英中銀、現行政策を据え置き 景気回復予想後ずれ
ロイター / 2020年8月6日 22時43分
[ロンドン 6日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)は6日、政策金利と資産買い入れ枠の据え置きを決定した。英経済が新型コロナウイルスの流行前の水準に戻るには、従来の予想より長い時間がかかると表明。マイナス金利の導入にはリスクが伴う可能性があるとの認識を示した。
政策金利は0.1%に、資産買い入れプログラムは7450億ポンド(9780億ドル)に据え置いた。決定は全会一致。
ロイターのエコノミスト調査でも政策金利と資産買い入れプログラムの据え置きが予想されていた。
ベイリー総裁は「極めて困難な状況が予想される。中銀は必要に応じて対応する用意を整えている」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)や日銀がすでに導入しているマイナス金利政策については、景気刺激策の選択肢だが、新型コロナウイルス危機への対応で活用する考えはないと言明。「われわれが有する手段の一つだが、今のところ使う計画はない」と述べた。
中銀はインフレ率が上昇しても利上げは急がない方針。「金融政策委員会は、余剰能力の削減で大きな進展があり、2%のインフレ目標を持続的に達成できる明確な証拠が得られるまで、金融政策を引き締めない」と表明した。
マイナス金利を採用するかどうかについて、検討を進めており、金利の下限はゼロを若干上回るとの従来の見解を変える可能性のある要因があるが、マイナス金利は銀行のバランスシートに悪影響を及ぼしかねないとの認識を示した。
「金融政策委員会は、マイナス金利政策が政策手段として適切かどうか、他の幅広い手段と併せて検討を続けていく」と表明。「金融政策委員会には、資産買い入れ、フォワードガイダンスなど他の手段も利用可能だ。金融政策委員会は適切な金融政策スタンスを引き続き検討し、マイナス金利も含め、責務を果たすための適切な手段を検討していく」とした。
また、マイナス金利政策が採用された国では、銀行が借り入れコスト低下の効用を借り手に伝達する能力が限定され、マイナス金利により銀行資本が目減りする懸念が出ていると指摘。「景気刺激の手段として、現時点ではマイナス金利政策の効用は小さい可能性がある」とした。
さらに、金利の下限はゼロ%を若干上回る水準にあるとしたこれまでの見方の変更につながる可能性のある要因が存在しているとの見方も示した。
INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は「マイナス金利を巡る討議は、良く言っても、生ぬるかった」と指摘。MUFGのアナリストは「マイナス金利政策導入の可能性が強く示されなかったことを踏まえると、英ポンド相場は近く一段と上昇する可能性がある」と述べた。
モルガン・スタンレーのエコノミスト、ジェイコブ・ネル氏とブルーナ・スカリカ氏は「失業率が上昇し、英国の欧州連合(EU)離脱と新型ウイルス感染拡大による困難が増す中、中銀は路線を変更し、将来的に一段の緩和を実施する」と予想。シティのアナリストは、今回の文言を踏まえると、2021年中盤までのマイナス金利導入の地合いが整ったとの見方を示した。
中銀は5月、来年下半期中に新型コロナ流行前の水準に回復する可能性があるとの見方を示していた。
今回は、今年の成長率予想が5月より改善する一方で、来年の見通しは悪化した。
今年の経済成長率予測はマイナス9.5%。過去99年で最悪となる。5月時点の予測は過去300年以上で最悪のマイナス14%だった。
来年の成長率の予測はプラス9%。5月時点のプラス15%から下方修正した。下振れリスクのほうが大きいとしている。
失業率については、今年末に直近の約2倍に相当する7.5%でピークに達すると予想。従来予想の10%弱から下方修正した。
インフレ率については、今月マイナスになり、向こう2年間で目標の2%付近に戻ると予想した。
パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、サミュエル・トゥーム氏は「インフレ率がいずれ2%の目標を超えるという金融政策委員会の予想は、年内は追加の利下げないし緩和策は必要ないと想定していることになる」と述べた。
ベイリー総裁は、新型ウイルス感染拡大を受け導入された雇用維持支援策を10月末で終了させる政府の決定に支持を表明。BBCに対し「極めて効果的な対策だった」とし、「今は前を向き、前進する必要がある」と述べた。
*内容を追加しました。
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