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アングル:ウクライナ最大の印刷工場が攻撃で焼失、再建目指す創設者

ロイター / 2024年6月3日 7時28分

 セルギー・ポリトゥーチーさん(写真)は自社の印刷工場がロシア軍のミサイル投下により炎上すると、消防隊員よりも早く現場に駆け付けた。写真は5月26日、被害を受けたウクライナ・ハリコフの工場で撮影(2024年 ロイター/Valentyn Ogirenko)

Max Hunder

[ハリコフ(ウクライナ)28日 ロイター] - セルギー・ポリトゥーチーさん(70)は自社の印刷工場がロシア軍のミサイル投下により炎上すると、消防隊員よりも早く現場に駆け付けた。そして、苦しみや破壊の様子が彼の心に焼き付けられることになった。

「あの臭い、あの光景──。それらは今も脳裏から、心の中から離れない。戦争が引き起こした最悪の結果だ」

ウクライナの出版業界をけん引する国内最大の印刷会社ファクトルの創業者であるポリトゥーチーさんは、こう振り返った。

5月23日午前中のロシア軍による攻撃で、工場内にいた従業員のうち7人が死亡、16人が負傷した。ポリトゥーチーさんによれば、ファクトルはウクライナ国内における印刷物の生産能力の約40%を占め、学校教科書の半数近くを出荷していたという。

建物のほとんどの床や壁に、いまだ血痕が残っている。数百冊の焼け焦げた小説や子ども向けの本が散乱する現場で、ポリトゥーチーさんは取材に応じた。この場所では28年前の創業以降、毎年およそ600もの作品が印刷されてきた。

「私のこれまでの人生全てを失った。私やチームの努力が水泡に帰してしまった」とポリトゥーチーさんは言う。

「脅威にさらされているのは、印刷や製本といった仕事だけではない。出版産業全体だ」

ウクライナ第2の都市ハリコフは学術都市であり、出版業の中心地としても知られている。同地を標的としたロシア軍の空爆はここ数週間相次いで発生しており、25日には同州内の大型商業施設が攻撃を受けて16人が死亡し、数十人が負傷した。

ロシア軍はハリコフ市北部に新たな部隊を派遣し、町の中心部を囲む環状道路から約20kmの場所にまで前進した。同軍は2022年の全面侵攻開始後にもハリコフを脅かしていた。

ロシア政府は戦争の目的はあくまでウクライナの非武装化であり、民間人は標的にしていないと主張している。ただ、ハリコフ州知事は今回攻撃を受けた印刷工場付近に軍事施設はないと述べている。

ポリトゥーチーさんはロシアでウクライナ人家庭に生まれ育った。ロシアで26年間暮らしたが、ウクライナ語を使っている。ファクトル社はロシアが南部クリミア半島を一方的に併合した2014年、売り上げが大幅に落ちるのを承知で、ロシア語書籍の出版を停止したという。

ポリトゥーチーさんは、今後は事業再建に生涯を捧げると話し、ウクライナ政府から補助や諸外国の寄付を受けることに期待を寄せている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は攻撃後、この印刷工場を訪問し、がれきの前で各国の首脳に宛てたビデオメッセージを撮影した。

「ハリコフでこの事業を再建することが、私の使命だと考えている。私たちがハリコフを離れれば、この町には何が残るだろう」とポリトゥーチーさんは語った。

だが、再建は容易ではない。ミサイルによる被害総額は500万ドル(約7億8600万円)相当以上だ。経験20年のベテラン従業員も複数が命を落とした。ポリトゥーチーさんは、出版業のような狭い産業で同じ水準の技術を持つ人を見つけることは非常に難しいと話す。

「人々や政府の支援があれば、全てを再建することができると確信している。だが、攻撃で亡くなった人々を生き返らせることはできない」

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