情報BOX:外国人に対する中国の「肛門PCR検査」、その理由と実態
ロイター / 2021年3月4日 13時35分
3月3日、中国に入国する外国人の間で、新型コロナウイルスの肛門検体採取PCR検査を実施されることに不快感が広がっている。単に迷惑なだけでなく、心的外傷(トラウマ)を負ったとの苦情も寄せられ、果たして必要なのかという議論が巻き起こりつつある。写真は上海虹橋国際空港、1月撮影(2021 年 ロイター/Aly Song)
[北京 3日 ロイター] - 中国に入国する外国人の間で、新型コロナウイルスの肛門検体採取PCR検査を実施されることに不快感が広がっている。単に迷惑なだけでなく、心的外傷(トラウマ)を負ったとの苦情も寄せられ、果たして必要なのかという議論が巻き起こりつつある。
中国国営メディアによると、首都・北京や上海、港湾都市の青島などが一部外国人に対し、鼻孔や咽頭に加えてこうした肛門によるPCR検査を行っている。
◎肛門検体採取検査とは
中国疾病対策センターの説明では、この検査は無菌の綿棒を肛門内部に3センチから5センチ挿入した後、やさしく回転させて取り出す。
◎なぜ、肛門なのか
中国の一部の医師は国営メディアに対し、新型コロナウイルスの痕跡が検知可能な時間が気道より肛門の方が長いため、確実に検知できる方法だと話している。
ただ、結果が陽性であっても、検査を受けた人が必ずウイルスを拡散し得るわけではない。香港大学のジン・ドンヤン教授(ウイルス学)はロイターに、複製できず他人に感染させられない不活性化したウイルスの痕跡が見つかっても、陽性と判明する場合があると述べた。
欧州のある専門家は、確かにウイルスは鼻孔からよりも肛門から採取した検体において、より長時間とどまるとはいえ、回復期にある患者の場合、もはや感染リスクを生み出さない以上、あえて肛門検査をする医学的な意味はないとの見方を示した。
◎対象は外国人だけか
日本政府は今週、一部の日本人旅行者に対して肛門検査が行われていることについて「多大な心理的苦痛」を受けていると述べ、検査免除を要請した。
韓国外務省の報道官は2日、韓国人旅行者は現在、中国当局が直接肛門から検体を採取する代わりに、自身で採取した検体を提出できるようになっていると説明した。
米新興メディアのバイスは今年2月、米国務省高官の話として、米国の外交官がこの検査を受けたと伝えた。中国外務省はこの報道を否定している。
もっとも肛門検査が行われたのは、外国人だけではない。1月に中国国内で新型コロナ感染者が増大した際には、幾つかの都市が一部地元住民に対して検査を実施した。
◎中国限定か
上海に空路で入国する旅行者は、搭乗機で5人を超える陽性者が出た場合、必ず肛門検体採取を含めた全面的な検査を受ける必要がある、と国営メディアが疾病対策センター職員の発言を引用して報じた。感染流行地からの旅行者や、入国時に陽性となった人も、全てそうした検査の対象になるという。
肛門検査は中国に入国する全外国人に強制されることはないが、北京を訪れる外国人は必ず受けなければならない、と北京大興区の感染対策部門の職員が、共産党機関紙人民日報系の環球時報に語った。
この職員は「肛門検査のやり方がよく分からない人がいれば、われわれ職員が助け船を出して説明する」と述べた。
肛門検査は、中国限定というわけでもない。スペイン北西部のガリシア自治州でも、入院患者の一部や少数の新生児、鼻孔から検体採取できない精神疾患を持つ人などに対して行われている。
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