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焦点:ドル150円の神経戦どこまで、当局介入に強気派も身構え

ロイター / 2023年10月4日 18時48分

 10月4日、ドルが150円を突破した直後に円買い介入観測が広がるなど、為替市場が日本通貨当局の動きに一段と神経を尖らせている。都内の為替ボード前で同日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

Shinji Kitamura

[東京 4日 ロイター] - ドルが150円を突破した直後に円買い介入観測が広がるなど、為替市場が日本通貨当局の動きに一段と神経を尖らせている。歴史的な米金利高を支えに買いを進めてきたドル強気派も、積極的なポジション構築にはいったん慎重になるとみられ、ドルは高値圏で値動きが極めて小さくなる異例の展開が続く公算が高まってきた。

ある外銀関係者は「150円という節目を超える水準では(介入の)疑心暗鬼が生まれやすい。例えば今夜、150円台で上昇が勢いづけば、再び値動きが大きくなる可能性も十分にある。細心の注意が必要な状況だ」と身構える。

<1分間で2.5円の円急騰>

「介入ライン」として警戒されていたドルが150円台へ乗せたのは、日本時間3日午後11時過ぎ。米国で発表された8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想を上回り、約2年ぶりの大幅増加となったことが引き金だった。

米国では最近、雇用者数の伸びが鈍化し始め、求人件数も減少が目立つなど、連続利上げで労働市場の軟化を警戒する声が多く上がっていた。重量級指標とは言い難いJOLTSの上振れに大きく反応したのはそのためで「6日発表の雇用統計に期待を持たせる形となった」(アナリスト)という。

発表を受けて米10年債利回りが16年ぶり水準で一段高となると、ドルもじり高となって150.16円までさらに上昇した。しかし、その数分後に「上値でまとまった売りが出た」(外銀幹部)ことが介入を連想させ、処分売りが一気に殺到。これまでドルを買い上げた向きの損失確定売りも巻き込みながら、1分間で147円前半まで、約2.5円の急落となった。

この際、市場ではドルの売り手を巡って、様々な思惑が広がった。もし、通貨当局の委託を受ける可能性がある金融機関だった場合、介入を想定する参加者が増えて「かなりのインパクトがある」(同)ためだ。

ドル150円超は昨年10月、政府・日銀が2日間で過去最大の6兆円超を投じ、32年ぶりの円安を介入の力技でせき止めた水準。150円乗せ直後に発生した介入騒ぎは、当時の記憶が参加者の間に強く残っている様を浮き彫りにした。

鈴木俊一財務相は4日午前、介入の事実関係を問う記者団に対して「お答えしない」と応じ、介入を公表しない、いわゆる覆面介入の可能性に含みを持たせた。事実関係は現時点で定かではないが、少なくとも前日の円急騰で、介入に対する警戒感が一段と強まったのは確かだ。

<世界的な利上げ打ち止め気運、ドル高を加速>

円安が止まらない背景には、ドルの全面高がある。前月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、その傾向はより鮮明となり、きょうまでに対円と対豪ドルで11カ月ぶり高値を更新したほか、対ユーロで10カ月ぶり、英ポンドとスイスフランに対しても7カ月ぶり高値を付けた。

原動力はもちろん、来年の利下げ見通し後退と2年債で17年ぶり、10年債で16年ぶり高水準に達した米金利だが、米以外の主要国で急速に進めてきた利上げがインフレ抑制に効果を発揮してきたことも、相対的に好景気・高金利を維持する可能性が高い米国にマネーが集中する一因になっている。

欧州中央銀行(ECB)理事会の先月15日以降、きょう政策の据え置きを決めたニュージーランド中銀まで、会合を開いた主な19中銀のうち、半分超の12行が現状維持で、2行が利下げに踏み切った。事前予想は利上げだったが引き締めを見送ったスイスや英国はFOMC後の通貨下落率が2%超に達し、ドルの押し上げに大きく貢献した。

<際立つ米の高成長見通し、高金利も長期化>

みずほ証券チーフ為替ストラテジストの⼭本雅⽂氏は、各国で追加利上げの余地が狭まる中、参加者の焦点が追加利上げの有無から、高金利政策をどの程度、維持することができるかに移行してきたと見る。「高金利が持続する『長さ』の判断材料として、景気の強さが注目されている」という。

各国・地域の7─9月期国内総生産(GDP)予想はまだ出揃っていないが、英欧スイスなどが0%台にとどまる一方、米国は3%超と突出した成長となる見通し。米アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」も、プラス4.9%と大幅な伸びを推計している。世界的な利上げ局面が終了しても、高金利政策をしばらく維持する可能性が最も高いのは米国、との見立てがドルを支えている。

<財務官も注目のインプライド・ボラティリティー、前回介入時大きく下回る>

ところが、そんなドルの上昇ピッチは極めて鈍い。ドルが143円台へ上昇して介入警戒感が高まり始めた8月以降、前日までにNY市場の引け値が前日比で1%以上変動した日はゼロ。ドル/円相場で2カ月以上、1%を超えて変動する日がなかったのは、21年12月から昨年2月まで以来、およそ2年ぶりのこととなる。

停滞する値動きを反映し、通貨オプション市場では、ドル/円の1カ月物予想変動率(インプライド・ボラティリティー)が9月末に、1年半ぶり低水準となる7%台まで低下した。前日海外で上下3円の急変動があったにもかかわらず、きょう日中のドルが149円前半で横ばいとなったこともあり、現在も9%台にとどまっている。前回介入のあった昨年10月の16%台には、遠く及ばない水準だ。

神田真人財務官はきょう午前、首相官邸で岸田文雄首相と面会した後、記者団に対し、介入は「ノーコメント」としたうえで、為替の「過度な変動」について、インプライド・ボラティリティーなどを含む、様々な要素を総合的に勘案していると説明した。同時に年初来で「ドル/円の20円以上」の値幅も「1つのファクターだ」と述べている。

(基太村真司 編集:橋本浩)

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