抗議行動から政治の世界へ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんから影響を受けて育った若き活動家らが、成人しつつある。そして、路上で抗議しているだけでは不可能だった変革を実現するため、政治の世界を目指そうとしている。

学生ストライキの先頭に立ったトゥンベリさんにインスパイアされた約20人の「環境戦士」らは、気候変動との戦いにおいて、横断幕を掲げる代わりに、パリからプラハに至る各地で選挙運動を開始している。

典型的な例が、チェコ出身のペトル・ドブラフスキーさん(22)だ。

ドブラフスキーさんは高校生だった2018年に、トゥンベリさんが気候変動対策を求めて起こした学生ストに同調し、チェコ支部を共同で創設。デモ行進のため、毎週金曜日の授業をボイコットした。

現在はブルノ大学で経済と環境を学んでいるが、政界の表舞台への第一歩を踏み出すことを決意した。6月の欧州議会選挙で緑の党から立候補する。

チェコの被選挙権年齢は21歳であり、今回がドブラフスキーさんにとって最初の立候補の機会だ。だがこのたび決意に至った理由は、単なる年齢の問題ではない。

「出馬に当たって考えるべきことはたくさんあった」。ドブラフスキーさんはトムソン・ロイター財団の取材に対し、政界ではなく社会の中でうねりを起こすことと、政界内部から改革に向けた立法を行うこと、それぞれの長所や短所を簡潔に語った。

これまで行っていた、議会近くでの抗議活動について、ドブラフスキーさんは「市民的不服従運動には、政治と同様の正当性がある」と語る。

だがその一方で、建国から日の浅いチェコ共和国には国内育ちのロールモデルが不足しているとも感じている。

「特にチェコにおいては、草の根の活動を経て政治の世界に入る人材が不足している」

<「環境軍団」の新たな前進>

ドブラフスキーさんをはじめ、かつて気候変動対策を求めて授業を放棄した一握りの若き「学校スト活動家」は、成人年齢を迎えつつある。その一部は、6月6-9日に実施される欧州議会選挙などの政治の場で自らの主張を訴えようとしている。

前回2019年の欧州議会選の際には、各国政府や企業に温室効果ガス排出の削減と気候変動抑制を義務付けることを要求する抗議運動「未来のための金曜日」のため、600万人以上が路上に繰り出した。

今回の選挙では、議会進出を狙う右派ポピュリスト政党が、欧州連合(EU)の野心的な気候変動政策に反発。若き環境活動家らはこれに対抗したいと考えている。

ドブラフスキーさんは「気候危機に責任がある者たちにその代償を払わせる必要がある」と言う。

大規模な抵抗運動がピークを迎えた2019年以降、活動家らは地球温暖化による最悪の事態を回避するため、多くの新たな対策を検討してきた。

頻繁に逮捕されるリスクを負いつつ世界各地で直接行動を行うトゥンベリさんのように、抵抗の道を選んだ人もいる。

他方で、信頼性と勢いのある若手を候補者リストに加えたい有力政党にスカウトされた活動家もいる。

オーストリアで最も有名な気候変動ストの指導者であるレナ・シリングさんは、緑の党の有力候補者だ。フランスの活動家シビル・ドゥビレさんは、社会党系のプラス・ピュブリックから立候補している。

大学生活を通じて政治への新たな覚醒を果たしたドブラフスキーさんとドゥビレさんの2人にとって、こうした路線変更は自然な進化に思われる。

「経済学を学んで、物事の大半は選択と政治的な方向づけの問題だと気づいた」と、ドゥビレさんはトムソン・ロイター財団に語った。

フランス屈指のエリート校、パリ政治学院(シアンス・ポ)の2年生で19歳のドゥビレさんは、講義への出席と選挙運動を両立している。ただ、気候を巡る正義を求める自分の戦いにとって、今回も学業は二の次だと認める。

「今年は多くの時間を選挙運動にあてることを選んだ。自分の責任を果たすということは、若き気候変動世代を代表することに全力を尽くすということだから」

ドブラフスキーさんは自身の進化についてもっと現実的に見ている。

草の根活動家として、ドブラフスキーさんにはすでに多くのノウハウがある。

政界には馴染みが薄いものの、抗議集会の開催、スピーチ草稿の執筆など、政治活動のつぼは押さえている。

ドブラフスキーさんは長い金髪を耳にかけながら、意味ありげに微笑み「政治の世界では、容姿や振る舞い、口のきき方についてまでいろいろとプレッシャーがかかる」と語った。

<環境志向の選挙への反動>

ドブラフスキーさんが当選すれば、EU加盟国の政府とともに、720人の欧州議会議員の一員として新たな法令を制定していくことになる。

今回の選挙は、EUが2030年を期限に掲げたエネルギーと気候に関する目標を達成し、「グリーンディール」政策を本格展開する上で、極めて重要なタイミングで実施される。

時を同じくして、農業のグリーン目標の後退や、農民の抗議を受けた生物多様性法の緩和など、EUの気候変動政策に対する反動は大きくなっている。

極右政党は環境に優しい政策への移行にかかるコスト急増への懸念にも便乗して、議席を増やす見込みだ。

欧州の大半の人々は気候変動対策を支持しているものの、その代償を懸念する声は多いとの調査結果が出ている。

また世論調査では、右派の進出が予想される一方、現欧州議会で第4党である欧州緑の党は、第5か第6党に後退する見通しだ。調査機関ヨーロッパエレクツによると、欧州社会党も議席を減らすものの第2党の座は守りそうだ。

オーストリア緑の党のシリングさんは、政策を巡る批判以外にも、私生活に対するメディアの厳しい追及という形で政界の厳しい洗礼を受けている。一方、他の候補者は強気の発言を繰り返すものの、当選の見込みはほとんどないという。

だとすれば、政界主流派がこれまで通りの政治を続けるのだろうか。

活動家らは、気候変動対策への情熱がまだ新しいものであるのと同様、近年の欧州政界中枢に揺さぶりをかけるという狙いも始まったばかりだと言う。

「今回の選挙には、気候危機へのカウントダウンが今も進んでいるという点で、歴史的な意味がある」とドゥビレさんは言う。「気候危機に国境はない。まさにEUレベルで、変革を行う必要がある」

(翻訳:エァクレーレン)

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