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アングル:コカ・コーラとペプシ、イスラム圏でボイコット対象に

ロイター / 2024年9月6日 13時23分

 9月4日、米飲料大手のコカ・コーラとペプシコはここ数十年、エジプトやパキスタンを含むイスラム圏の多くの国に多額の投資をして市場を開拓してきた。写真はバーレーンのイーサタウンでペプシのボトルを運ぶ男性。8月30日撮影(2024年 ロイター/Hamad I Mohammed)

Ariba Shahid Jessica DiNapoli Farah Saafan

[カラチ/カイロ/ニューヨーク 4日 ロイター] - 米飲料大手のコカ・コーラとペプシコはここ数十年、エジプトやパキスタンを含むイスラム圏の多くの国に多額の投資をして市場を開拓してきた。

しかし今、パレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルを支援する米国の象徴と見なされて消費者のボイコット対象となり、現地メーカーの攻勢にさらされている。

エジプトでは今年、コカ・コーラの販売が激減する一方、現地ブランド「V7」の出荷数量が中東地域など向けに3倍に増加。バングラデシュではコカ・コーラのボイコットに反対する広告が「大炎上」し、撤回に追い込まれた。中東で急成長してきたペプシコも、ガザの戦闘が始まった昨年10月以降は失速した。

企業の重役を務めるパキスタン人のスンバル・ハッサン氏は、4月に開いた自身の結婚披露宴でコカ・コーラとペプシを飲料メニューから排除した。両社に支払った金がやがてイスラエルの同盟国である米国の国庫に税金として納まるのは嫌だったからだ。

ハッサン氏は「ボイコットを通じてこうした資金を与えない一助になれる」と語る。披露宴の招待客には地元ブランド「コーラ・ネクスト」を提供した。

これは同氏だけの行動ではない。アナリストによると、コカ・コーラとペプシコがボイコットで失った売上高を具体的に算定するのは難しく、両社はなお中東の幾つかの国で事業を拡大している。しかしニールセンIQのデータに基づけば、中東地域で今年上半期に西側飲料ブランドの売上高は7%減少した。

パキスタンの最有力宅配アプリ「クレーブ・マート」創設者カッシム・シュロフ氏によると、ボイコット前に2.5%弱だったコーラ・ネクストやパコーラといった地元ブランドの市場シェアは足元で約12%に拡大している。

7月にロイターのインタビューに応じたペプシコのハモン・ラグアルタ最高経営責任者(CEO)は、「政治的な見方が原因で一部の消費者は購入に際して異なる選択をしている」と認めた上で、ボイコットが特にレバノン、パキスタン、エジプトなどの地域で影響を与えているとした。

一方で「われわれは時間をかけて乗り切る。現段階では全体の売上高と利益に響いてはいない」と強調した。

ペプシコのアフリカ・中東・南アジア部門の昨年売上高は60億ドル。コカ・コーラの欧州・中東・アフリカ売上高は80億ドルだった。

イスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃をかけてガザで戦闘が始まった昨年10月7日からの半年で見ると、ペプシコのアフリカ・中東・南アジア部門はほとんど売り上げが伸びていない。

コカ・コーラは6月28日までの半年で、エジプトの販売数量が2桁の減少率となった。前年同期は1桁のペースで増加していた。

ペプシコはロイターの取材に、傘下のいかなるブランドもガザを巡る戦闘の当事者である政府や軍事組織と関係していないとコメントし、コカ・コーラはイスラエルをはじめどの国の軍事活動にも資金を提供していないと述べた。

<ボイコットの歴史>

西側の飲料大手がイスラム圏で厳しい重圧を受けるのは初めてではない。コカ・コーラは1960年代、イスラエル工場の開設後にアラブ連盟のボイコットに直面した。1990年代初めまで続き、ペプシコの中東での事業には追い風となった。

グローバルデータによると、コカ・コーラのエジプトとパキスタンにおける市場シェアは今でもペプシコより小さい。

ただ1990年代初めにイスラエルに進出したペプシコも、2018年に同国のソーダストリームを買収するとボイコットの洗礼を受けた。

とはいえ近年までは、人口が全体的に若く、増え続けているイスラム圏は両社にとって急成長が得られた市場だった。コカ・コーラの場合、パキスタンだけでも08年以降に10億ドルを投資し、何年にもわたって売上高が2桁伸びている。ペプシコも似たような構図だ。

それが今は両社いずれも現地のブランドに押されている。

コカ・コーラやペプシより安いコーラ・ネクストは3月に宣伝文句を変更し、パキスタンのブランドである点を強調し始めた。足元では需要の急増に工場の生産が追い付かないほどだという。

21カ国で販売しているエジプトのブランド、V7は今年の輸出が前年比で3倍となった。

ジョージタウン大学カタール校のポール・マスグレーブ准教授は、ボイコットは消費者のロイヤルティーに長期的な打撃を与えると警告する。「いったん顧客が(購入の)習慣をやめてしまえば、長期的に取り戻すのはより難しくなる」と話す。

<なお成長市場と位置付け>

コカ・コーラはバングラデシュで、商店主が同社のパレスチナ事業について語る広告を打ち出したものの、「空気が読めない」と批判が殺到して6月に広告を中止し、謝罪を余儀なくされた。ロイターの取材に対して同社は広告が「的外れだった」と述べた。

現地の広告会社幹部によると、この宣伝でボイコットに拍車がかかったという。

パキスタンやエジプト、バングラデシュなどでは、ガザを巡るボイコット以前から、物価高や経済の混乱なども消費者をより安価な地元ブランドに引き寄せる要因になっていた。

それでもコカ・コーラ、ペプシコともに、欧米市場が減速する中でイスラム圏諸国を重要な成長市場とみなし続けている。

コカ・コーラはボイコットに見舞われながらも、4月にパキスタンでテクノロジー更新のための2200万ドルの追加投資を実行した。

ペプシコは、これまでレモンライム風味だった炭酸飲料ブランド「Teem」に、「生産地パキスタン」と目立つラベルを貼ったコーラ味を加えている。

さらに両社は、各種慈善活動や音楽家、クリケットチームなどに資金を提供し、地域社会に溶け込もうと必死だ。

ジョージタウン大学カタール校のマスグレーブ氏は、このような取り組みは、現在逆風を受けていても長期的な足場を維持する上で重要になるとの見方を示す。

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