アングル:パナマと米国の移民減合意、危険な地峡通行阻止は困難か
ロイター / 2024年7月7日 8時2分
米国と中米パナマは7月1日、南米からパナマに不法入国した人々を本国に送還することで、危険なジャングル地帯「ダリエン地峡」を経由して米国に渡ろうとする動きを阻止する取り組みに合意した。ただ成果が出る公算は小さく、移民の旅路をますます危険なものにする恐れさえある。写真はダリエン州の移民受入施設に到着した人々。6月28日撮影(2024年 ロイター/Aris Martinez)
Elida Moreno Lizbeth Diaz
[パナマ市 3日 ロイター] - 米国と中米パナマは1日、南米からパナマに不法入国した人々を本国に送還することで、危険なジャングル地帯「ダリエン地峡」を経由して米国に渡ろうとする動きを阻止する取り組みに合意した。ただ成果が出る公算は小さく、移民の旅路をますます危険なものにする恐れさえある。
合意では、米国が本国送還の費用を負担する。だがアナリストによると、現在パナマにはダリエン地峡を経て膨大な数の人々が到着しており、送還は難航しそうだ。
さらに、たとえダリエン地峡を渡る人々の数を減らすことに成功したとしても、他の場所で、おそらくはさらに大きな危険を冒して米国への移民を目指す人々が増える結果に終わる可能性が高いという。
パナマとコロンビアの国境にあるジャングル地帯のダリエン地峡を何日も徒歩で移動する人々は昨年、過去最高の52万人に達した。強盗や暴力、人身売買、性的虐待に遭遇するケースが多い。
米国への移民の大半は近年、ベネズエラやエクアドルなど内紛に直面している南米諸国から押し寄せている。中国やアフガニスタンなど、中南米以外からの移民も増えている。
当局によれば、ダリエン地峡を通過するのは、ほとんどが米国を目指す人々だ。パナマ当局は国際的な援助を求め、国境警備を強化しているが、その数はなお増加の一途をたどっている。
移民問題は、11月の米大統領選挙の中心的な争点だ。バイデン大統領は、自身が不法入国を制御できることを有権者に示したがっている。
バイデン氏はメキシコ国境での拘束者が最近減少していることについて、不法移民に対する広範な制限措置など自身の政策が奏功している証拠だと指摘した。
だが、パナマ側が送還のための十分な航空便を用意できる可能性は低そうだ。
シンクタンク「中南米問題に関するワシントン・オフィス」のアダム・イサクソン氏は「1日1便(100─150人)相当を用意しても、移民の85―90%は送還を免れて旅を続けられる計算だ」と指摘。「しかも『1日1便』が実現する可能性は極めて低い。フライトは高額で、週に2―3便以上の運航すら、十分な資金があるとは思えない」と語った。
西半球問題担当の米高官は記者団に対し、米国はこのプログラムを支援するために600万ドルを割り当てたと語った。
米政府高官は3日、今回は試験的な措置と見なすべきであり、成功すれば他の国まで拡大する可能性があるとロイターに語った。半年以内に効果を検証する予定だという。
一方、パナマ政府によるこれまでの試みは失敗に終わっている。同国は昨年9月、ダリエン地峡を通過する人々の数を減らすための新たな対策を発表し、強制送還を増やすとともに、多くの国籍についてビザ(査証)ルールを変更すると発表した。
ただ、この対策はほとんど効果がなかったようだ。
パナマのホセ・ラウル・ムリノ新大統領は1日の就任式で新たな強制送還便について発表し、これが政策の中核部分だと示唆した。
パナマの元米州機構大使であるギジェルモ・コチェス氏は「原則100人ないし150人を送還する措置により、他の人々も渡航を思いとどまるだろう」と、効果に期待する。
ただ仮にダリエン地峡を通過する移民の抑止力になったとしても、長い目で見て米南部国境に到達する人の数に影響を与えるとは考えにくいとの指摘もある。
メキシコの北部国境大学研究所の移民専門家、イスラエル・イバラ氏は「新たな措置は移民の流れを止めるどころか、かえってより危険なルートへと導くだろう」と述べた。
イバラ氏によれば、例えばコロンビアのサン・アンドレス島やニカラグアのコーン島を経由し、カリブ海を渡る装備不十分なボートに有料で乗せてもらうため、既にダリエンを回避している移民もいる。
ロイターの調査によると、ニカラグアやエルサルバドルに入国するためにチャーター便を利用する移民も増えている。
「最も恩恵を受けるのは、毎度のことだが、人身売買の代金釣り上げを狙う犯罪グループのメンバーだ」とイバラ氏は語った。
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