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アングル:ブラジルのBYD工場建設、中国人労働者が置かれた「奴隷状態」

ロイター / 2025年2月3日 13時32分

中国電気自動車(EV)大手、BYD(比亜迪)の新工場が建設されているブラジル北東部バイア州カマカリ。現場へ中国本土からはるばるやってきた労働者の賃金は、中国の多くの地域の平均時給の2倍を超えるが、そこは「奴隷のような環境」だった。写真は1月3日に撮影した、労働者163人の宿泊施設(2025年 ロイター/Joa Souza)

Fabio Teixeira

[カマカリ(ブラジル) 31日 ロイター] - 中国電気自動車(EV)大手、BYD(比亜迪)の新工場が建設されているブラジル北東部バイア州カマカリ――。建設作業の現場へ中国本土からはるばるやってきた労働者の賃金は10時間のシフト制で約70ドルと、中国の多くの地域の平均時給の2倍を超える。多くの人にとって、この賃金条件が簡単に契約を結んでしまった理由だ。

だがそこは「奴隷のような環境」で、出て行くのがずっと難しい過酷な職場だった。

ブラジルでBYDの下請け企業、ジンジャン建設に雇用された中国人労働者は、パスポートを取り上げられたばかりか、賃金の大半は中国に直接送られて預託され、半年間の仕事を経てようやく手に入る仕組みだったことが、ロイターが雇用契約の内容を確認して分かった。

昨年12月、ブラジル労働当局が「奴隷同然の環境」と評したこの現場から中国人労働者163人を救出。そのうちの1人が所持していた雇用契約書には、ブラジルと中国双方の労働法に違反する条項が含まれていた、とブラジルの立ち入り調査担当者や中国の法律専門家は証言している。

ジンジャン建設はこの契約書に基づき、半年の労働契約を一方的に延長したり、生活区域でけんかやシャツを着ないでうろつくなどの行為に200元の罰金を科したりする権限も有していた。

ニューヨーク大学法科大学院のフェローで弁護士のアーロン・アレグア氏は、多くの契約条項は典型的な強制労働の事例だと指摘する。

中国人労働者のために米領北マリアナ諸島で雇用主を提訴し、補償を勝ち取った同氏は、パスポートの没収などは中国の法令で禁止されていると付け加えた。

中国本土でもBYDの工場建設作業を請け負っているジンジャン建設は、ブラジル当局の見解は事実に反しており、言語の翻訳に伴う行き違いの結果だと主張している。

昨年12月に発表した声明では、ジンジャン建設の雇用した労働者が「奴隷化」され「救出された」との見方は全く根拠がないと言い切った。

BYDブラジルのシニアバイスプレジデント、アレクサンドレ・バルディ氏はロイターに、BYDとしては昨年11月にブラジルのメディアがこの問題を最初に報じるまで、違法行為は承知せず、そうした報道を受けてジンジャン建設に問い合わせたと説明した。

事情に詳しい2人の関係者によると、バルディ氏とBYDブラジルのタイラー・リー社長は昨年12月2日、ルラ大統領と会談しており、当時2人はルラ氏にBYDは問題解決に動いていると伝えた。

ブラジル大統領府はコメント要請に応じていない。

その2週間後、ブラジル労働当局による立ち入り調査で、BYD工場建設労働者が寝具もない宿舎に押し込められていた実態が判明。トイレが1カ所だけの各宿舎で31人が寝泊まりし、床には私物とともに食べ物が積み上がっていた様子について調査官は「人間の尊厳を傷つける環境」と表現した。

バルディ氏はルラ氏との会談した際には、ジンジャン建設の労働契約の内容まで把握していなかったと弁明し「このような状況が二度と起こらないように」対策を講じている、とロイターに語った。また立ち入り調査の後、BYDはジンジャン建設との下請け契約を打ち切った。

ブラジル労働当局はBYDが違法行為を知っていた証拠は提示してない。しかし担当責任者は、工場建設現場での下請け会社の行動である以上、BYDに「直接的な責任」があると断定した。

<雇用創出にも懸念>

BYDは2023年終盤、米フォード・モーターが20年にわたって操業していたカマカリ工場の施設を引き継ぎ、多額の資金を投じて新たなEV工場を建設することに合意した。

フォードは21年のブラジルでの生産終了時に約5000人を解雇したが、BYDによる大規模投資のニュースを受け、失業率が10%前後に上るバイア州でフォードの2倍の雇用が生まれるとの期待が広がっていた。

BYDはロイター向け声明で、工場が全面的にフル稼働した際には地元雇用を創出する決意は変わらないと述べた。

ただ同社が中国から建設労働者を投入したことで、地元労組関係者からは約束が守られるかどうか疑問視されている。

工場建設現場ではなお数百人の中国人労働者が、ブラジル人労働者とともに作業を続けている、と複数の労組関係者がロイターに明かした。ブラジル人労働者からも、飲料水の不足といった職場環境の基準違反に不満の声が出ているという。

BYDはロイターに、新しい宿舎と作業員が利用できる食堂の画像を提供した。それでも労組側は過去の違法行為についてBYDとジンジャン建設を提訴することを決めた。

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