1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

アングル:コロナ明けの珍現象、高失業率なのに人手不足の米企業

ロイター / 2021年7月2日 17時2分

 6月30日、米カリフォルニア州の老舗遊園地、サンタ・クルーズ・ビーチ・ボードウォークの目玉は、同州最古のジェットコースター「ジャイアント・ディッパー」だ。遊園地のオーナー社長、カール・ライスさん(写真)は、まさか来園客をディッパーに乗せる手伝いをして、この夏を過ごすことになるとは思ってもみなかった。6月19日撮影(2021年 ロイター/Ann Saphir)

[サンタクルーズ(米カリフォルニア州)/ワシントン 30日 ロイター] - 米カリフォルニア州の老舗遊園地、サンタ・クルーズ・ビーチ・ボードウォークの目玉は、同州最古のジェットコースター「ジャイアント・ディッパー」だ。遊園地のオーナー社長、カール・ライスさんは、まさか来園客をディッパーに乗せる手伝いをして、この夏を過ごすことになるとは思ってもみなかった。

新型コロナウイルスの大流行で1年間閉鎖を余儀なくされたボードウォークは、4月に営業を再開。夏季の繁忙期を見据えた従業員の採用を例年より遅く開始することになった。ざっと1900人の従業員が必要になるが、現時点でかき集められたのは、その半分程度だ。

創業114年のこの遊園地は、ロックダウン明けの自由を謳歌(おうか)する客で大にぎわい。4日の独立記念日の週末にはシーズン最多の客が来園する見通しとあって「社員総出という感じだ」と、ライスさんは言う。

ボードウォークの経営幹部はこの夏、全員が少なくとも週1回はアトラクションやフードスタンドで働いている。ライスさんは週に2度、8時間のシフトに入り、主に客をディッパーに乗せたり降ろしたりする仕事をしている。

バイデン米政権は独立記念日の式典を、米国が新型コロナ大流行から立ち直ったことを示す象徴と位置付けたい意向だ。米経済は確かに平常に戻ってきた半面、ライスさんが経験しているように、平常とは程遠い部分も残っている。

マスク着用と物理的な距離の確保といった光景は、おおむね過去のものとなり、野球のメジャーリーグは満員の観衆で盛り上がるだけでなく、レストラン予約のキャンセル待ちも復活した。

だが、景気回復にはスピード制限のようなものが働いている。映画などのデータを収集・分析しているIMDBによると、先週末、北米では人気映画トップ10の興行収入が合計9300万ドルと、昨年のバレンタインデー以降で最高に達した。しかし、週間興行収入はコロナ禍前の半分かそれ以下にとどまっている。

「経済の再開がこれほど難しいとは、だれも思っていなかった」──。リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は6月28日にこう述べ、変則的な事象をいくつか例示した。失業率が高いにもかかわらず、人手不足を理由に開演時間を制限するテーマパーク。販売台数が過去最高を記録するこのご時世に、半導体の供給不足で生産減速に追い込まれる自動車工場。

アトランタ地区連銀のGDPNOWによると、国内総生産(GDP)の規模は既にコロナ禍前の19兆3000億ドル水準を上回り、米経済は回復しているようにみえる。

だが、雇用の話になると、未だに失業者数が700万人を超える。労働市場の本格回復は、何カ月も先になりそうだ。

通常の景気後退後と異なるのは、今は人々の手元に使える資金があることだ。しかも、その資金源は政府だ。失業保険給付や、子育て世帯の税優遇など、連邦政府の支援措置が市民の懐を潤し続けている。定かでないのは、支援措置が打ち切られる時期と、民間セクターの賃金がその穴を埋められるかどうかだ。

消費者は支出している。米経済の7割を占めるサービス産業の需要は、特にここ数週間で持ち直している。多くのレストランは混み合い、オーナーはスタッフの採用に一苦労だと言う。オープンテーブルのデータによると、店内飲食はコロナ禍前の水準に戻った。

ところが、娯楽・接待産業全体で見ると、雇用はコロナ禍前に比べて15%落ち込んだままだ。対照的に、金融業の雇用はコロナ禍前の99%強まで持ち直した。

失業者数がコロナ禍前に比べて数百万人増えている一方で、米企業の求人件数は過去最高水準に達している。企業は労働者を求めているが、労働者はもっと報酬の良い職に就けると当て込み、大挙して職を離れている。しかし、差し引きすると、雇用の伸びは経済がコロナ禍前に戻るのに必要な水準に比べて鈍い。

共和党系の州知事らは、連邦政府が失業保険給付を拡充したことが人々に就職を控えさせる要因となり、ミスマッチを招いていると批判。失業保険の上乗せ打ち切りに動いた。

これに対し、ハーバード大のウィリアム・スプリッグス経済学教授は、別の可能性を示している。回復の遅い産業にいる熟練労働者が、別の職に就く必要性を感じず、元通り仕事ができる日を待っているのが原因だという。

スプリッグス教授によると、娯楽産業で働く人々は「マクドナルドで働きたいとは思わず」、ブロードウェーのショーやライブコンサート、映画プロダクションの再開を待っている。失業した人が現時点の求人に一対一でマッチする、というアナリストの机上計算は「現場からずれている」と教授は話した。

(Ann Saphir 記者、 Howard Schneider記者)

*見出しの誤字を修正しました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください