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情報BOX:トランプ米大統領は家族や自分を恩赦できるか

ロイター / 2020年12月7日 18時18分

 トランプ米大統領が政権末期の数週間に、側近のみならず自分の家族にまでも大統領恩赦を出せるかどうか、さまざまな思惑が広がっている。写真はホワイトハウスで11月29日撮影(2020年 ロイター/Yuri Gripas)

[3日 ロイター] - トランプ米大統領が政権末期の数週間に、側近のみならず自分の家族にまでも大統領恩赦を出せるかどうか、さまざまな思惑が広がっている。

同大統領は11月25日、フリン元大統領補佐官への恩赦に踏み切った。また、米ニューヨーク・タイムズ紙は今月1日、事情に詳しい2人の関係者の話として、トランプ氏が顧問弁護士であるジュリアーニ元ニューヨーク市長への恩赦について、同氏自身と協議したと報じた。

さらに、トランプ氏は自分の子供3人を「予防的」に恩赦の対象にし得るかどうかの可能性についてもアドバイザーに尋ねているという。

トランプ氏は2018年に、自分には自らに恩赦を与える「絶対的な権利」があると主張した。しかし、これには多くの法律学者が異議を唱えている。

トランプ氏の恩赦の権限は広範囲だが絶対的ではない。その概略は以下の通り。

<予防的恩赦は可能か>

恩赦は通常、起訴された人に対して出されるが、訴訟手続きに至っていない案件も対象にできる。しかし、まだ発生していない事案には適用できない。

連邦最高裁は1866年、恩赦の権限について「法に基づくあらゆる犯罪に適用され、犯罪の発生後であれば法的手続きに至る前であれ、係争中であれ、判決、有罪確定後であれ、いつでも行使してよい」との判断を示した。

大半の恩赦は起訴されて服役している人に出される。だが1977年に当時のカーター大統領は、ベトナム戦争への徴兵を逃れた何十万人もの「徴兵忌避者」に恩赦を与えた。

<大統領の恩赦権限に制限はあるか>

合衆国憲法で定められた恩赦の権限は、大統領に最も幅広く委ねられた権限の1つだ。米国の建国の父たちは恩赦について、慈悲を示すとともに、公共の利益に仕える手段と考えた。

連邦議会と連邦裁判所には恩赦を見直す権限はなく、大統領は恩赦を出す理由を公表する必要はない。

だが恩赦の権限は絶対的なものではない。重要なのは、恩赦は連邦法に違反した犯罪にしか適用されないことだ。

<トランプ氏は自分の子供や側近に恩赦を出せるか>

トランプ氏が家族を含む身内や側近に恩赦を与えることは合法だ。

2001年当時のクリントン大統領は、アーカンソー州でコカイン所持で有罪になっていた弟ロジャー・クリントン氏に恩赦を与えた。民主党への献金者マーク・リッチ氏を含む約450人も恩赦を出している。リッチ氏は課税逃れの告発を受けて国外逃亡した人物だ。

<恩赦はどの程度広くできるのか>

それは明らかではない。

ニクソン元大統領は後任のフォード大統領から恩赦を受けたが、内容は非常に広範にわたり、ニクソン氏の大統領在任中の犯罪行為だけでなく、関与したかもしれない行為のすべてを無罪とした。

だが連邦最高裁はこれまで、こうした広範な恩赦が合法か違法かについて判断を示していない。一部の学者は、建国の父たちには恩赦を特定のケースに限る意図があったとして、恩赦には暗黙の制限があると主張している。

<トランプ氏が子供やジュリアーニ氏を恩赦を与える理由は>

トランプ氏の子供らは現状でいかなる犯罪行為でも起訴されておらず、彼らへの恩赦がどういう理由になるのかは不明だ。

ニューヨーク州法の執行責任者であるマンハッタン地区検事長サイラス・バンス氏(民主党)は、トランプ氏と一族の企業トランプ・オーガニゼーションへの刑事捜査を進めている。

バンス氏は裁判所提出文書で、銀行や税金や保険の詐欺、事業記録の虚偽記載を捜査対象とする可能性を明らかにしている。捜査がどの段階まで進んでいるかは不明だ。今のところは誰も起訴されていない。

ニューヨーク州のジェームズ司法長官(民主党)は、税金詐欺の疑いでトランプ氏とトランプ・オーガニゼーションを捜査中だ。トランプ氏の顧問弁護士だった元腹心のマイケル・コーエン氏が議会証言をした後に、捜査が始まった。コーエン氏によると、トランプ氏はローンや保険で有利になるように資産価値を過大にし、不動産の課税を減らすためには資産価値を過小にしてみせるなどした。

トランプ氏の息子でトランプ・オーガニゼーションの副社長であるエリック・トランプ氏は今年10月、捜査対象となっている取り引きに密接に関与した疑いで宣誓証言を要請された。

トランプ氏はバンス氏とジェームズ氏の捜査が政治的な動機による嫌がらせだと主張している。

大統領の恩赦は連邦法違反の犯罪にのみ認められるため、そうした州法に基づく事案には適用されない。

ジュリアーニ氏に関してどのような犯罪の可能性があるかは明らかではない。マンハッタンの連邦検察は同氏のウクライナでの事業取引について調べている。同氏は、不正行為はなかったと主張しており、今月1日にはツイッターで、恩赦についてトランプ氏と協議したとの報道を否定している。

<トランプ氏は自身に恩赦を出せるか>

この質問に明確な回答はない。大統領が自分の恩赦を試みた前例はなく、裁判の判例もない。

ミシガン州立大学のブライアン・カルト法律学教授は「大統領が自分を恩赦できるかと聞かれたとき、私の答えはいつも『試みることはできる』だ。合衆国憲法はこの件についての明確な回答を提供していない」と述べた。

多くの法律専門家は自己恩赦について、誰も自分自身の案件を判断すべきでないという基本原則に反するため違憲だと主張している。

トランプ大統領は退任後に起訴された場合に備えて、予防的な自分への恩赦措置を試みる可能性がある。

カルト氏によると、恩赦が有効か無効かを裁判所が判断するには、連邦検察当局がトランプ氏を起訴した上で、トランプ氏側が恩赦されていることを弁護の理由として提起する必要がある。

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