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アングル:米で高まる地熱利用への関心、動き出す政府と自治体

ロイター / 2023年11月6日 7時32分

 ゼイネブ・マガビさんは10年余り前に米マサチューセッツ州の自宅を改築した際、1年を通じて変わらない地中の温度を冷暖房に活用するというアイデアに血が騒いだ。写真は米エナジーソースが所有する地熱発電所。2021年9月、米カリフォルニア州カリパトリアで撮影(2023年 ロイター/Ernest Scheyder)

Carey L. Biron

[ワシントン 31日 トムソン・ロイター財団] - ゼイネブ・マガビさんは10年余り前に米マサチューセッツ州の自宅を改築した際、1年を通じて変わらない地中の温度を冷暖房に活用するというアイデアに血が騒いだ。

調べたところ、こうした地熱利用システムは稼働すれば驚くほど効率的だが、設置費用は5万ドルと予算をはるかにオーバーしていた。

ある企業からシステムに加わるよう近隣の住民を説得してくれたら割引すると提案されたが、地域で賛同は得られなかった。しかし、この経験を出発点に研究や体制作りを進め、それが大きく育ちつつある。

マガビさんが共同エグゼクティブ・ディレクターを務める非営利団体「ホーム・エナジー・エフィシェンシー・チーム(HEFT)」は、ガス会社がマサチューセッツ州で近隣住民規模の地熱利用ネットワークを構築する2つの試験プロジェクトの育成を支援している。

「ガス会社がガスからの転換を図るというのは、とても驚くべきことだ」とマガビさん。同プロジェクトはガス会社の人員、ノウハウ、料金徴収システムなどを利用しているという。

米エネルギー省は今年4月、10州で11件の地域地熱利用プロジェクトを支援すると発表。いくつかの州が、この戦略を後押しする新しい法律を可決した。

ガスのインフラが老朽化し、温室効果ガスの排出量削減目標を掲げる自治体が増える中、地熱はグリーンエネルギー移行の完成に不可欠なピースであり、その可能性は極めて大きく、しかも利用できるのは金持ちだけではない、とマガビさんは力説する。「地熱エネルギーは、どこにでもある。(電力網と同時に)今では地熱ネットワークが必要だ」という。

マサチューセッツ州フラミンガムで進む国内初の試験プロジェクトでは、1マイル(約1.6キロ)の距離に最大で深さ700フィートのボーリング孔が複数掘削されており11月中に完了する予定だと、ガス・電気・水道事業者エバーソースのプロジェクトマネージャー、エリック・ボスワース氏は話す。「作業自体は、従来のガス工事と非常によく似ている。ガス事業者は試しにこうした作業を行うのに最適だと考えた」という。

ボスワース氏によると、このシステムは来年、一般家庭や企業、公営住宅、学校、消防署を含む140の顧客向けに冷暖房の提供を開始する予定。今後2年間にわたり専門家がコスト、顧客の電気代と排出量削減状況、電力網への影響などを監視する。

<関心高い消費者>

米連邦政府はフラミンガムなどの初期プロジェクトに倣う取り組みを模索中で、消費者の関心は高い。

ボスワース氏によると、システム沿いに住む住宅顧客の80%以上がプロジェクトへの参加を希望している。また他の顧客からこのシステムを近所に敷設できないか尋ねる電話も受けている。

エネルギー省の地熱担当部門のアレクシス・マッキトリック氏は「地面の下にある熱から安定したエネルギーを取り出す方法は全国で利用可能であり、地域規模で地熱による冷暖房を行えば、消費者にとってさらに利便性が増す可能性さえある」と述べた。

ニューヨーク州は昨年、全てのガス・電気企業にこうしたプロジェクトを義務づけ、労働組合や環境保護団体から大きな支持を得た。現在14の試験プロジェクトが進行中だ。

コロラド州も最近、地熱利用を促進する法律を可決。また、22人の州知事で構成する西部州知事協会は、地熱利用を促進するキャンペーンに乗り出した。

コロラド州では、既に先駆的なプロジェクトが行われている。コロラド・メサ大学は2008年からシステム構築が進み、今ではキャンパスの約3分の2に冷暖房を供給していると、ジョン・マーシャル学長は説明した。このシステムは深さ数百フィートのボーリング孔を通る何キロもの水道管で構成されている。

エネルギーコストの節約は年間150万ドル。システムがキャンパス全体をカバーするようになれば、さらに年間100万ドルが節約できると見込んでいる。学長は「非常にうまくいっている」と語った。

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