アングル:ロシア、バルト海沿岸の港湾強化 穀物輸出先拡大へ
ロイター / 2024年10月4日 17時37分
Olga Popova Gleb Stolyarov
[モスクワ 9月26日(ロイター)] - 世界有数の小麦輸出国であるロシアは、バルト海に面した自国港湾の拡張を進めている。当局者や企業幹部らによれば、ロシアは従来の黒海経由の輸出ルートへの依存を弱めつつ、2030年までに農産物輸出を50%増加させることを狙っているという。
2023-24年度のロシアからの穀物輸出は少なくとも7200万トン。北アフリカや中東といった従来の穀物市場に加え、ラテンアメリカやアフリカといった新規市場への多角化を図っている。
ロシアはこの数十年間、好調の農産物輸出のルートとして黒海沿岸の港湾に頼ってきたが、ウクライナとの紛争により互いの施設やインフラへの攻撃が常態化しているため、この海域での輸送はハイリスクとなっている。
政府の影響下にある農業コングロマリットOZKのクセニア・ボロマトワ副代表は、ロシア南部ソチで開催された業界会合で、「昨年は記録的な豊作となり、現在の輸出向け出荷ペースからすると、処理能力が足りていないことが露呈された」と語った。OZKは黒海沿岸に複数の海運ターミナルを保有している。
過去18カ月間でロシアが新たに開設した主要港湾は2カ所。フィンランド湾に面したビソツキーとルガポルトだ。プーチン大統領の出身地サンクトペテルブルクからも遠くない。
ビソツキー港は23年4月から穀物の出荷を開始した。ルガポルト港は今年6月に運用開始となり、港湾所有者のノボトランスによれば、取扱量は25年初頭までに700万トンに達する見込みだという。
農業コンサルタント企業IKARのドミトリ・リルコ氏は、この新設2港によって、穀物を含め年間最大1500万トンの農産物輸出を処理できると述べた。これは、24-25年度のロシアによる予想輸出量6000万トンの4分の1に相当する量だ。
民間企業のプリモルスキーUPKも、プリモルスキー港に最大500万トンの処理能力を備えた穀物輸出ターミナルの建設を計画中だ。
<処理能力拡大が鍵に>
プーチン大統領は、ブラジルや米国、中国と肩を並べる農業超大国としての地位を固める戦略の一環として、2030年までに農産物輸出を50%増加させる目標を設定している。
ロシアはこの10年間で、小麦、トウモロコシ、大麦、エンドウ豆の輸出量で世界首位となった。問題は、輸出能力のボトルネックにより、今後の成長が制約され得る点だ。
ロシア国内港湾の多くは、過去2年間の記録的な豊作を踏まえ、処理能力拡大計画を発表した。バルト海沿岸のターミナルについては他よりもハイペースの拡大が期待されている。
ノボトランスはメールでコメントを寄せ、「バルト海沿岸の各ターミナルの処理能力拡大は、経済面、輸送面での安全保障、そして主権の問題だ」と述べた。
バルト海の海岸線の96%はフィンランドとスウェーデンを含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国に属しているが、ロシアからの貿易フローと輸送は、この海域では大きな混乱には見舞われていない。
対照的に、黒海ルートでの混乱は激しくなっており、世界銀行の報告によると、世界的な穀物供給の減少につながりかねないという。2週間前にはエジプトに向けて穀物を輸送中のウクライナ船舶がミサイルに被弾した。
ロシアの地方当局は8月、カフカス港内で燃料タンクを運んでいたフェリーがウクライナにより撃沈されたと発表した。このフェリーは穀物の積み替えにも使用されている。
<経済的な魅力>
ロシアは23-24年度、6200万トンの穀物を海路で輸出した。その90%は黒海経由での供給であり、大半が中東・北アフリカの市場向けだ。この比率はバルト海のインフラが拡充されることで低下していくだろう。
公開データに基づいてロイターが試算したところでは、バルト海沿岸の港湾における最新シーズンの穀物積出量は150万トンで、昨シーズンの3倍増となったが、それでもロシアからの輸出量全体の2.4%にとどまる。
ロシア有数の銀行で、農家向けの融資額でも最大手の1つであるガスプロムバンクのダリヤ・スニトコ副社長は、「物流という点から言えば、バルト海は穀物輸出にとって多くの利点がある」と語った。
スニトコ副社長は、バルト海沿岸のターミナルがもっと大型の船舶に対応できるようになれば、全体的なコスト削減につながるはずだという。
「地中海沿岸以外のアフリカ諸国やアジアと貿易する場合、バルト海経由の供給は、アゾフ海から黒海経由での輸出に比べ、経済的に優位に立てる」とスニトコ副社長は言う。
物流企業ルサグロトランスのデータでは、ビソツキー港からの穀物輸出先は、アルジェリア、ブラジル、キューバ、マリ、メキシコ、モロッコ、ナイジェリア、チュニジアとされている。
(翻訳:エァクレーレン)
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