賃上げ・値上げの循環が必要、市況高の転嫁進展で=黒田日銀総裁
ロイター / 2021年10月6日 14時46分
日銀の黒田東彦総裁は6日、日米財界人会議(オンライン形式)で、国際商品市況が高騰する中で企業が価格転嫁を進めていくためには、収益の一部を賃上げという形で家計に還元し、賃金と物価が循環的に上がっていく状況を作っていくことが重要だと述べた。都内で昨年1月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 6日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は6日、日米財界人会議(オンライン形式)で、国際商品市況が高騰する中で企業が価格転嫁を進めていくためには、収益の一部を賃上げという形で家計に還元し、賃金と物価が循環的に上がっていく状況を作っていくことが重要だと述べた。
日本経済については、ワクチン接種証明書の活用などで感染抑制と消費活動の両立が一段と進んでいけば、サービス部門も含めて経済の回復傾向は明確になってくる可能性が高いとの見方を示した。
黒田総裁は講演後の質疑応答で、前年比5%台の伸びとなっている日本の企業物価指数とゼロ%程度にとどまる消費者物価指数のかい離に言及。このかい離の解消のためには、賃上げと価格転嫁の「好循環」(virtuous cycle)を繰り返すことが必要だと述べた。
具体的には、企業が収益を向上させて賃金を上げれば家計の可処分所得が増え、インフレへの対応も可能になり、企業もコスト上昇分を商品の販売価格に転嫁できるようになると説明。この循環が出てくれば人々は物価の上昇に慣れ、インフレ期待も生まれてくると語った。
黒田総裁は、こうした循環が出てくるように金融緩和を継続していくと述べる一方、デフレマインドの克服には企業・家計双方の取り組みが必要だと述べた。
黒田総裁は講演で、コロナ危機下の労働市場について、日米で大きく異なる展開をたどってきたと指摘。その違いがインフレ率にも無視できない影響を与えていると述べた。
最近の消費者物価上昇率では、米国は5%を超え、30年ぶりの高い上昇率を示している。黒田総裁は、日本が米国ほど急速に需要が回復していないことに加え、多くの企業が雇用を維持してきたため、需要増加に対する供給制約は限定的なものにとどまっており、急いで賃金や価格を引き上げる必要に迫られていないと語った。
日本経済については「海外経済の回復を背景に、輸出・製造業部門主導で持ち直している」と指摘。ワクチンの接種率も米国と肩を並べる水準まで上昇してきていると述べた。
気候変動問題については、中長期的に経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼし得る点で、中央銀行の使命に関わると述べた。今後30年弱でカーボン・ニュートラルを実現するという意欲的な課題を解決するためには、日米の経済界がこれまで以上に手を携え、アイデアを出し合っていくことが重要だと指摘した。
黒田総裁は質疑応答で、日銀による気候変動対応の柔軟性を強調した。各国の気候変動政策や規制の動向を見ながら、日銀自身の施策も調整していくと述べた。
黒田総裁は講演と質疑応答に英語で発言した。
(杉山健太郎、和田崇彦 編集:青山敦子)
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