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焦点:「バイデン取引」で人民元上昇、中国当局抑止に乗り出す

ロイター / 2020年11月2日 14時57分

10月30日、11月3日の米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利し、米中関係がこれまでよりも安定するとの思惑から、人民元が数年ぶりのペースで急上昇する中、中国当局が元高阻止に動き始めた。北京の人民銀で2018年9月撮影(2020年 ロイター/Jason Lee)

[シンガポール/上海 30日 ロイター] - 11月3日の米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利し、米中関係がこれまでよりも安定するとの思惑から、人民元が数年ぶりのペースで急上昇する中、中国当局が元高阻止に動き始めた。

中国人民銀行(中央銀行)はここ数週間、人民元を空売りする際のコストを引き下げ、元基準値の設定方法を調整。また国有銀行は夜間に元を売っている。

これに先立ち、元は5カ月連続で上昇していた。元高の原動力は底堅い輸出と、海外からの債券・株式への資金流入。元の対ドル相場は5月末に安値を付けて以来、約7.5%上昇した。

バイデン氏勝利の予想確率が上がるのに伴い、貿易戦争を再開する可能性は同氏の方がトランプ氏より低いとの見方が出てきたことも元買いの背景となった。これが人民銀行の元高ペースに対する警戒感を高めさせた。

LCビーコン・グローバル・ファンド(シンガポール)の運用担当者スニル・カルラ氏は「ほとんどの中央銀行は自国の通貨があまりにも急激に上昇するのを望まない」と指摘。「トランプ氏が負けてドル安圧力がさらに高まった場合、元の次の上昇局面が今よりずっとドル安元高の水準から始まるのは、人民銀行として避けたいところだ」と説明した。

人民銀行が一連の措置を打ち出したのは、世論調査でバイデン氏の支持率が上がってきたのと同時期だった。さらに、この頃アナリストらはバイデン氏が約束する大型財政支出と、多国間外交重視の姿勢が、元高ドル安につながると確信し始めていた。

アンプル・ファイナンス・グループ(香港)のディレクター、アレックス・ウォン氏は「ドルが全面安になっているのは、バイデン氏勝利のストーリーだと思う。つまり元高もバイデン・ストーリーの一環だ」と言う。

ウォン氏によると、トランプ大統領が対中政策を重点的に行ってきただけに、元買いは他通貨の対ドル取引に比べても、ひときわ注目を集めている。欧州が新型コロナウイルス感染再拡大で再びロックダウンに突入するのを尻目に、中国経済が素早く回復していることも元高の背景にある。

中国人民銀行は10月10日、銀行が元のフォワード取引を行う際の法定準備金を撤廃し、実質的に元売りの壁を取り除いた。

続いて人民銀行は、元の基準値設定で元相場急落を防ぐため用いられてきた「逆周期因子(カウンターシクリカルファクター、CCF)」の手法を銀行にやめさせた。

一方トレーダーによると、国有銀行は元を売り、為替スワップを利用することで元の借り入れコストが高まるようにしている。

「人民銀行は短期トレーダーがポジションを積み上げる意欲を失わせることに成功した。一方向の大規模な取引を不快に思っていることを明確に示したからだ」とカルラ氏は述べた。

<元高基調は変わらず>

元は10月最終週に下落に転じたが、それまでの上昇分のほんの一部を失ったにすぎない。

証券会社アクシの最高グローバル・マーケット・ストラテジスト、スティーブン・イネス氏は「(人民銀行からの)ほんの少しの示唆がきっかけだった。予見可能な将来は元の上昇を許さないから出て行けと。人民銀行が抵抗を示唆し始めたら、出て行く潮時だ」と話す。

もちろん、すべての投資家がバイデン氏勝利による元の一段高を見込んだ取引をやめたわけではない。人民銀行の措置によって元の上昇基調が反転すると考えている投資家はさらに少ない。世界がコロナ禍に見舞われ続けている中、中国経済は堅調だからだ。

ドイツ銀行のストラテジスト、サミール・コール氏は、バイデン氏の発言からは米中関係の方向性が大きく変わる可能性はうかがえないと指摘。ただ、「2国間の関税戦争よりも多国間の枠組みを通じた政策に移行するのなら、貿易や技術を巡る争いが為替市場を揺さぶることはもうなくなってくる」と述べた。

(Tom Westbrook記者、Andrew Galbraith記者)

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