アングル:肥満症治療薬、有望市場の中国で競争激化の予兆
ロイター / 2024年6月8日 8時8分
FILE PHOTO: Boxes of Ozempic and Wegovy made by Novo Nordisk are seen at a pharmacy in London, Britain March 8, 2024. REUTERS/Hollie Adams/File Photo
Andrew Silver
[上海 6日 ロイター] - デンマーク製薬大手ノボノルディスクには、有望視している中国市場で今後激しい競争にさらされる局面が待ち受けている。同社が手がける糖尿病治療薬「オゼンピック」と肥満症治療薬「ウゴービ」を巡り、中国で少なくとも15種類のジェネリック(後発薬)の臨床試験が行われているというデータがあるからだ。
中国は世界で最も太りすぎや肥満症の人が多いと推定されており、ノボノルディスクが抱く需要拡大の期待は非常に強い。
肥満症にも処方されるオゼンピックは2021年に中国で承認された。昨年の広域中華圏での売上高は倍増して48億デンマーククローネ(6億9800万ドル)に上った。ウゴービも今年内の承認が見込まれる。
ただウゴービとオゼンピックの有効成分であるセマグルチドの中国における特許は2026年に失効する。
またノボノルディスクは中国でこのセマグルチドの特許権を巡る係争が続いており、裁判所が同社に不利な判定を下せば失効時期がさらに早まりかねない。
こうした状況を受け、中国の製薬業界は活気づいている。ロイターが臨床試験のデータベースを調べたところ、中国企業が開発中のセマグルチドを使った少なくとも11種類の薬が試験の最終段階に入っていることが分かった。
情報サービス会社クラリベートの医療調査・データアナリスト、カラン・バーマ氏は「オゼンピックは中国本土でかつてないほど成功したことが知れ渡っている上に、特許失効が迫っているので、中国の製薬会社はできるだけ早くこの分野を収益面で生かすことを目指している」と述べた。
中国勢で先頭を走るのは杭州九源基因工程で、既にオゼンピックと「同等の臨床効果と安全性」を持つ治療薬を開発し、4月に販売承認を申請した。効果を示すデータは公表されておらず、ロイターが情報の提供を要請しても回答がなかった。
同社は今年1月、来年後半には販売承認を得られるとの見通しを示しつつ、ノボノルディスクの特許が失効する26年より前には、裁判所が特許無効を最終認定しない限り、商用化できないと説明していた。
中国の特許当局は22年、ノボノルディスクが所有するセマグルチドの特許は無効と判断し、同社がこれに異議を申し立てているのが現在の状況。上級裁判所は、いつ最終認定を下せそうかまだ言えないとしている。
ノボノルディスクの広報担当者は「健全な競争は歓迎する」と述べるとともに、この問題に関しては裁判所の決定を待っているところだとだけコメントした。
杭州九源基因工程のほかに、オゼンピックの後発薬開発で試験が最終段階に進んでいるのは、聯邦製薬や石薬集団、華東医薬、香港の四環医薬の子会社など。
石薬集団は5月、セマグルチド使用の糖尿病治療薬が26年中に承認されるだろうと明かした。
ジェフリーズは昨年10月のリポートで、聯邦製薬のセマグルチド配合薬は来年に糖尿病治療向けに、27年には肥満症治療向けに投入されると予想している。
<トップ争い>
中国の公衆衛生研究グループの調査では、国内の太りすぎと肥満症の人口は2030年にはそれぞれ5億4000万人、1億5000万人と2000年比で2.8倍と7.5倍に増加すると見込まれる。
そうした中で、中国勢の後発薬がノボノルディスクと同じ安全性や効果があると証明されれば、競争が激化して値下げが起きる、とアナリストは話す。
ゴールドマン・サックスのアナリストチームは昨年8月のリポートで、中国のセマグルチド配合薬市場では後発薬が主導する形で価格が約25%下落してもおかしくないとの見方を示した。
ノボノルディスクも競争激化に向かうことは認めている。経営幹部の1人は今年3月、中国市場について26年と27年には臨床試験の進展によって「若干プレーヤーが多くなるかもしれない」と語った。ただこの幹部は、一部の企業が商用化という面で意味のある量を提供できない可能性にも言及した。
上海のある肥満症治療薬メーカーの幹部は、競争力のある薬になるかどうかは効果や治療の持続可能性、自社の販売能力など幾つかの目立った特徴で決まると解説した上で、現時点では競争が激しくなる市場で誰がトップの座を奪うか明言するのは難しいと付け加えた。
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