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焦点:ドル安はまだほんの端緒か、市場で勢いづくドル弱気派

ロイター / 2020年9月2日 9時49分

 外貨運用のAGビセットのウルフ・リンダール最高投資責任者はドルが来年ぐらいにかけて対ユーロで36%下落し、十年以上ぶりの安値を付けると見込んでいる。写真はドル紙幣。2011年9月、ソウルで撮影(2020年 ロイター/Lee Jae-Won)

[ニューヨーク 31日 ロイター] - ドル弱気派と言えばこの人だ。外貨運用のAGビセットのウルフ・リンダール最高投資責任者(CIO)はドルが来年ぐらいにかけて対ユーロで36%下落し、十年以上ぶりの安値を付けると見込んでいる。

リンダール氏によると、最近のドル安は「非常に大きな動きの始まり」の場面にあり、多くの投資家は米株や米債券の保有を通じてドル下落にさらされ、打撃を受ける可能性がある。

米国の市場には今、ドル弱気派がうようよしている。しかし、リンダール氏ほど極端な予想は少ない。ドル<=USD>は現在、27カ月ぶりの安値水準にあり、対主要通貨バスケットでも今年の高値から約11%下落。ゴールドマン・サックス、UBS、ソシエテ・ジェネラルなども、さらにドル安が進むと見込んでいる。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドの先物市場でのドル売り手口は約10年ぶりの高水準。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの最近の調査によると、下半期の外為手口のトップをドル売り持ちとしたファンドマネジャーは全体の36%いる。

ドル相場は企業業績から原油や金などを通じた素材価格などあらゆるものに影響するだけに、投資家にとって適切なドル保有は必須だ。

リンダール氏の調査陣がドルの過去数十年の動きを15年のサイクルに分けて分析したところ、ドルは対ユーロでいったん急落しないと、その後に下落の大部分を回復する動きになっていなかった。つまり同氏によると、ドル下落がこの数週間で減速しているのは、今がまさにドル買いポジションから抜けるチャンスだ。

ドルに弱気な投資家の大半は、その理由として米国よりも他国の経済見通しの方が強いことや、米国の超低金利、新型コロナウイルス対策の財政出動で財政赤字が膨れ上がる懸念を見込んでいる。

ゴールドマン・サックスは、世界経済が着実に回復していく一方で、米国の実質金利がマイナスであることが「ドル安の持続」をもたらすとみる。足元で1ユーロ=1.196ドル近辺のドルの対ユーロ相場が2023年までに1.300ドルに下落すると予想する。

TDセキュリティーズのアナリストは、米連邦準備理事会(FRB)がインフレへのアプローチを見直し、金利がより長期的により低い水準を続けることを示唆しているため、ドルには下落圧力がかかり続けるとみる。ドルは他の主要通貨に対してまだ10%、過大評価されている水準にあるという。

ドル安の市場への衝撃は比較的小さいかもしれない。ドル安は金融緩和効果をもたらし、米国の輸出業者の利益を押し上げ、外国にとってはドル建て債務返済が楽になるからだ。

ドルが弱いままだと見込まれている局面では、外貨建て資産を保有する米国の投資家もあえてドル急騰に備えるプロテクションを買うことはしなくて済むため、取引の収益性も高まる可能性がある。ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオ・マネジャー、レイ・ワン氏は「今、自分のポートフォリオはノーヘッジ」と話す。強力なドル安の局面の流れに完全に乗ろうとしているからという。

ただ、ドル安が長期化すれば、それは米国の財政や経済成長への懸念や、世界の支配的な通貨としてのドルの地位が弱っていることを反映している可能性があり、もっと不吉な合図を送ることになる可能性もある。

バンク・オブ・アメリカの調査では、回答者の半分近くが、世界的なドル準備が来年に減少すると予想している。

トロソ・インベストメンツ/ATACローテーション・ファンドのポートフォリオ・マネジャー、マイケル・ゲイド氏は「ドルを巡っては最近、暴落するとか世界的な準備通貨としての優位を失うといった臆測も多い」と話した。

投資家のリスク志向の意欲が再び弱まったり、米経済の良いニュースが出たりすれば、ドルは支えられるとの見る向きもいる。ブラックロックの債券グローバル最高投資責任者、リック・リーダー氏は、ドルの下落は結局小幅にとどまるとの見方だ。通商と商業が世界的にドルに依存していることが、ドル暴落の防波堤になる可能性が高いとしている。

(Saqib Iqbal Ahmed記者)

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