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焦点:主要中銀が相次ぎ政策転換 「正常化」の道筋は依然不透明

ロイター / 2024年8月2日 11時19分

  8月1日、今週の主要中央銀行の政策決定により、新型コロナウイルスのパンデミック時代にインフレ抑制のために導入された政策運営に終止符が打たれる流れがよりはっきりと視界に入ってきた。写真はロンドンの英中銀。7月撮影(2024年 ロイター/Claudia Greco)

Howard Schneider David Milliken

[ワシントン/ロンドン 1日 ロイター] - 今週の主要中央銀行の政策決定により、新型コロナウイルスのパンデミック時代にインフレ抑制のために導入された政策運営に終止符が打たれる流れがよりはっきりと視界に入ってきた。同時に、各中銀が利下げやバランスシート圧縮について今なお手探りの状態にあり、「正常化」の道のりがいかに遠いかも浮き彫りにされている。

イングランド銀行(BOE、英中銀)は1日の会合で政策金利を5.25%から5%に引き下げることを決めた。欧州中央銀行(ECB)やカナダ銀行に次ぐ利下げだ。

背景にはインフレがおおむね沈静化しているという状況がある。米連邦準備理事会(FRB)も今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、9月の利下げに向けた地ならしを行った。

FOMC声明文では物価と雇用の双方に目配りする姿勢が記され、パウエル議長は会見で「物価上昇率がほぼ想定通りに鈍化するとともに、成長率がそれなりの強さを維持し、労働市場がなお現在の環境にとどまるようなら、9月会合で利下げが議論される可能性があると思う」と語った。

<議論分かれる>

ほんの数カ月前まで米国では、物価が想定外に高止まりし、当初6月に見込まれていた利下げ開始が大幅に先送りされるとの見方が広がっていた局面からは大きく変わった形だ。

ただそれは、FRBやBOE、カナダ銀行、ECBがこの先の政策経路、特に利下げのペースや幅を全面的に把握していることを意味しない。

例えばECB内の議論は激しく揺れ動いている。ラガルド総裁は、次回9月会合ではあらゆる選択肢が考えられると発言したが、その後何人かの政策担当者は、データが想定通りに推移すればより多くの利下げがあるとの考えを示唆した。

カナダ銀行は、最近低調になっている経済のてこ入れに政策の軸足を移し、9月には3回連続の利下げに動く見通し。

米金利先物は、今から9月FOMCまでの7週間で景気が軟化して25ベーシスポイント(bp)ではなく50bpの利下げが妥当になる確率をある程度織り込んでいる。

一方、パンデミック後の世界は物価の基調が上振れて。グローバル市場の統合が緩み、大規模な政府債務が積み残されているので、中銀はパンデミック前の10年間よりも金利を高めに維持する必要があり、利下げ余地が狭まる可能性も出てきた。

BOEが政策委員の賛成5人、反対4人というきわどい差で今回の利下げを決めた後、ベイリー総裁もそうした可能性を認めて、「われわれは確実にインフレを低く抑え込まなければならず、拙速ないし過剰な利下げをしないよう慎重さが求められる」と発言した。

<現実に即して調整>

日銀だけは主要中銀の大勢とは正反対の利上げに乗り出しているが、道のりの険しさは変わらない。つまり他の中銀同様、従来正しいと信じられてきた多くの概念が覆された後、「正常な」経済や政策運営とはどんなものかの判断が求められているのだ。

パウエル氏は7月31日、米失業率が昨年夏から0.7ポイント上昇したことで、いわゆる「サーム・ルール(直近3カ月の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回ると景気後退入りの可能性が高いという経験則)」を満たす状態に近づいたと指摘した。

また米国債はもう2年余りにわたって、景気後退のシグナルとされる長短利回り逆転(逆イールド)が続いている。

ところが成長率と消費は堅調で、足元の失業率は4.1%と歴史的にはまだ低水準を保ち、幅広いストレスの兆候は見えない。

パウエル氏はこれらの点を踏まえ、今のところ経済の下振れリスクは小さいと説明。「パンデミック時代は逆イールドをはじめとした多くの明快なルールが無視され、受け入れられてきた経験則が機能しなかった」と述べた。

だからこそ主要中銀はこれから、まだ完全に理解しきれていない現実に即して金利水準やバランスシートを調整していかなければならない。

パウエル氏は「政策金利は今後低下するだろう。しかしいつ下がるか、どんなペースになるか具体的なフォワードガイダンスは提示したくない。なぜなら本当に経済動向次第になると思うからだ」とくぎを刺した。

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