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焦点:日本の防衛力増強、円安で縮小 ヘリ半減・飛行艇見送り

ロイター / 2023年11月6日 13時42分

 過去最大の5年で43兆円に増額した日本の防衛力整備計画が、円安で縮小を迫られている。輸入する米国製だけでなく、国産装備も部材高で価格が上昇。複数の関係者によると、防衛省は長距離ミサイルなどの購入を優先し、輸送ヘリコプターの調達数を半減、救難飛行艇の取得を見送った。写真はCH-47ヘリコプターから降下する陸上自衛隊の隊員。2022年5月、静岡県御殿場市や裾野市などにまたがる東富士演習場で撮影(2023年 代表撮影)

Nobuhiro Kubo Takaya Yamaguchi Tim Kelly

[東京 6日 ロイター] - 過去最大の5年で43兆円に増額した日本の防衛力整備計画が、円安で縮小を迫られている。輸入する米国製だけでなく、国産装備も部材高で価格が上昇。複数の関係者によると、防衛省は長距離ミサイルなどの購入を優先し、輸送ヘリコプターの調達数を半減、救難飛行艇の取得を見送った。岸田文雄首相が掲げた「防衛力の抜本的強化」は、計画2年目で狂いつつある。

<調達見送りでUS-2撤退も>

防衛省が2023から27年度までの防衛力整備計画を策定した昨年12月以降、米金利の先高観から円相場は1ドル=150円へ1割下落した。計画1年目こそ前提レートを1ドル=137円としたが、2年目以降は22年度の政府公式レート108円を使って予算を積み上げた。

43兆円の防衛費は、ドルベースだと3割以上消失する。政府や防衛産業の関係者8人によると、防衛省は予算全体が目減りする中で調達に優先順位をつけ始めた。敵基地攻撃にも使える長距離ミサイルの量産やイージス艦の建造、F35戦闘機や弾薬などを先にそろえ、整備を急がないと判断した装備は削減あるいは先送りしつつある。

調達の検討過程を知る関係者2人によると、防衛省は計画2年目の24年度に輸送ヘリコプター「CH-47」を34機まとめ買いする考えだったが、円安や機体改良によるコスト上昇で単価が147億円から約200億円に膨らんだため、8月の来年度概算要求で半分の17機に減らした。

米ボーイングが開発した同ヘリは部品の多くを米国から輸入し、川崎重工業が国内で組み立てる。「円安による値上がりが価格上昇要因のおよそ半分」と、関係者の1人は説明する。「残りの機数(の調達)は27年度までの計画期間中には難しい」と、同関係者は言う。

別の関係者2人によると、防衛省は24、25年度に1機ずつ検討していた新明和工業の救難飛行艇「US-2」の取得も見送った。前回調達した際の価格は190億円だったが、新明和の関係者によると、同社は防衛省に24年度300億円、25年度700億円で単価を提示した。

値上げの要因は円安と部材高。さらに同関係者によると、胴体と翼をそれぞれ供給する川崎重工と三菱重工業がUSー2の事業から手を引くと決めたことも見積もり額の引き上げにつながった。同機は海上自衛隊が数年に1度しか発注せず、以前から採算が合わないと指摘されてきた。同関係者は「このままだと撤退が視野に入る」と話す。

防衛省はロイターの取材に、「24年度に真に取得する必要のある機数を検討の上、(CH-47)計17機の取得経費を計上した」と説明。「効率化・合理化を図るべく、(残りの)取得方法を引き続き検討していく」とした。US-2については、再来年度以降に引き続き検討するという。

川崎重工は「調達機数が予定より減ったことも(CH-47の)値上がりの理由」に挙げ、「(5年計画で)示された調達数量の実現をお願いしたい」とした。

新明和は「サプライヤーの理解・協力が得られなければ当社単独で(US-2の)製造能力を維持するのは困難」と回答。生産設備の稼働しない期間が長引く場合、「防衛省の意向を確認した上で具体的な対応策を検討することになる」とした。

川崎重工、三菱重工とも、US-2の生産協力から撤退を決めたかどうかのコメントを控えた。

<防衛相に計画の順守要請>

調達計画の縮小は、日本の安全保障戦略を狂わせかねない。中国が軍事力を拡大し台湾を武力統一する意志を隠そうとしない中、日本は昨年末、米軍と協力して抑止力を高めるとともに、抑止が効かなかった場合の対処力を向上する目標を掲げた。CH-47は、有事に部隊や武器を機動的に展開する輸送力整備の一環だった。

「まだそれほど影響は大きくないが、円安が長引けば日本の防衛力増強計画をむしばむ。主要な武器調達の削減や遅れにつながる」と、米ホワイトハウスの元高官で、ワシントンにある戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長を務めるクリストファー・ジョンストン氏は言う。

防衛省は一部を除き装備の取得予定数を公表しておらず、調達数量を全体でどの程度減らしているか明らかではない。しかし、防衛事業に携わる企業の関係者は「従来50しか調達していなかったものが防衛予算の増加で80に増えるという話になったが、結局60になったというイメージだ」と話す。

発注量が減りつつあることを危惧し、防衛関連企業が加盟する経団連など複数の業界団体は10月25日付で木原稔防衛相に要望書を提出した。書面を受け取った防衛省によると、当初計画通り調達や研究開発を進めること、円安でコスト負担が増している現状に対し補正予算で支援することを求めているという。経団連はロイターの取材にコメントを控えた。

足元の為替相場は、米国の利上げ停止観測でドルがやや弱含んでいる。日本も大規模な金融緩和を修正するとの見方が広がっており、ドル高/円安の相場環境は変わる可能性もある。

防衛費を精査する立場の財務省は、計画通り調達し切れるかどうかは「為替がこの先どうなるか分からない。今の時点で評価するのは難しい」としている。一方で、装備のコスト構造自体にメスを入れるなど、防衛省に調達価格を低減することも求めている。

(久保信博、山口貴也、Tim Kelly 取材協力:竹本能文、豊田祐基子 編集:田中志保)

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