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アングル:米大統領選、候補者に不慮の事態が起きたらどうなるか

ロイター / 2020年10月7日 9時55分

 トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染は、11月3日の大統領選挙に向けた新たな波乱要因になっている。写真はホワイトハウス。ワシントンで2日撮影(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

Joseph Ax and Jan Wolfe

[2日 ロイター] - トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染は、11月3日の大統領選挙に向けた新たな波乱要因になっている。マーク・メドウズ大統領首席補佐官は、トランプ氏の症状は軽いという。だが、仮に大統領選の候補者や当選した次期大統領が死亡または再起不能となった場合はどうなるのか。

以下、米国の法律及び各政党の内規が、こうした想定にどのように備えているのか確認してみよう。

<投票が延期される可能性はあるか>

11月3日となっている投票日が延期されることも考えられる。ただし、その可能性は非常に低い。合衆国憲法は選挙日程を決める権限を連邦議会に与えている。法律では、大統領選挙は4年ごとに、11月最初の月曜日に続く最初の火曜日に実施されると定められている。

共和党優位の上院が選挙の延期を可決したとしても、民主党優位の下院が反対するのはほぼ確実だ。大統領選挙の延期は過去に例がない。

<選挙前に候補者が死亡した場合はどうなるのか>

民主党全国委員会、共和党全国委員会とも、規則では誰を新たな候補者とするかについて党員投票を行うよう求めることになっている。だが、候補者の交代が選挙に間に合わない可能性は高い。

フロリダ大学の米国選挙プロジェクトによれば220万人以上がすでに期日前投票を済ませているという。多くの州では、投票用紙を修正できる期限がすでに過ぎている。新型コロナの感染拡大が続く中、郵便投票の利用が広がることが予想されるが、すでに30近い州で投票用紙が有権者に送付されている。

連邦議会が選挙を延期しない限り、11月3日以前に候補者が死亡した場合でも、有権者は共和党のトランプ候補か民主党のジョー・バイデン候補のどちらかを選んで投票することになる。だが、勝利した候補者が死亡した場合には、新たな問題がいくつか浮上する。

<大統領選挙人が投票を行う前に候補者が死亡した場合はどうなるのか>

選挙人制度のもとでは、人口に比例して50州及びコロンビア特別区に割り当てられた「選挙人投票」の過半数を確保することによって、当選者が決定される。

選挙人は12月14日に集合し、次期大統領を決定する投票を行う。当選するには、合計538人の選挙人のうち、最低270人を確保しなければならない。

各州の選挙人の票は、通常、その州の一般投票での勝者に投じられる。各選挙人が自由に投票先を決めることを認めている州もあるが、半分以上の州は、選挙人が一般投票での勝者に投票することを義務付けている。

選挙人による投票先を拘束している州法の大半は、候補者が死亡した場合にどうすべきかを考慮していない。ミシガン州法では、投票用紙に記載された者のうち、自州で勝利した候補者に投票することを求めている。対照的にインディアナ州法では、候補者が死亡した場合はその候補者の党が決定した新たな候補に投票先を切り替えるよう規定している。

ジョージワシントン大学政策運営大学院のララ・ブラウン大学院長は、候補者が死亡した場合、投票先を州法で拘束される選挙人が新たな候補に投票先を変えることが認められるべきか否か、対立政党が訴訟を起こすとしても不思議はない、と話す。

「最高裁がこのような論争をどのように処理するかという点が、今まさに最も興味深い問題になりつつある」とブラウン氏は語る。

だが、ロヨラ・メリーマウント大学法科大学院のジャスティン・レビット教授は、特定の候補者が一般投票で勝利したことが明らかな場合には、政党が有権者の意志を無視する試みに出る可能性は低いとの見方だ。

<選挙人投票の後、連邦議会がその結果を承認する前に、勝利した候補者が死亡した場合はどうなるか>

選挙人による投票が済んでも、さらに1月6日に召集される連邦議会が開票結果を承認しなければならない。選挙人投票の過半数を獲得した候補者がその後死亡した場合、連邦議会が事態をどのように収拾するかは必ずしも明確ではない。

合衆国憲法修正第20条では、次期大統領が就任日前に死亡した場合には、次期副大統領が大統領になると規定している。だが、ある候補者が正式に「次期大統領」になるのが、選挙人による投票で勝利した時点なのか、連邦議会が開票結果を承認した時点なのかは法律的に結論が出ていない。

連邦議会が死亡した候補者に対する投票を無効とし、したがって過半数を獲得した候補が誰もいないという結果になれば、次期大統領の選任は下院に委ねられ、選挙人投票の上位3人の中から選択することになる。

こうした不測の事態による選出においては各州の代表がそれぞれ1票を行使する。下院では民主党が過半数を占めているが、50州のうち26州を共和党が握っているため、代表数では、現時点において共和党が優位に立っている。

ただし、下院435議席はすべて11月の選挙で改選されるため、次期連邦議会の勢力分布がどうなるかはまだ分からない。

これまでのところ、勝利した候補者が選挙後・就任前に死亡した例は1件もない。最もそれに近い例は、1872年11月29日に死亡したホレス・グリーリー候補のケースだ。ユリシーズ・グラント候補に敗れたが、グリーリー候補は選挙人66票を獲得。しかし、死亡によって、その票は主として同じ陣営の副大統領候補及び他の弱小候補に分割される結果となった。

<連邦議会が選挙人投票の結果を承認した後に、次期大統領が死亡または再起不能となった場合はどうなるのか>

合衆国憲法によれば、次期大統領は、連邦議会が選挙人投票の結果を承認してから2週間後、1月20日の就任式で就任宣誓を行う。次期大統領が死亡した場合には、次期副大統領が1月20日に就任宣誓を行う。

(翻訳:エァクレーレン)

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