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インタビュー:マイナス金利解除でもYCCは当面撤廃せず=関MUFG常務

ロイター / 2023年10月6日 13時56分

 三菱UFJフィナンシャル・グループで市場事業本部長を務める関浩之執行役常務は、日銀が早ければ来年1月に先行的にマイナス金利解除を行う可能性があるとした。写真は都内で2018年4月撮影(2023年 ロイター/Toru Hanai)

Ritsuko Shimizu Makiko Yamazaki

[東京 6日 ロイター] - 三菱UFJフィナンシャル・グループで市場事業本部長を務める関浩之執行役常務は、日銀が早ければ来年1月に先行的にマイナス金利解除を行う可能性があるとした。物価の上振れリスクの顕在化が予想されるなか、注目される賃金についても、大手企業は引き続き引き上げに動く可能性が高いという。その場合、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)は当面撤廃せず、さらに柔軟化し、長期金利の跳ね上がりを抑制することになるとみている。

関常務はロイターとのインタビューで、人手不足に起因する非正規雇用も含めた賃金の上昇はもとより、企業の継続的な価格転嫁の動き、サービス価格への波及等、物価のメカニズム自体が既に構造的に変化していること等を踏まえると「物価上昇がすみやかに鎮静化に転じて行くことは想定しにくい」と指摘。

ガソリン・電気・ガスの補助金の期限が延長になったことによるベース効果等もあり、23年度に続き24年度の物価(コアCPI)が前年比で2%超の伸びを持続する可能性が見込まれる。さらには、ロシア・ウクライナ情勢の泥沼化による資源価格や食糧価格のさらなる上昇、円安のさらなる進行・常態化などによって輸入物価の上昇圧力も再度強まってくることがあれば、物価上昇が続く可能性が高まる。関常務は「まさに物価の上振れリスクが顕在化し始めることにほかならない」とし、日銀は「マイナス金利の解除を検討せざるを得なくなる」と述べた。

マイナス金利解除のタイミングについては、解散総選挙がある場合には留意が必要としたうえで、賃上げに関するデータの収集を踏まえ「メインシナリオは来年4月ながらも、早ければ、来年の1月の会合で先行的にもマイナス金利の解除やYCCのさらなる柔軟化に動く可能性もあると思われる」とした。

少なくともグローバルな大手企業を中心に円安等を追い風に収益が拡大しており、賃上げ余力があるとみている。

マイナス金利を解除した場合、ボラティリティの高まりや長期金利の急上昇を招く懸念もあるため、当面、YCCは撤廃しないとみている。

長期金利跳ね上がり抑制の選択肢としては、防衛ラインとなるYCCの上限値の1%超の水準へのさらなる引き上げや、国債の買いオペの金額・対象年限の調整等の選択肢が考えられるとし「これらを実務上どのように組み合わせていくか等、日銀は異次元緩和の解除・正常化に向けて難しい舵取りを迫られることになる」と述べた。

<異次元緩和継続下での財政支出拡大、市場参加者から懸念・危惧も>

日銀が7月にYCCの柔軟化を行って以降、10年長期金利はジリジリと上昇し、0.8%台に乗せた。今後の動向については、物価・賃金の動向、一段の円安の進行・円安の常態化等為替や海外金利の動向、政治動向次第としたうえで「買い入れオペによる需給の逼迫を背景に、今しばらくは0.7%台前半―0.8%台前半のレンジでもみ合い」を想定しながらも「政策修正観測が一段と強まり、それに伴う市場参加者の需要がさらに減少していく場合には、海外金利の動向次第だが、徐々に0.8%台前半―1%のレンジまで水準を切り上げていく可能性もある」とみている。

ただ、関常務は、仮に0.8―1%といったレンジに金利が上昇した場合でも「海外金利動向も含め、日銀の政策修正観測が燻り、金利先高観が払拭し切れない状況では、本格的な現物債券への投資までには踏み切らない」とし、スワップ取引等、デリバティブを活用しながら、徐々にポジションを復元することを慎重に進めるとした。

米国の財政運営に不透明感が漂う中で、日銀が物価上昇は見通せる状況にはなっていないとの判断の下、異次元緩和政策を継続する一方で、政府が物価高騰対策として、各種補助金や減税等、補正予算も通じて財政支出の拡大をさらに積極化する可能性が高まっている状況について「市場参加者の中では、懸念を抱き、危惧する向きも出始めている」とし、市場参加者が現物債の購入に慎重になる一要因にもなっていると指摘した。

外債投資は、抑制的なポジション運営を継続するとしながらも、インフレが鎮静化し、景気減速傾向が顕在化し始めると金利は低下に転じる可能性が出てくることから「中長期の米国債の購入によるポジション復元のタイミングは引き続き探っていく」との方針を示した。

*インタビューは4日に実施しました。

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