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焦点:日産とホンダのEV協業、体力差に懸念 三菱自も合流へ

ロイター / 2024年8月1日 13時22分

 8月1日、 ホンダと日産自動車が1日に正式発表する電気自動車(EV)分野の協業に、三菱自動車も合流する見通しとなった。写真は日産のEVリーフ。横浜の日産ギャラリーで2021年11月撮影(2024年 ロイター/Androniki Christodoulou)

Maki Shiraki

[東京 1日 ロイター] - ホンダと日産自動車が1日に正式発表する電気自動車(EV)分野の協業に、三菱自動車も合流する見通しとなった。3社でリソースを持ち寄り、EV需要が一服している間に米テスラや中国BYDなど先行する専業メーカーに追いつく狙いだが、足元の販売を立て直すことが急務の日産、規模の小さな三菱自がついていけるかなど、内部関係者からは先行きを不安視する声も聞かれる。

<コストを分担>

事情に詳しい関係者2人によると、三菱自は7月にホンダ・日産と秘密保持契約を締結、現在3社でどのような協業ができるかを詰めている。3月から2社で協議をしてきたホンダと日産は1日に具体的な協業内容を発表する予定だが、別の関係者によると三菱自の参画決定は間に合わず、会見には同席しない見通し。

ホンダと日産はEVの制御に必要な車載向け基本ソフト(OS)、駆動装置「イーアクスル」の共同開発・調達などを協議している。関係者によれば、日産が34%超を出資する三菱自も加わり、共同開発する車載ソフトの搭載、EV部品の共通化・共同調達、車両の相互補完などを模索している。

協業の狙いは3社で規模を拡大してコスト競争力を高めること、莫大な開発コストを削減して投資負担を軽減することだ。3社のうちホンダは5月、5兆円としてきた2020年度から30年度のEV投資を10兆円に倍増した。三部敏宏社長はかねてからテスラや中国勢にソフトウエアで後れを取っていることに懸念を示しており、特にテスラについては「世界中で走っているテスラの車の膨大なデータ、つまり、ものすごい計算量、計算スピードで計算し、それを戻していく、人を介さずにそういう形ができている」などと語っていた。

ホンダは10兆円のうち2兆円をソフトに投じる計画で、同社関係者は「OSの開発費だけでも兆円単位。ホンダは開発が(テスラや中国勢に比べて)遅れていてコストが膨らんでおり、日産や三菱自にも分担してもらいたいと考えている」と話す。テスラは車両に搭載する人工知能(AI)の開発だけで100億ドルを投資する方針を明らかにしている。

ホンダの広報はロイターの取材にコメントを控えた。三菱自の広報は協業に参画するかどうかコメントを控えた。

<キャッシュが流出>

しかし、日産の販売が足元で失速していることが懸念材料の1つとして関係者の間で浮上している。ガソリン車が主力の日本勢はEVが急速に普及する中国や東南アジアで販売が低迷。主要市場の北米でばん回する必要があるが、日産は売れ筋のハイブリッド車を米国に投入していないことなどから、販売に急ブレーキがかかって在庫が増えている。

日産が7月25日に発表した2024年度第1・四半期(4─6月期)決算は、営業利益が前年同期比99%減の9.9億円。米国で在庫を減らすため販売奨励金が膨らんだ。自動車事業のフリーキャッシュフローは4─6月期に3028億円のマイナスだった。連結のキャッシュ残高は6月末時点で1兆6740億円と、3月末から4500億円超減少した。

一方、これから4─6月期決算を発表するホンダのキャッシュ残高は3月末時点で4兆9545億円と、日産と約3倍の開きがある。財務や経営状態を知る日産関係者は「ホンダのスピードや投資・予算規模に日産がついていけるか。日産は(ホンダほど潤沢に)お金がない」と話す。

三菱自はそもそも企業規模が相対的に小さく、キャッシュ残高は3月末時点で6742億円。同社の関係者は「投資に大きな資金を求められたら、できないことがある」と話す。

ロイターは投資力の差に懸念が出ていることについて日産にコメントを求めたが、同社広報は回答を控えた。三菱自の広報は「仮定の話にはコメントしない」とした。

自動車産業を長く見てきたSBI証券の遠藤功治企業調査部長は、「検討されている協業領域で両社が期待する効果が出てくるまで短くても4─5年はかかる。短期的な効果が欲しいであろう日産はそれまで待てるだろうか」と語る。「技術のすり合わせや時間のシンクロが必要で、うまくいっても相当な時間がかかる」と話す。

<「30年にポールポジション」>

調査会社のカウンターポイントによると、EV市場はテスラが世界シェア20%でトップ、BYDが15%で2位につける。日本勢はハイブリッドやプラグインハイブリッドを含めた電動車全体では強いものの、電気で100%走るEVとなると存在感が薄い。

世界的に金利が上昇し、景気の先行き不透明感が強まる中、車体価格が高いEVの成長スピードは鈍化しているが、多くの自動車メーカーが中長期的には普及するとみており、ホンダや日産もEVの販売目標を変えていない。ホンダは2040年にすべての新車をEVあるいは燃料電池車にする目標を掲げ、日産は27年3月期までにEV8車種を投入する。

需要が減速したこのタイミングを巻き返しの機会として生かす必要があり、ホンダの三部社長は日産との協業を発表した3月の会見で、「30年にグローバルで戦えるポジションにいられるかどうかを意識して(協業の)話をしていきたい」と語っていた。日産関係者は「三部社長は自らが社長の間にばん回するため早く協業を進めたいだろう」と解説する一方、自社は「販売不振の立て直し」が急務で、足並みをそろえられるか懸念する。

自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、政府が支援する中国勢などと対抗するには「1社では太刀打ちできない」として協業を評価する。しかし、ホンダとの協業は日産にとって仏ルノーとのアライアンスと「また全く別次元のハードルの高さ」と語る。企業文化が全く異なる両社のエンジニアからも不安の声を耳にするといい、協業を成功させるには「いくつものハードルを越えていかなければならない」と話す。

(白木真紀 編集:久保信博)

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