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アングル:豪、NZの住宅市場に気候変動リスク 保険加入も困難に

ロイター / 2024年7月2日 14時1分

 7月2日、 オーストラリア東部の街リズモアでアンティーク店を営むアダム・ベイリーさんは2年前、この街を襲った大洪水によって貴重な歴史的コレクションを全て失った。写真はシドニーのオペラハウス。5月撮影(2024年 ロイター/Jaimi Joy)

Stella Qiu Lucy Craymer

[シドニー/ウェリントン 2日 ロイター] - オーストラリア東部の街リズモアでアンティーク店を営むアダム・ベイリーさんは2年前、この街を襲った大洪水によって貴重な歴史的コレクションを全て失った。

今では、夜に雨が降ると眠れなくなる。近所に新設した店舗と商品に保険をかけようとすれば8万豪ドル(約860万円)近くを保険料として支払う必要があるが、そんなお金はない。

2年前のこの洪水により、人口4万4千人のリズモアの街では、低地にある不動産の価格が30%も下がり、被害地域の住宅や企業は保険加入が難しくなった。オーストラリア全体の不動産市場は現在活況を呈しているが、気候変動に関連した災害のリスクは高まっている。

オーストラリアとニュージーランドの住宅購入者は、水辺や自然の近くで暮らしたい、あるいはより良い物件に買い換えたいとしか考えておらず、気候変動のリスクを勘案していないと政策立案者、研究者、不動産専門家らは警告を発している。

気候変動リスクの専門家企業XDIがロイターに提供したデータによると、オーストラリアの住宅市場は自然災害によって2030年までに約8000億豪ドル、総額の約6.7%を失う可能性がある。

クライメート・シグマ社の調査によると、ニュージーランドでは約20%の住宅が氾濫原に位置している。

XDIの科学技術ディレクター、カール・マロン氏は「このような災害に見舞われるとビジネスに、そしてより広い経済に影響が及ぶ」と警鐘を鳴らした。

不動産における気候変動リスクは世界中で高まっているが、特にオーストラリアとニュージーランドは住宅への執着が強い国だ。このため住宅価格は過去最高に達し、個人の資産が水路や海岸線近くの広大な住宅に投入され、経済、銀行、人々への脅威が拡大している。

経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、オーストラリア人の不動産資産額は米ドル・ベースで2番目に大きく、ニュージーランドも平均を上回っている。

今のところ、気候変動リスクによって住宅経済がシステミックな問題を抱える兆しはほとんど見られない。しかしリズモアのように苦境に立たされるケースが出始めている。

ニュージーランドでは、同国屈指のワイナリーがある地域に近い海岸沿いの街、ハウモアナが浸水被害を最初に受けた地域のひとつだ。

またオーストラリアの不動産サイト、ドメインの調査によると、山火事の危険度ランクが1段階上がるごとに住宅の価値は2%下がり、水位50センチの洪水の可能性が1%ポイント上がるごとに0.8%下落する。

<保険加入の難しさ>

気候変動リスクに対する保険料は、一部の住宅所有者が払いきれないほど高くなっていると業界の専門家は言う。

現在進行中の政府の調査によると、保険最大手アリアンツ・オーストラリアは、洪水危険度ランキングが最も高い地域に住む顧客の約74%が昨年、洪水保険に加入せず、前年の63%からその割合が増えたことを明らかにした。リズモア一帯など、危険度が高いのに90%が洪水保険に加入していない地域もあるという。

気候評議会(オーストラリア)は、2030年までに同国の不動産の4%が保険に加入できなくなると予想している。今年第1・四半期には保険料が16.4%も上昇した。

ニュージーランドでは2023年の大洪水後、1000件前後の物件が保険に加入できず、当局に買い取られた。

ニュージーランド準備銀行(中央銀行)のケリー・ワット金融安定性評価・戦略担当局長は、気候変動リスクの増大と建設コストの高騰により、保険料は過去10年間で倍増したと指摘。「人々には、購入しようとする不動産の具体的なリスクについて、これからはもっと注意を払うようにして欲しい」と語った。

<リスク冒す投資家>

自然災害リスクによる不動産価格への影響を定量化することは、他の要因、主に需要と住宅ローン金利も絡むため困難だ。

不動産コンサルタント、コアロジック社のデータによると、オーストラリアでは洪水が起こりやすい地域や沿岸部のほとんどの市場で、住宅価格が以前のピークを回復している。モーゲージブローカーによれば、リズモアでさえ、裕福な投資家が大幅に値引きした価格で物件を買い占めている。

リスクを冒してでも水辺に住みたいという住宅購入者もいる。

「ウォータースポーツとボートが好きだ」と言う不動産投資家のジャック・ヘンダーソンさんは、シドニーの川沿いに別荘を設ける計画が2022年の記録的洪水でつぶれた。だが「文字通り水辺の物件が欲しければ、残念ながら洪水は避けようがない」と、あくまでも前向きだ。

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