アングル:バイデン氏の「大失敗」討論会、背後に側近らの判断ミス
ロイター / 2024年7月1日 13時13分
バイデン米大統領が6月27日の大統領選討論会で「大失敗」した背景には、最上級顧問らによる一連の判断ミスがあったとみられることが、民主党関係者や献金者、現・元側近らの話で明らかになった。写真はアトランタで討論会に臨むバイデン氏(右)とトランプ氏(2024年 ロイター/Brian Snyder)
Trevor Hunnicutt Nandita Bose Jarrett Renshaw Steve Holland
[30日 ロイター] - バイデン米大統領が27日の大統領選討論会で「大失敗」した背景には、最上級顧問らによる一連の判断ミスがあったとみられることが、民主党関係者や献金者、現・元側近らの話で明らかになった。
討論会でトランプ前大統領(78)は、いつものように目に余るような虚偽発言を繰り返した。ところがバイデン氏(81)はそれらに反論できないばかりか、言葉もたどたどしく、民主党内からは再選を断念すべきだとの声や、側近の反省や辞任を求める声が噴き出した。
ある人物は討論会の数日前、バイデン氏の最側近らに同氏を休ませるよう頼んだが聞き入れられなかったと話す。「私が唯一お願いしたのは、討論会の前に彼を休ませてほしいということだったが、彼は(当日)疲れ切っていた。体調を崩していた。病んで疲れ切っているように見える彼を送り出すとは、なんという判断ミスだろう」
もっと鋭い批判もある。
バイデン氏の主要な献金者である弁護士のジョン・モーガン氏は「(事前の)アドバイスと練習が過剰だったと私は思う。そして(上級顧問の)アニタ・ダン氏は、トランプ氏を有利にする舞台にバイデン氏を立たせてしまったのだと思う」と語る。
モーガン氏は、ダン氏や他の側近を「永久に解雇し、二度と選挙運動に近づけさせない」ようにすべきだとの考えを示した。
バイデン氏の討論戦略は、2020年の大統領選で同氏の勝利を助け、今年1月に選挙対策委員長に任命されたジェン・オマリー・ディロン氏の承認を受けている。長年にわたるバイデン氏の側近で、オバマ元大統領の選挙参謀も務めたダン氏がその戦略を支持した。
討論会に臨むバイデン氏陣営は自信に満ちていた。トランプ氏は5月31日に有罪評決を下された。そしてバイデン氏らの側近らも驚いたことに、世論調査でずっと低迷から抜け出せなかった同氏の支持率が、その後の数週間でじりじりと上がり始めていたからだ。
顧問らは、バイデン氏がワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」に6日間缶詰になるという厳しい討論会準備スケジュールを組んだ。
準備に関与したのは、バイデン氏の最初の大統領首席補佐官を務めたロン・クレイン氏、前出のダン氏、長年の側近マイク・ドニロン氏などのほか、政策・政治専門家約12人だった。
バイデン氏陣営は28日、スタッフの交代は検討していないと述べた。
オマリー・ディロン氏は29日に支持者に宛てた電子メールで、内部調査などによると討論会後、激戦州において有権者の見方に変化はなかったと主張。「メディアの大げさな表現ぶり」が「世論調査の一時的な落ち込み」を引き起こすかもしれないが、バイデン氏が11月に勝利することを確信しているとした。
<事実とつっこみ>
最近の外遊、特に6月のフランス訪問におけるバイデン氏の様子を見て、共和党側はソーシャルメディアで同氏の年齢を揶揄する動画を流した。しかしバイデン氏陣営は、国際舞台における強力な指導者ぶりをアピールできたとも考えていた。
6月21日にキャンプデービッドに向かう際、バイデン氏に同行した補佐官たちは上機嫌だった。バイデン氏が最も貴重な政治的資産、つまり「勢い」、「追い風」を背に討論会に臨むと信じていたからだ。
バイデン氏は、地元デラウェア州の別荘で数日間休養するまでの14日間、フランス、イタリア、西海岸などを飛び回っていた。この間、バイデン氏を見た何人かの人々によれば、同氏はぐったりしていたという。
討論会の6日前、バイデン氏とともにキャンプデービッドに着いた側近らは、討論会でのハードルは同氏の方がトランプ氏よりも高いと考えた。トランプ氏は現政権に文句を言うだけでいいかもしれないが、バイデン氏は「ファクト(事実)」を示しつつ当意即妙な指摘も入れる必要がある。
側近らは、トランプ氏が2020年の討論会よりもはるかに準備万端で臨むだろうと考え、矢継ぎ早に飛び出す嘘に対抗する必要があると判断した。
長時間にわたる準備セッションで、側近らはバイデン氏に詳細なファクトに関する質問を浴びせかけ、続いて模擬討論も行った。
この準備を批判する向きからは今、バイデン氏はもっと大きなビジョンに焦点を当てるべきだったし、討論会前に十分な休息を取っていなかったとの声が出ている。
側近によれば、バイデン氏は軽い風邪も引いていた。時差のある場所で長期間仕事をした後には、よくあることだったという。
批判派に言わせれば、その結果としてバイデン氏は最悪の状態で討論会に臨むことになった。
<討論会参加の是非>
今年初め、バイデン氏の側近の間では、トランプ氏との討論自体を避けるべきだとの意見があった。バイデン氏を不利な立場に追い込む舞台をトランプ氏に与えるだけだから、という理屈だった。
しかしバイデン氏自身が4月のインタビューで、討論会に出ると表明。これは一部の側近にとって驚きだった。
討論会翌日の28日、バイデン氏は前進を誓ったが、ダメージは大きい。
民主党のジェイミー・ラスキン下院議員は6月30日、バイデン氏に代わる大統領候補者について議論しているかというMSNBCの質問に「わが党のあらゆるレベルで、真摯(しんし)で真剣、激しい議論が行われている。政党なので、意見の相違はある」と答え、「候補者が彼(バイデン氏)でれ、別のだれかであれ、党大会の基調講演は彼が行うことになる」と付け加えた。
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