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アングル:リビアの中銀支配巡る対立、経済活動停止や内戦再燃もたらす恐れ

ロイター / 2024年9月3日 7時40分

 8月30日、国家分裂状態が続くリビアでは、中央銀行の支配権を巡る東西両勢力の対立が既に石油生産停止をもたらしているが、今後経済活動が全面的にまひして、再び内戦状態に陥る恐れも出てきている。写真はリビアの中央銀行。トリポリで8月26日撮影(2024年 ロイター/Aymen Sahli)

Angus McDowall

[30日 ロイター] - 国家分裂状態が続くリビアでは、中央銀行の支配権を巡る東西両勢力の対立が既に石油生産停止をもたらしているが、今後経済活動が全面的にまひして、再び内戦状態に陥る恐れも出てきている。

今回の危機は、首都トリポリに拠点を置き、国際的な承認を得ている暫定政権が中銀のカビール総裁を更迭する人事を発令したことがきっかけで、これに反発した東部トブルクを拠点する勢力が石油の生産と輸出の停止に踏み切った。

事態は非常に紛糾し、カビール氏がなお中銀のウェブサイトを管理している一方、暫定政権の首脳評議会に任命された新たな中銀理事会は、正式に認証されたフェイスブックのページを通じて声明を発表するありさまだ。

危機に伴ってリビア国外に脱出したカビール氏は8月30日、英紙フィナンシャル・タイムズに、武装勢力が中銀職員を脅迫しており、時には職員の子どもや親族を誘拐していると訴えた。

このため中銀は機能しなくなり、1週間余りにわたって各種取引ができない状態。基本的な経済活動が止まる恐れが出てきており、東西両勢力とも譲歩する気配が見えないことで武力衝突が起きるリスクも刻々と増大しつつある。

さらに悪いことに、現在はリビアの根本的な政治対立を解決しようとする国際社会の努力が進展していないほか、国連の担当特使は不在、両勢力を押さえ込める大国が出てくる兆しもない。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャレル・ハーチャウィ氏は「過去2年続いた均衡状態は消え去った。当事者たちは今、優位を得るための新たな足場を築こうとしているので、危機がずっとひどくなろうとしている」と指摘した。

<高まる存在感>

カビール氏は、2011年に北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入でカダフィ独裁政権が崩壊してリビアが混乱に陥って以来、中銀総裁を務め続けてきたので、さまざまな武装勢力の旗頭や政治家が権力争いをする中で、次第に重要な存在になっている。

それは中銀が国営石油会社とともに、政府機能継続の要とみなされているからだ。

国際的な合意を得たリビアの法令は、石油売却は国営石油会社を通じてのみ行われ、収入は中銀に集められると定めている。この資金が公務員給与や各政府機関向け予算の原資となる。

暫定政権のドベイバ首相が2022年、東部勢力との便宜的な協調目的で国営石油会社のトップを入れ替えると、石油セクターの管理が緩んだが、その後ドベイバ氏とカビール氏が歳出などの問題で対立し、カビール氏は東部勢力の有力軍事組織「リビア国民軍(LNA)」を率いるハフタル司令官に接近したとみなされている。

そうした中でドベイバ氏が支援するメンフィ首脳評議会議長は、カビール氏の更迭によって、リビアの財政資金を直接暫定政権の手に収めようとしたことから、東西両勢力が互いに一歩も譲らない姿勢を示している。

英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)のティム・イートン氏は「これは行政組織ではなく政治的な問題だというのが私の見解だ。しかし非常に深刻であり、合意が形成されなければ、リビアに残る最も強力な機関が実質的に空洞化してしまう」と話した。

カビール氏更迭は、国際社会とリビアの各勢力の合意の基本となる2015年の取り決めにも反するように見える。

国営石油会社に支払われる石油代金は中銀の口座に移動する前、いったんニューヨークのリビア外国銀行にドル建てで振り込まれる以上、中銀総裁が国際的に受け入れられるかどうかは重要な意味を持つ。

<悲惨な未来>

今のところメンフィ氏が任命した新理事会は中銀を掌握できていない様子だ。8月28日の会見では、カビール氏に業務を引き継ぐためのパスワードを渡すよう訴えた。

また新理事会は、中銀を全面的に掌握すれば返還する約束で、国内の銀行に公務員給与支払いの肩代わりを要請。これに対してカビール氏は、新理事会の指示を無視するよう各銀行に伝えている。

こうした対立が長引けば、公務員給与の支払いや銀行間取引、輸入に必要な信用状の発行ができなくなり、経済活動や対外貿易がストップしてしまう。

東部の2つの銀行では既に西側の銀行向けの清算業務や外国送金手続きが止まっている。

一方、東部勢力による石油生産停止で中銀に入ってくる資金も次第に枯渇しそうで、発電所に供給するコンデンセートも減少してまた長時間の停電が再燃するかもしれない。

つまりリビア国民にとって先行きがより悲惨となり、直近の内戦収束から4年を経て武装勢力同士の戦闘が再開されるリスクも高まっている。

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