日銀総裁「利上げ、指標が想定通りという意味では近づく」:識者はこうみる
ロイター / 2024年12月2日 11時42分
12月2日、日本経済新聞電子版が30日報じた植田和男日銀総裁(写真)のインタビューによると、総裁は追加利上げの時期について「データがオントラックに推移しているという意味では近づいている」との認識を示した。写真は都内で10月撮影(2024 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[ 2日 ロイター] - 日本経済新聞電子版が30日報じた植田和男日銀総裁のインタビューによると、総裁は追加利上げの時期について「データがオントラックに推移しているという意味では近づいている」との認識を示した。ただ、米国の経済政策の先行きがどうなるかに関し「大きなクエスチョンマークがある。当面、どういうものが出てくるか確認したい」と続けた。
市場関係者に見方を聞いた。
◎12月利上げの地ならしか、株市場の反応は一時的
<SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏>
インタビュー記事の内容自体は市場の観測を大きく変えるものではなかったが、12月の日銀金融政策決定会合を控えたこのタイミングで出てきたことによって、早期の追加利上げに向けた地ならし的な意味合いが強くなったようだ。
為替相場と債券市場は直接的に反応しているが、株式市場はドル/円経由、業種間(により反応が異なる)と間接的に反応している。インタビュー記事で植田日銀総裁は「データがオントラックに推移しているという意味では近づいている」と発言しており、追加利上げ観測を高めるような内容であったため、銀行、保険などの金融業が底堅く推移している。
ただ、インタビュー記事は日銀が来年以降も連続的に追加利上げを実施するとか、政策金利を1%の到達点より上げていくといったタカ派傾斜を示唆するものではない。短期的な思惑という意味合いが強いため、株式市場での反応は一時的になるとみている。
◎タイミング的に12月利上げの予告を意図
<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>
日銀がタイミングを選べた中、あえて12月の政策決定会合まであと3週間というタイミングで、記者の「ぶら下がり」に応じてではなくきちんと設定したインタビューで意図的にこうした情報発信をしてきたわけで、これはもう利上げ予告だと受け止めて良いのではないかと思っている。
もちろん突然スタンスを変えることはできないので、従来通りの発言もある程度残しつつグラデーション的に、10月末から少しずつ発言のトーンを変えてきている。
今週は5日に政策委員の中で最も「ハト派」とみられる中村豊明審議委員の発言機会もあるため、その前にくさびを打つ意図もあった可能性がある。
これを受けてきょうはJGB(日本国債)はかなり売り込まれており、12月利上げの織り込みが高まっている。
市場ではこれまで「円安が進行すれば12月にも利上げ」とみる向きが多かったが、今では「よほど円高にならない限りは12月利上げ」という感じだと思う。私自身は、よほどの円高とはドル140円割れだと考えており、140円台までであれば12月に利上げすると思っている。
ただ、今回アップデートされた情報は12月の利上げの話だけであり、「次の次の利上げがどうなるか」や「どこまで利上げするのか」といった情報はアップデートされていない。この状況では10年金利は2、3ベーシスポイント(bp)高の1.0%台後半への上昇が順当で、一気に1.1%を上抜けて行くまでの勢いはないだろう。
◎追加利上げに前向き、ドル月内は148―153円が中心レンジか
<SBIリクイディティ・マーケット 金融市場調査部長 上田真理人氏>
「インフレ率が2%を超え始めている時の一段の円安はリスク大、場合によっては対応」というヘッドラインが全面で出てきたことから、円高で反応した。インタビュー内容を踏まえると、日銀は12月会合での追加利上げに意欲を持っている印象。ただ、市場では6割程度しか織り込みが進んでおらず、疑心暗鬼のようだ。今後も日銀幹部から利上げに前向きな発言が出てくれば、その度に市場は円高方向で反応する可能性がある。
足元のドル/円は、はしゃぎすぎたトランプトレードの巻き戻しが起こったほか、米新政権による関税引き上げ表明で世界的に経済が減速するとの不安から、リスクオフの流れが強まっていた。日銀の追加利上げ観測の高まりも加わり、ドル買いよりも円買いが勝っている。
12月に米連邦準備理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを行い、日銀が金融政策決定会合で利上げを実施すれば、日米金利差は縮小しドルは148円を一時的に割る可能性がある。ただ、依然として日米金利差は4%近くあることに加え、今週発表される米雇用統計などで米経済の底堅さが再び示されれば、ドルは150円で下値を固め153円台まで再度上昇する可能性はあるとみている。
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