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焦点:イランの供給途絶でも対応可能なOPEC、紛争全面拡大なら苦境か

ロイター / 2024年10月3日 9時46分

 イランの石油供給が今後、イスラエルによる施設攻撃で完全に途絶しても、石油輸出国機構(OPEC)にはその穴を埋める十分な生産余力がある。2005年7月撮影(2024年 ロイター/Raheb Homavandi)

Maha El Dahan Ahmad Ghaddar Dmitry Zhdannikov

[ロンドン 2日 ロイター] - イランの石油供給が今後、イスラエルによる施設攻撃で完全に途絶しても、石油輸出国機構(OPEC)にはその穴を埋める十分な生産余力がある。しかしイランやその代理勢力がペルシャ湾岸産油国の施設に打撃を与える展開になれば、話は全く違ってくるだろう。

レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラに空爆や限定的な地上侵攻を行うイスラエルに対して、イランは1日に大規模なミサイル攻撃を実施した。イスラエルのネタニヤフ首相はすぐに、イランは大きな間違いを犯し、代償を支払うことになると主張。さらにイランが、イスラエルが報復に出れば、手ひどく反撃すると威嚇するなど緊張が高まり続けている。

米ニュースサイトのアクシオスは2日、イスラエル高官の話として、イラン攻撃の対象には他の戦略地点とともに石油生産施設が含まれると伝えた。OPEC加盟国のイランの石油生産量は日量約320万バレルで、世界全体の3%を占める。

イランは米国から制裁を発動されているにもかかわらず、今年になって石油輸出が日量170万バレルと数年来の高水準に達した。主な買い手は中国の精製業者。中国政府は、米国の一方的な制裁措置を認めていない。

エナジー・アスペクツ共同創設者のアムリタ・セン氏は「イランの石油生産がゼロになる事態はわれわれの基本シナリオではないが、理論的に言えばそうなってもOPECプラスはショックを解消できる生産余力を持っている」と述べた。

OPECと非加盟産油国でつくるOPECプラスは近年、原油価格下支えのために協調減産を続けており、確かに数百万バレル前後の増産は可能だ。

現在の協調減産規模は586万バレル。アナリストの試算では、サウジアラビアは300万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)は140万バレルの増産ができる。

OPECプラスが2日に減産方針の順守状況を点検する目的で開いた会合では、イスラエルとイランの対立は議題に上らなかった、と複数の関係者は話す。そのうちの1人は「地政学的状況に言及があり、紛争のエスカレートを希望しないとの見方が示されただけだった」と明かした。

UBSのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は、OPECの生産余力の大半はペルシャ湾岸産油国に存在する以上、地域の紛争がさらに拡大すれば、そうした生産余力は足場が弱まる恐れがあると指摘する。

同氏は「ペルシャ湾岸のエネルギー関連インフラが攻撃されれば、実際に利用できる生産余力はずっと小さくなるかもしれない」と述べ、深刻な混乱が生じれば西側諸国は戦略備蓄の取り崩しを迫られる可能性もあると警告した。

今のところイスラエルはイランの石油施設への攻撃は差し控えている。ただ専門家らは、イスラエルにその気があれば、イランの精製施設や自国産原油の約90%を積み出しているカーグ島を攻撃することができるとの見方を示した。

1980年代のイラン・イラク戦争時には、イラクが定期的にカーグ島周辺を航行するタンカーに攻撃を加え、同島の破壊をほのめかしていた。

RBCキャピタル・マーケッツのヘリマ・クロフト氏は「イランとその代理勢力は、今の危機が全面戦争に発展した場合、そのコストを世界的なものにするために中東の他の地域のエネルギー生産活動を攻撃の標的にしてもおかしくない」と話す。

2019年にはイランの代理勢力による無人機攻撃でサウジの処理施設が損害を受け、一時サウジの原油生産は半分に落ち込んだ。

PVMのタマス・バーガ氏は「紛争がエスカレートすれば、イランの代理勢力は中東産油国、とりわけサウジに攻撃を仕掛けるのではないか」と述べた。

サウジとイランは19年以降、政治的融和が進んできたとはいえ、なお難しい関係にあるのは間違いない。

<米国の増産が安心材料>

原油価格は過去数年間、ロシアとウクライナの戦争や中東での紛争が発生している中でも、1バレル=70―90ドルの狭い範囲で落ち着いて推移してきた。

ブラック・マウンテンのレート・ベネット最高経営責任者(CEO)は、米国の石油増産が市場のリスクプレミアム縮小に寄与したとみている。

世界の原油生産に占める米国の比率は13%、OPECは25%、OPECプラスは約40%となる。

ベネット氏は、米国からの供給とOPECの生産余力が市場では、中東情勢が緊迫しても劇的な供給ショックを防いでくれる要素だと解釈されていると説明した。

とはいえ中東で石油生産量に大きく響くほど紛争が広がれば、原油価格上昇は避けられないだろう。

それによってガソリンなど燃料の価格が跳ね上がれば、米大統領選では民主党候補ハリス副大統領よりも共和党候補トランプ前大統領にとって有利に働く可能性も出てくる。

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