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アングル:急ぐ気候変動の予算消化、トランプ氏勝利なら撤回も

ロイター / 2024年10月3日 18時28分

10月2日、 バイデン米大統領が、気候変動対策向けに確保した予算の消化を急いでいる。写真は同日、ノースカロライナ州ローリーでハリケーンの被害について説明を受けるバイデン氏(2024年 ロイター/Evelyn Hockstein)

David Sherfinski

[リッチモンド(米バージニア州) 2日 トムソン・ロイター財団] - バイデン米大統領が、気候変動対策向けに確保した予算の消化を急いでいる。11月5日の大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が当選すれば、気候変動や環境問題の分野でバイデン政権が打ち出した取り組みが全面撤回される恐れがあるためだ。

トランプ氏は大統領選でバイデン氏の気候対策とエネルギー政策を争点化して批判。バイデン氏にとっては、自身がせっかく署名して成立させた関連法と膨大な予算が、選挙結果次第で台無しにされるかもしれない事態となっている。

労組と環境保護団体の連携組織「ブルーグリーン・アライアンス」のケイティー・ハリス氏は「バイデン政権は予算の執行や執行義務化を進めようとしている。これはかなりの大仕事だ」と述べた。

バイデン氏が2年前にインフレ抑制法(IRA)に署名して以来、これまでに数十億ドルが気候変動対策として拠出されたが、まだ相当な規模の予算が待機状態にあり、残された時間は乏しくなりつつある。

ブルーグリーンのハリス氏は、共和党が上下両院で多数派を握れないまま、こうした予算を取り消そうとすれば大混乱が起きると予想。それでもトランプ氏は、返り咲きを果たせば気候変動関連の取り組みの進展を遅らせる可能性があるのは間違いないとみている。

<関連雇用創出>

IRAの下でクリーンエネルギー推進に割り当てられた予算は当初3800億ドル。ただ、風力発電や太陽光発電などの税額控除対象が想定より広がったため、向こう10年の予算総額は1兆ドルに膨らんだ。

米国に拠点を置くNGO「環境保護基金(EDF)」の政治活動部門、EDFアクションのデービッド・キーブ氏は、こうした税額控除のおかげで電気自動車(EV)と電池のセクターだけで2000億ドルを超える民間投資が行われたと評価する。

エネルギー省が最近公表した報告書によると、昨年のクリーンエネルギー関連雇用の伸びは4.2%と経済全体の2%を大きく上回り、計14万2000人分が創出された。

一方、トランプ氏はIRAの未消化予算取り消しを公約に掲げ、これらの予算を「新たなグリーン詐欺」と呼んで否定。共和党のジョンソン下院議長も、IRAの全面撤回は必ずしも必要でないとしつつも、一部予算削減に意欲を示している。

ただ、共和党の姿勢も一枚岩ではない。8月には8人の共和党下院議員がジョンソン氏に、IRAの下で導入されたクリーンエネルギーの税額控除廃止には反対すると表明。廃止は民間投資に打撃を与えて開発をストップさせてしまうため、最悪の場合はこれまでに多額の予算を投じながら納税者にはほとんどメリットがなくなる恐れがあると訴えた。

税額控除廃止には議会の承認が必要だが、トランプ氏は制度の修正や実行延期などによって骨抜きにしようとするかもしれない。

ただ、キーブ氏は「税額控除は導入まで時間がかかるだけでなく適用期間が10年に及ぶ。このような規則の確実性に疑問が呈されれば、われわれが速やかに前進して経済的な恩恵を受ける力が損なわれてしまう」と強調した。

<勝負の数カ月>

バイデン氏がIRAに署名した後、連邦政府の各省庁はフル回転をして、予算執行に関連した推定で350件かそれ以上の行政手続きを行った。

IRAとインフラ投資・雇用法に基づく支出を記録している「クライメート・プログラム・ポータル」を運営するアトラス・パブリック・ポリシーのトム・テーラー氏は「今年はIRAに基づく支出が急速に増えている」と話した。

9月初め時点までに拠出された気候変動対応資金は610億ドルで、その大半が今年の実行分。テーラー氏は、これは税額控除や連邦政府の直接支出、ローンなどは含まれていないので全体の一部に過ぎないと説明した。

テーラー氏によると、今後も予算消化に多大な労力が費やされ、できるだけ早期の執行が目指されるだろうが、バイデン政権が終わる前に全ての予算が消化される可能性はないだろうという。

ブルーグリーンのハリス氏は「誰もが政府職員の健闘を祈らなければならない。彼らはこれから数カ月、とても忙しくなる」と述べた。

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