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焦点:コロナワクチン増産に壁、「クリーンルーム」が不足

ロイター / 2021年3月2日 18時19分

 ベルギー・リエージュのワクチン生産施設で2020年12月撮影(2021年 ロイター/Yves Herman)

[25日 ロイター] - 入手できる新型コロナウイルスワクチンの数量は今、着実に増えてはいるが、さらに生産を増やす上では、医薬品の基準を満たす物理的な場所の不足が大きな障害になっている。製薬会社や医薬品の製造設備業者、米政府のワクチン計画に関わった当局者の話で、こうした実情が浮き彫りになった。

原料製造、ワクチン配合、瓶への充てん。この全てが、いわゆる「クリーンルーム」を必要とする。空気清浄装置や滅菌水、滅菌蒸気などを兼ね備えた設備だ。これは専門業者が設計し、彼らが建設を担うこともある。

米モデルナは24日にワクチン製造能力の拡大計画を発表したが、同時に、増産態勢が整うには1年かかるとの見通しも示した。

全世界の人々に必要なコロナワクチンを生産するため、製薬会社は競合他社の手さえも借りなければならなくなっている。ある大手受託製造業者や、より小規模な他の受託業者などによると、こうした第三者の業者が米国に持つ製造スペースは、ほぼ配分されている状態だ。

最近の米会計検査院の報告書は、コロナワクチンの製造能力の不足問題が増産の壁になると警告した。

加えてコロナ変異株が幾つも出現していることが、製造能力ひっ迫をさらに強めそうな気配だ。公衆衛生専門家によると、ワクチン接種を世界中でできるだけ早く進めることが、感染力の高い新たな変異株の出現を抑制する上で重要になる。多くの関係者は今週、米国でジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンの緊急使用許可が、近づいたことに望みを託している。

コロナの制御に向けては、長期的にはインフルエンザと同様、新たな変異型に対する予防接種を毎年することが必要になるかもしれない。ワクチンメーカーは既に、南アフリカ型やブラジル型の変異株に有効な再接種用ワクチンを開発中だ。

フレッド・ハッチンソンがん研究センターのウイルス学者で、米政府が支援したコロナワクチン臨床試験の設計に協力したラリー・コーレー氏によると、今起きていることは、米国内の製造能力のための大幅な設備増強が重要だということを物語る。「われわれは、我が国のワクチン製造能力に対し大規模に投資すべきだ」と語る。

米政府のコロナワクチン計画「オペレーション・ワープ・スピード」の首席科学アドバイザーを務めたモンセフ・スラウイ氏によると、米ファイザーとモデルナは、充てん作業と最終工程のスピードを上げることで、ある程度増産できる。

それ以上にワクチンを増産することは、かなり難題だという。その点を大きく変えるには、世界的なワクチン製造インフラの増強が必要になるが「それには何カ月もかかる」という。施設の設備を作り人員を訓練し、基準に合っていることを確認し、規制当局を検査に来させて、設備を認可してもらうことが必要になるからだという。

ロイターが情報開示された内容や報道をまとめたところによると、世界の有力ワクチン開発業者はそれぞれ製造業者と協力して、年内に計約52億人分のワクチン生産を目指している。

こうした開発業者は、ファイザーとビオンテックの連合、モデルナ、英アストラゼネカ、J&J、米ノババックス、ロシアのガマレヤ研究所、ドイツのキュアバクだ。

中国のシノバック(科興控股生物技術)とシノファーム(中国医薬集団)も多くを供給する可能性が高い。ただ、この2社の今年の生産目標は不明。また、幾つかのメーカーは、当初の生産目標の達成に苦しんでいる。

<迅速な設備設置の課題>

ワクチン製造の施設設備を新しく造ったり、さらには既存設備を拡張したりするのさえ、通常は何年もかかる。米政府のワープ計画に関わった専門建設業者数社によると、今回のコロナ禍では一部のプロジェクトは完成に少なくとも6─10カ月かかった。

米国向けにJ&Jとアストラゼネカのコロナワクチンを受託生産しているエマージェント・バイオソリューションズでは、製造拠点にこうしたワクチン専用の設備を増強できる余地はもうない。同社のカーク副社長は「われわれのような受託製造の供給網は、かなり満杯になっている」と指摘した。エマージェントのような状況は、特異ではないのだ。

コンサルタントで製薬エンジニアのフィル・デサンティス氏によると、適切な製造基準を満たす新たなクリーンルームを増やす作業は、手間が複雑で時間も取られる。クリーンルーム設営はワクチン製造で最重要な部分だが、ここに最も時間がかかると指摘する。

ワクチンメーカーは既存設備を改修することで、この問題を部分的にだが回避している。ビオンテックは昨年9月にノバルティスから、ドイツ・マーブルクの施設を購入し、ワクチン有効成分の遺伝物質「メッセンジャーRNA」の製造を今年2月初めに開始した。

エマージェントが昨年に米政府のワープ計画に参加した際には、米メリーランド州ボルティモアの施設でコロナワクチン用のスペースを用意するため、他の一切の作業が中断した。

米政府はこうした改修を強制するため「国防生産法」を行使できる状態にある。同法に基づく連邦レベルの発注は、何よりも優先されなければならない。しかし、他の注射用医薬品の供給を脅かさずにできることは限られている。

ファイザーは先週、米受託製造業者2社と提携することで、自社施設でのワクチン配合や原料製造の能力を増強すると発表した。しかし、そこに新たなクリーンルームが設置されるのかは、明らかにしなかった。

クリーンルームなどの専門建設業者によると、製薬会社や提携供給会社は、既存設備にクリーンルームを設営する場合、作業を迅速にするためにプレハブの壁パネルや容器に大きく依存してきた。

G-CONマニュファクチャリングは、米政府のワープ計画に参加する幾つかのプロジェクト向けに容器を供給した。同社のマイク・ジョーニッツ最高経営責任者(CEO)によると、受託製造1社はコロナワクチン製造に専用スペースを充てていたが、その後に既存の顧客の別のプロジェクト用にクリーンルームを増やすため、G-CON社の容器を導入した。

こうした施設建設の設計と運営を担当するCRBの幹部、ピーター・ウォルターズ氏は、プレハブ式しか手立てがないと指摘する。CRBは20以上のコロナワクチン関連プロジェクトを手掛けてきた。「ワクチン製造業界の多くにとって、でき得ることをこうした工法が再定義した形になったのは間違いない」という。

センター・フォー・グローバル・デベロップメントの上級研究員、プラシャント・ヤダフ氏は、ワクチンの生産能力をもっと増やせばコロナ変異株や将来の別の感染症大流行に米国が対処するのに役立つと指摘する。「われわれは、そうした生産能力をわれわれ自身の必要のために使うこともできるし、世界のために役立てることもできる」という。

(Allison Martell記者, Carl O'Donnell記者、Julie Steenhuysen記者)

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