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アングル:ディープシークが欧州に好機、低価格AIで米国追撃

ロイター / 2025年2月4日 18時47分

 ドイツの人工知能(AI)スタートアップ企業ノボAIを率いるヘマンス・マンダパティ氏は2週間前、利用している生成AIを米オープンAIの「チャットGPT」から中国企業ディープシークのモデルにいち早く切り替えた。写真は同アプリ使用中の画面。1月29日、サラエボで撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)

Supantha Mukherjee

[ヨーテボリ(スウェーデン) 3日 ロイター] - ドイツの人工知能(AI)スタートアップ企業ノボAIを率いるヘマンス・マンダパティ氏は2週間前、利用している生成AIを米オープンAIの「チャットGPT」から中国企業ディープシークのモデルにいち早く切り替えた。

ベンチャーキャピタリストの会議に参加するため訪れたスウェーデン南部ヨーテボリでインタビューに応じたマンダパティ氏は「オープンAI(のモデル)を使ってアプリを構築していれば、簡単に他のモデルに移行できる。ほんの数分の作業だった」と語る。

ディープシークの出現はAI業界の景色を変えつつある。各企業が従来に比べてごくわずかの費用で利用可能な技術を提供しているからだ。ロイターが取材したスタートアップ企業幹部や投資家は口をそろえてこうした見方を示した。

マンダパティ氏も、ディープシークのサービス利用料金は実勢の5分の1程度で、ノボAIとしては多額の資金を節約できたし、利用する側にとってはこれまでと何の違いもないと述べた。

米国勢に比べて資金調達面でハンディのあった欧州のスタートアップ企業は、最新のAI技術の採用に後れを取ってきた。しかし複数の業界幹部は、ディープシークが状況を一変させる「ゲームチェンジャー」になり得ると期待を寄せる。

ディープシークのモデルを早速採用した英企業ネットマインド・ドットAIのシーナ・レジャル最高商業責任者は「AIの民主化と、巨大テック企業との競争条件平等化に向けた大きな一歩を意味している」と語った。

バーンスタインのアナリストチームの試算に基づくと、ディープシークのモデルの利用料金はオープンAIの同等製品の20分の1から40分の1に設定されている。

例えばオープンAIは100万トークン当たりの料金が2.5ドルだが、ディープシークは現在、同じ基準で0.014ドルだ。

ディープシークについては、オープンAIのデータを不正に利用したのではないか、あるいは中国の印象を悪くするような回答を検閲で規制しているのではないか、といった疑念も出ている。

それでもベンチャーキャピタル企業ノースゾーンのパートナー、サンジョット・マルヒ氏は「ディープシークの企業としての未来を予測するのは難しいが、(業界の)構造的な影響はかなり広範囲に及んでいるように見受けられる」と指摘した。

<業界への警鐘>

調査会社ピッチブックのデータによると、昨年ベンチャーキャピタル企業によるAI企業への投資額は米国が1000億ドル弱だったのに対して、欧州は約158億ドルにとどまった。

今年1月22日には、トランプ米大統領がソフトバンクグループ、オープンAI、オラクルによる最大5000億ドル規模のAIインフラ向け投資プロジェクト「スターゲート」を発表したばかりだ。

一方で欧州におけるAI投資は比較的低調な状況にある。

オープンAIやメタ、アンソロピック、グーグルといった米国勢が並ぶ支配的な基盤モデルの市場で、欧州勢ではかろうじてフランスのミルストラルだけが名を連ねている。

そこにディープシークが登場して注目を集めた。1月に公表した論文で、同社の大規模言語モデル「V3」の学習に際して、エヌビディアのそれほど先端的でない半導体「H800」を使って費やしたのは600万ドル弱だったと明らかにしたためだ。それ以降、ディープシークのアプリはアップルのアプリストアのダウンロード数ランキングでチャットGPTを抜いて首位に立っている。

アクセレラAIのファブリツィオ・デルマフェオ最高経営責任者(CEO)は「これは大きさの追求が常に好ましいとは限らないという警鐘だ。モデル作成の実現度が誰にとっても高まり、所有の総費用と革新的技術構築の障壁が下がって業界全体に作用する可能性がある」と述べた。

ディープシークの学習費用が本当に同社の主張するほど安いかどうか疑問はあるが、米国勢のモデルと比較すれば安い、というのが専門家の一致した見解だ。

デンマークのエンパティクAIのCEOを務めるウルリック・R-T氏は「ディープシークはわれわれのような企業にとって計り知れないほどの機会(を与えてくれる存在)だとみている。われわれのビジョンを達成する上で膨大な予算が必要ないことが分かった」と語った。

<コストか安全性か>

ディープシーク出現を受け、既に価格競争が始まっている。

マイクロソフトは先週、オープンAIの推論モデル「o1」について、毎月20ドルのところ「Copilot」利用者に無料で提供すると発表した。

スケール・キャピタルのヨアヒム・シェルデ氏は「価格下落に伴って、今後の利用はオープンソースが通常となる透明性の高い分野に向かう。たとえそこが中国であっても」と話す。

ただフィンランドのノキア、ドイツのSAPといった大手企業は安価なモデルへの切り替えに対してより慎重だ。

英シンセシア幹部のアレクサンドル・ボイカ氏は「コストは一つの要因に過ぎない」と述べ、自社がシステムを運用する上で完全に安全性が保たれるのかという別の要因があると付け加えた。

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