焦点:イランのミサイル攻撃、大規模かつ複雑に イスラエル防衛さらに負担
ロイター / 2024年10月3日 17時22分
FILE PHOTO: A projectile is seen in the sky after Iran fired a salvo of ballistic missiles, amid cross-border hostilities between Hezbollah and Israel, as seen from Tel Aviv, Israel, October 1, 2024. REUTERS/Ammar Awad/File Photo
Gerry Doyle
[2日 ロイター] - 複数の専門家は、イランが1日に実施したイスラエルに対する弾道ミサイル攻撃について、今年4月の攻撃よりも大規模かつ複雑で、より先進的な兵器が使われたと指摘している。
このためミサイル防衛に前回よりも大きな負担がかかり、迎撃を免れた弾頭が増えたという。
攻撃に使われた180発以上のミサイルの残骸は現在も収集・分析中だが、専門家によると、使用されたミサイルは「ファタ─1」と「ヘイバルシェカン」とみられる。射程はともに約1400キロと報告されている。
イランによると、この2つのミサイルは弾頭の操縦が可能で、迎撃が相対的に難しいほか、固形燃料を使用するため発射準備時間が短い。
ミドルベリー国際問題研究所のジェームズ・マーティン不拡散研究センターで東アジア不拡散プログラムのディレクターを務めるジェフリー・ルイス氏は「発射準備が短ければミサイルが一斉に到達し、防衛に一層の負担がかかる」と指摘。
「弾頭は若干の操縦が可能で、迎撃の調整が複雑になる。目標への命中精度も高まる」と述べた。
4月の攻撃では兵器の大半が米国とイスラエルのミサイル防衛システムに撃墜されたが、ファタ─1も一部使われた。
ただルイス氏によると、その際に主に使われたのは液体燃料式弾道ミサイル「エマード」で、故障率は50%に達すると報告され、精度は直径1キロ以上の目標を攻撃できる程度だという。
一方、イランはより先進的な弾道ミサイルの「平均誤差半径」が約20メートルとしている。これは目標に向けて発射されたミサイルの半数が目標の20メートル以内に着弾することを意味する。
国際戦略研究所(IISS)のファビアン・ヒンツ国防・軍事担当研究員はこれについて「イスラエルに到達可能なイランの最新鋭弾道ミサイルだ」と語った。
<今後さらに大規模な攻撃も>
1日の攻撃を撮影した動画には、地上に到達したミサイルの再突入体(弾頭を搭載している部分)とみられる物体が映っている。一部は迎撃されたもので、大気圏上空で撃墜されたものもあった。
米国防総省は、米軍艦艇がイランのミサイルに約12発の迎撃ミサイルを発射したと発表している。
カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏は、今回の攻撃と4月の攻撃を直接比較するのは難しいだろうと指摘。兵器だけでなく、攻撃や防衛の構造が全て変わったとの見方を示した。
例えば、4月の攻撃では速度の遅いドローン(無人機)や巡航ミサイルが使用され、防衛する側の準備時間が長かったという。
同氏は「攻撃パターンが変わった。イスラエルの迎撃ミサイル『アロー』の備蓄の減り方は大きかったとみられる。イラン革命防衛隊の航空宇宙軍は、より先進的で性能の高いミサイルを前回よりも多数使ったようだ」と述べた。
被害の報告は限られており、イスラエルは1日の攻撃直後、死者は出ていないと表明した。
ただ、オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デイビス上級アナリストは、攻撃が今後さらに複雑化し、今回の攻撃よりもさらに大量のミサイルが使用される可能性があると指摘。
「イランが格段に大規模な攻撃を行えば、迎撃を免れるミサイルが増える可能性が高い。特に弾道ミサイル攻撃と、巡航ミサイル、ドローン攻撃を連携させた場合はそうだ。今回の攻撃が最大限の規模だったとは絶対に言えない」と述べた。
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