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アングル:リスクオフ加速、LTCM危機以来の円急騰 混乱収束見通せず

ロイター / 2024年8月5日 16時50分

 8月5日、 外為市場では世界的な株安と連鎖して円相場が急伸している。写真は円紙幣の見本。都内の貨幣博物館で7月代表撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Shinji Kitamura

[東京 5日 ロイター] - 外為市場では世界的な株安と連鎖して円相場が急伸している。日銀の金融政策正常化に加えて、米景気の急速な後退懸念が強まったことで、この2週間のドル/円の下げ幅は1998年の米ヘッジファンド大手ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)危機以来の大きさに達した。市場は米緊急利下げの思惑まで出回る状況で、パニック的な円の買い戻しにいつ歯止めがかかるのか、見通せない混乱ぶりだ。

<想定外の急変動、「オワコンだったはずの円」>

5日日中の外為市場では、円が一時141.67円まで5円弱急騰。7月3日の38年ぶり安値161.96円から、わずか1カ月で20円超の円高となった。

米利下げ予想のメインシナリオである9月をにらんで、ドル/円は緩やかにピークアウトするとの見方はあったが「ここまで大きく調整するとは思わなかった」(国内銀アナリスト)というのが、多くの参加者の率直な受け止めだ。

円急騰劇の幕開けは7月11日と12日に発生した政府・日銀の介入と見られる円急伸と、その後も続いた円買い介入の思惑などとされるが、参加者の想定を超える変調が鮮明になったのは7月下旬だ。

ハイテク株を中心とする米国株の下落と株安の世界的な広がり、日銀利上げ観測の高まりなどが重なり、円は7月22日から始まる第4週に3.7円、同29日以降の第5週に7.3円と大幅に上昇した。この2週間の上げ幅はリーマンショック時を上回り、98年10月のLTCM破綻時以来、約26年ぶりの大きさとなった。

この大きな流れを作り出す原動力となったのが、高水準に膨らんでいた円売りの巻き戻しだ。

専門家の間で円売りポジションが過去最大級に膨らんでいたことは広く知られているが、日本の個人投資家の間でも「昨年来、円は下落見通しの根強さから『オワコン(終わったコンテンツを意味するネット用語)』扱いされ、上昇局面では常に戻り売りが出ていた」(FX会社幹部)という。

<米緊急利下げの思惑、想定超えの円高も>

円売り/株買いのポジション反転という持ち高調整的な要素に加え、先週来強まってきたのが、米景気急減速というファンダメンタルズの変化に対する認識だ。この2週間で発表された経済指標だけでも、製造業の総合購買担当者景気指数(PMI)や耐久財受注、供給管理協会(ISM)の製造業景気指数、新規失業保険申請件数、そして雇用統計と急速な景気減速を示すものが相次いだ。

JPモルガンは3日、失業率の上振れなど雇用統計の低迷を受けて、利下げ予想を9月と11月にそれぞれ0.5%、12月にさらに0.25%実施すると変更した。0.25%で換算すれば5回分の利下げに相当する幅だ。

米雇用統計前の市場では、年内2回の0.25%利下げとの観測が一般的だった。

さらにJPモルガンは、次回9月の連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに、緊急利下げを実施する可能性があるとの見方も示した。

同社為替調査部の斉藤郁恵氏によると、年初来の翌日物金利スワップ(OIS)が織り込む年末の日米政策金利差とドル/円の相関にこの予想を当てはめると、ドルの適正水準は144円半ばとなる。

しかし、現状は「リスクオフが勢いづいているだけに、短期的にはモデルを超えた一段の円高進行を警戒すべきだ」(斉藤氏)という。

(基太村真司 編集:橋本浩)

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