アングル:トランプ氏返り咲き、ヒスパニックと労働者の支持上積みが原動力
ロイター / 2024年11月7日 8時56分
トランプ前米大統領は、共和党候補として出馬した今回の大統領選で有権者の態度を再び一変させた。写真はフロリダ州ドラルで行われた、ラテン系コミュニティのリーダーらとの座談会でのトランプ氏。10月22日撮影(2024年 ロイター/Marco Bello)
Jason Lange Bo Erickson Brad Heath
[ワシントン 6日 ロイター] - トランプ前米大統領は、共和党候補として出馬した今回の大統領選で有権者の態度を再び一変させた。ヒスパニック(中南米系)や若者、非大卒者の支持を上積みしてほぼ全ての地域で得票数を前回2020年の選挙よりも伸ばし、返り咲きを果たした。トランプ氏は選挙戦を通じて、米国の労働者を国際的な経済競争から守ると約束するとともにさまざまな減税を提案。労働者層や非白人の得票をおおむね増やしている。
エジソンリサーチの出口調査によると、特にヒスパニックの有権者に占めるトランプ氏の得票率が14ポイントも増加したのが目立つ。トランプ氏を選んだと答えたヒスパニックを自認する有権者の割合は約46%で、20年の前回大統領選では32%だった。
過去数十年にわたってヒスパニックはおおむね民主党を好んできたが、今回のトランプ氏の得票比率は出口調査ベースの共和党候補としては1970年代以降で最も高いことが、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ・インスティテュートの分析で分かった。これは直近で最高だった2004年のジョージ・W・ブッシュ氏の44%をしのぐ数字だ。
有権者の2割余りをヒスパニックが占める郡でトランプ氏と民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の得票率の差を見ると、トランプ氏とバイデン大統領の前回大統領選での差に比べて13ポイント改善している。
共和党のメディアストラテジストで、前回大統領選でトランプ陣営の一員としてヒスパニックに対する選挙活動を担当したジャンカルロ・ソポ氏は「若い世代のヒスパニックには、50年も民主党に投票してきた祖父母たちのような体に刻み込まれた記憶はない」と解説する。
今回の大統領選でヒスパニックのトランプ氏の得票率は男性が55%、女性が38%で、前回大統領選からそれぞれ19ポイント、8ポイント上昇した。
トランプ氏は反移民を自身の政治活動の中核に据えており、大統領に就任すれば不法移民の大量強制送還を行うと公約した。エジソンリサーチの出口調査からは、多くのヒスパニックがこの強硬姿勢を支持していることが読み取れる。この調査で、ほとんどの不法移民は本国に送還すべきと回答した有権者は全体の40%だったが、ヒスパニックに限っても約25%がそうした意見を述べた。
<大都市圏でも躍進>
米国勢調査局の推計に基づくと、ヒスパニック系市民は白人に比べて労働者と大卒資格のない人が多い。
またヒスパニックは平均的な米国人よりも若い傾向があるので、資産形成の時間が相対的に乏しく、近年のインフレや住宅ローン金利高騰といった経済的問題の影響にさらされやすい。
そして18歳から29歳までの有権者においてトランプ氏の得票率は43%と、20年から7ポイント高まった。
ヒスパニックに選挙へ行くよう呼びかける超党派団体、ウニドスUSラティーノ・ボート・イニシナチブのクラリサ・マルティネス・デカストロ氏は「共和党は経済で有権者とつながるという面では常に民主党に勝っている。今回の選挙は経済に関する国民投票であり、ヒスパニック有権者にとってそれが一貫して争点の上位だった」と述べた。
一方、前回大統領選でバイデン氏が制した激戦州の1つ、アリゾナで、今年米国の市民権を取得して初めて選挙に行ったメキシコ生まれのアルトゥーロ・ラグーナさん(28)は、トランプ氏に一票を投じた。共和党の保守主義と人工妊娠中絶規制に賛成するトランプ氏の姿勢が理由だ。
ラグーナさんは「最も大事な3つは家族の価値と生命尊重、宗教で、ハリス氏がそれらの価値観を代表するとは感じない」と語った。
ほぼ全ての開票作業が終わった地域で見ると、全米約2200の郡でトランプ氏の得票率は前回大統領選より5ポイント伸びている。
こうした幅広い躍進は、トランプ氏が非大卒者の間で支持を増やしたのが一因だった。非大卒者はさまざまな人種や民族にまたがり、5日の投票日時点で有権者の半数超を占めていた。
非大卒者でトランプ氏の得票率は約56%と、前回大統領選に比べて6ポイント上積み。大卒者ではハリス氏が55%の票を得たが、この比率は前回大統領選でのバイデン氏の割合から変わっていない。
また、トランプ氏は自身が勝利した16年の大統領選で従来の共和党候補よりもずっと多くの白人労働者層を取り込むことに成功し、今回もその優位をおおむね維持した。白人労働者層の得票率は66%と、前回大統領選から1ポイントしか下がっていないことがエジソンリサーチの出口調査で分かる。
さらにトランプ氏の非白人・非大卒有権者の得票率は8ポイント上昇。民主党が勝利する上で重要だった大都市圏の一部でもトランプ氏は大きく票を伸ばしている。
ニューヨーク市のすぐ東にあるロングアイランドのナッソー郡では、トランプ氏の得票率が約52%に達した。
6日午前の段階で開票作業がほとんど終わっていた25の大都市を含む郡では、ハリス氏の得票率が60%と、前回大統領選のバイデン氏を5ポイント前後下回り、大統領選の民主党候補としては少なくとも12年以降で最低を記録した。
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