情報BOX:韓国大統領の弾劾プロセスと過去の実例
ロイター / 2024年12月5日 12時21分
12月4日、韓国の尹錫悦大統領が弾劾される可能性に直面している。尹氏が3日に戒厳令を発令したことを受け、野党議員は尹氏が憲法に違反した上、内乱罪にも該当すると非難している。同日、韓国の国会で撮影(2024年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[ソウル 4日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領が弾劾される可能性に直面している。尹氏が3日に戒厳令を発令したことを受け、野党議員は尹氏が憲法に違反した上、内乱罪にも該当すると非難している。
野党が過半数を占める国会で戒厳令の解除要求決議が可決されたことを受け、尹氏は4日未明に戒厳令を解除した。
大統領の弾劾プロセスと過去の実例は以下の通り。
<法律の規定>
憲法では、大統領や政府高官が「憲法に違反した場合や公務で法律に違反した場合」、国会が弾劾訴追案を提出できるようになっている。
大統領の弾劾訴追案を可決するには、国会議員の3分の2以上の賛成が必要。大統領以外の政府高官の弾劾訴追案には、国会議員の過半数の賛成が必要だ。
憲法裁判所は、大統領が法律に違反したかどうかを判断するため国会が提出した証拠を踏まえ、大統領を罷免するかどうかを決める審理を行う。
<国会の与野党勢力>
国会は現在、野党「共に民主党」が過半数を占めている。共に民主党は尹氏を弾劾すると表明している。共に民主党と他の野党を合計した議席数は192で、弾劾訴追案の可決に必要な200より若干少ない。
与党「国民の力」の一部議員は尹氏の戒厳令に強く反対したが、弾劾訴追案の採決で、こうした与党議員が野党に合流するかどうかや、そのうち何人が賛成に回るかは明らかではない。
<憲法裁判所の審理>
国会が弾劾訴追案を可決すれば、尹氏は憲法裁判所が罷免の是非を判断するまで職務を停止される。
憲法裁判所は国会の法制司法委員長や当局者から口頭弁論を通じて意見を聴取する。
同裁判所は大統領を罷免するかどうかを6カ月以内に決定しなければならない。罷免には裁判官(定数9人)のうち6人以上の賛成が必要。
憲法裁判所の裁判官は現在6人で、3人が空席。弾劾訴追は裁判官7人以上で審理しなければならないが、同裁判所はこの規定を免除されている。それでも同裁判所が裁判官定数9人に満たない状況で弾劾を審理するかどうかは明らかではない。
<大統領罷免後の手続き>
大統領が罷免されれば、新たな大統領を決める選挙を60日以内に実施しなければならない。
尹氏が罷免される前に辞任した場合も、同様に大統領選の60日以内実施が必要。その間、首相が暫定的に大統領代行を務める。
2017年には当時の朴槿恵大統領が3月9日に罷免されたことを受け、同年5月に大統領選が実施された。
<過去の罷免実例>
韓国の大統領として罷免されたのは朴槿恵氏が初めて。同氏は親友による国政介入や大統領権限の乱用が憲法違反と判断された。
国会は2016年12月に朴槿恵大統領の弾劾訴追案を可決。その際、与党議員の一部も賛成に回った。
朴槿恵氏は1979年に暗殺された朴正熙元大統領の娘。
<盧武鉉氏は罷免免れる>
2004年には当時の盧武鉉大統領に対する弾劾訴追案が可決された。盧武鉉氏は公務員に求められる中立義務に違反したとされた。
だが憲法裁判所は盧武鉉氏に対する弾劾訴追を棄却。これを受けて同氏は停止されていた大統領権限を再び認められ、5年の任期を務めた。
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