ミャンマーのクーデターに非難相次ぐ、国民はネットに怒りの声
ロイター / 2021年2月2日 9時45分
2月2日、ミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握したことを受け、欧米を中心に非難の声明が相次いだ。国軍に拘束されたアウン・サン・スー・チー国家顧問の支持者はソーシャルメディアで怒りの声を上げた。首都ネピドーで1日撮影、提供写真(2021年 ロイター)
[2日 ロイター] - ミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握したことを受け、欧米を中心に非難の声明が相次いだ。国軍に拘束されたアウン・サン・スー・チー国家顧問の支持者はソーシャルメディアで怒りの声を上げた。
国軍は1日未明に、与党・国民民主連盟(NLD)を率いるスー・チー氏やウィン・ミン大統領などを拘束。「選挙の不正」を根拠に、ミン・アウン・フライン国軍司令官が国家権限を掌握したとし、1年間の非常事態宣言を全土に発令した。
クーデターによってこれまでの民主化の取り組みは頓挫し、ミャンマーから逃れたイスラム教徒少数民族ロヒンギャの帰還についても不透明感が一段と強まった。
スー・チー氏や同氏に近い何十人もの政治家の拘束に対して、強力な対応を求める声が上がるなか、外交筋によると、国連安全保障理事会は2日に会合を開く。ミャンマーと安保理常任理事国の中国との緊密な関係が安保理の決定に影響を及ぼすとみられる。
バイデン米大統領は1日、声明を出し、米国がこれまでに「ミャンマーの民主化に向けた進展を踏まえ制裁を解除してきた」とし、「こうした進展の反転を受け、制裁を巡る規則や権限を直ちに見直す必要が生じ、適切な行動が伴う」と言明した。
<米制裁の効果は限定的か>
バイデン大統領は「地域・世界のパートナーと協力して民主主義と法の支配の復活を支援していく。民主化の流れを反転させた人間に責任を取らせる」とも表明。ミャンマー軍に対し、通信制限を解除し、民間人への暴力行為を控えるよう求めた。
米政府当局者はロイターに対し、バイデン政権が「政府全体の」対応策を策定するため、政権内で高レベル協議を開始したことを明らかにした。議会とも緊密に連携する計画という。
ただ、アナリストは米国の影響力は限られていると指摘する。
戦略国際問題研究所の研究員は、クーデターに関与した人物に新たな制裁が科されるのはほぼ確実だが、渡米や米国での事業を計画している軍関係者は少なく、直接的な効果はあまりないだろうと予想。
米軍とミャンマー軍の交流はほとんどなく、軍事協力を見直すといった制裁措置を講じることもできないという。
<ソーシャルメディアで怒りの声>
国家権限を掌握したミン・アウン・フライン国軍司令官は自由で公正な選挙を実施し、勝利した政党に政権を委譲すると約束した。ただ、時期には触れなかった。
NLDはスー・チー氏がクーデターを見越して事前に用意した声明を発表。同氏はクーデターを受け入れずに抵抗するよう国民に訴えた。
しかし、首都ネピドーと最大都市ヤンゴンでは兵士と機動隊が配置され、1日夜にデモは起きなかった。電話とインターネットはつながりにくくなっている。
多くの国民はソーシャルメディアに憤りの声を投稿。
フェイスブックのデータによると、クーデターに反対する「#SaveMyanmar」のハッシュタグを使ったユーザーは33万4000人に上った。
再投稿(リポスト)で拡散されたメッセージのなかには、「われわれミャンマー市民は現在の動きに賛成しておらず、世界の指導者や国連、世界のメディアに対し、この冷酷な行動からこの国、指導者、国民を救うよう求める」というものがあった。
国連人権高等弁務官のミチェル・バチェレ氏は、国軍は少なくとも45人を拘束したとしている。
<閣僚の解任>
国連はクーデターを非難し、スー・チー氏などの解放と民政復帰を求めた。オーストラリア、欧州連合(EU)、インド、日本、米国もほぼ同様の声明を出している。
ミャンマーの旧宗主国である英国のジョンソン首相は「人々の票を尊重し、文民指導者を解放すべきだ」と訴えた。
ミャンマーの軍事政権は1日、クーデターによる全権掌握後、前政府の閣僚ら24人を解任し、新たに11人を任命した。国軍系テレビが報じた。
国内の銀行は1日、現金を引き出す顧客が殺到したのを受けて営業を停止したが、2日は再開すると表明した。ヤンゴンの市民は日用品の買いだめを急いだ。
日本の小売大手イオン、韓国の商社ポスコ・インターナショナル、ノルウェーの通信会社テレノールなどの外資系企業は現地従業員と連絡を取り、状況の把握に努めた。
ミャンマー議会の議員によると、ネピドーの治安部隊は議員らを居住用の建物に監禁した。議会は1日に招集される予定だった。
中国政府はミャンマーの政治情勢について非難表明は避けて「留意」しているとし、全当事者に憲法を尊重し、安定を守るよう求めた。
約100万人のロヒンギャ難民を受け入れているバングラデシュは「平和と安定」を呼び掛け、難民の帰還が進展することを望むとした。
ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は「対話、和解、平常時への回帰」の必要性を訴えた。
*内容を追加しました
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