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アングル:米企業、従業員にコロナワクチン接種「強制」できるか

ロイター / 2020年12月3日 15時15分

 12月2日、専門家によると、米民間企業は法律の下、従業員に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける権利が認められている。ただ、訴訟リスクや社会的な反発の可能性を踏まえ、義務付けに踏み切る可能性は低いという。写真はボスニア・ヘルツェゴビナのゼニツァで10月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

[2日 ロイター] - 専門家によると、米民間企業は法律の下、従業員に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける権利が認められている。ただ、訴訟リスクや社会的な反発の可能性を踏まえ、義務付けに踏み切る可能性は低いという。

企業は新型コロナワクチンへのアクセスを模索し始めたばかりだが、人が密集する倉庫や工場、店舗の売り場などでは、ワクチン接種が安全な事業運営再開の鍵になるとみられている。

国際医療法を専門とするジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン教授は「企業は全従業員にワクチンを接種させる正当な理由とともに、全ての従業員と顧客の安全を守る義務がある」と指摘する。

同教授や他の5人の医療法専門家によると、米民間企業には健康や安全面の基準を設定する幅広い権限があり、雇用の条件として、一定の例外の下でワクチン接種を義務付けることが可能という。

米雇用機会均等委員会(EEOC)は5月、雇用主が職場復帰前の従業員に新型コロナ検査を義務付けるのを認めており、一部の専門家はワクチンについても同様の判断が適用される可能性があるとみている。

ただ、ドレクセル大学のロバート・フィールド法学・公衆衛生学教授は、新型コロナワクチンの接種義務化を検討している企業は規制当局の正式承認を待つべきだと指摘。緊急使用許可(EUA)の段階でワクチン接種が義務付けられた前例はないため、根拠が弱いとした。

雇用主によるインフルエンザ予防接種義務付けに反対して医療従事者が起こした過去の裁判ではおおむね、適切な例外措置が設けられている限り病院側の主張が認められてきた。

米政府機関はこれまでのところ、新型コロナワクチンの接種義務付けについて見解を示していないが、米労働安全衛生局(OSHA)は過去に、雇用主にはワクチン接種を義務付ける権利があるとの立場を示している。

<接種義務化の可能性低い>

企業側は今のところ、接種義務付けの議論は控えている。フォード・モーターは従業員にコロナワクチンを提供するため約10台の超低温冷凍設備を発注したが、接種は希望者を対象にするとしている。

ケロッグの広報担当者は、各地方の規制に従って希望する従業員にワクチンを提供するため医療専門家や業界団体と協力して取り組んでいると述べた。

ジョージ・ワシントン大学法科大学院のピーター・マイヤーズ教授は「理論的に企業は(接種)義務付けが可能だが、現在の政治環境ではそうした可能性は非常に低い」とし、「米国民は義務を嫌う傾向がある」と語った。

各種調査ではコロナワクチンの安全性に懸念を抱く国民が多いことが明らかになっており、ピュー・リサーチが9月に行った調査では回答者1万人の半数近くがコロナワクチンの接種を絶対もしくはおそらく受けないと答えた。

米医療業界では毎年のインフルエンザ予防接種などワクチン接種の義務付けが一般的で、学校に通う子どもについても全ての州がワクチンを義務付けている。

従業員や保護者は、健康上の理由か、信教もしくは個人的信念という主に2つの理由で接種を拒否することができる。

ワクチン接種を義務付ければ訴訟になると指摘する専門家もいる。信教の自由の侵害を主張する訴訟は、保守派判事が多数派になった連邦最高裁に持ち込まれる可能性がある。

(Tina Bellon記者)

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