アングル:根強い「選挙は買い」の思惑、くすぶる選挙後安リスク
ロイター / 2024年10月7日 17時37分
Noriyuki Hirata
[東京 7日 ロイター] - 石破茂首相が9日に衆院を解散する意向を示す中、株式市場では「選挙は買い」の経験則が相場の支援材料になっている。週末に政治資金問題で党内処分の重かった議員を衆院選で非公認とする方針を示したことも追い風になると歓迎する声が挙がる。一方、選挙結果次第では株安に揺り戻すリスクも警戒されており、市場関係者は半身の構えを崩していない。
<経験則からは日経平均4万円超も>
7日の東京市場で日経平均は一時900円を超えて上昇した。米雇用統計の上振れを受けて米景気懸念が後退したことに加え、石破首相が裏金議員の一部を衆院選で非公認とする方針を示したことも株高の一翼を担ったとみられている。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは「非公認に踏み切ったことは評価を高める」と話し、すでに「選挙は買い」を見越した資金が流入しているとの見方を示す。
2000年以降の解散・総選挙は8回あり、解散時から投開票日までの日経平均は全勝し平均で5.2%高、TOPIXは7勝し4.1%高となった。解散が見込まれる9日の株価は不明だが、仮に7日終値の株価に当てはめて単純計算すれば日経平均は約4万1300円、TOPIXは約2850ポイントとなる。
もっとも、過去の上昇幅には選挙ごとに違いもみられる。05年、09年、12年は力強い上昇となったのに比べ、それ以外の上昇は小幅にとどまる。背景には「変化」への期待の有無があったとみられる。株価が大きく上昇した05年には小泉改革、09年は政権交代、12年はアベノミクスが争点になった。これら以外の選挙時には、政策の現状維持による「安定」の側面が評価されたとみられている。
石破首相は、岸田政権の経済政策を引き継ぐ考えを表明している。仮に今回も選挙期間中に株高となるようなら、政治の「安定」が買われたとみることができそうだ。前政権との変化が大きくないことから、過去に「変革」が期待された選挙の際に比べると「値幅は限られるのではないか」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)とみられている。
<議席減、程度次第ではポジティブの見方も>
足元では議席数の減少を予想する週刊誌報道が市場関係者の間で話題になっており、選挙の先行きは不透明との見方も根強い。そのため「今回は『選挙は買い』が当てはまるか、分かりにくい。議席が減って政局が不安定になる方が株価にはマイナス」(東洋証券の大塚竜太ストラテジスト)と慎重な見方も聞かれる。
投開票日後1週間の株価動向に目を移すと、03年と09年に、日経平均とTOPIXがともに下落した。03年はマニフェスト(政権公約)が注目され、当時の民主党が自由党との合併もあって躍進した。09年は直後にいったん株高となったが短時間で失速。野党第1党が選挙で過半数を獲得して政権交代するのは戦後初めてでもあり、様子見が強まった。
今回の選挙で仮に与党が議席を大きく減らし、政治の不安定化が意識されるような状況となれば「国内勢より海外勢が嫌う」(りそなAMの黒瀬氏)と警戒されている。
一方、自民党が「大勝」する場合もリスクとの見方もある。金融政策などを巡って市場は、石破首相の「変節」を経験しただけに、勝利の勢いに乗って首相が「再変節」し、増税などの議論が蒸し返されかねないとの警戒感は、市場で多く聞かれる。
「政治が不安定にならない程度に議席を減らすシナリオが、マーケット的な観点からはポジティブかもしれない」と、三井住友DSAMの市川氏はみている。いったんは株安が見込まれるが、来年の参院選に向けて国民の支持を得るため「増税の色は薄くなり、経済対策に力を入れるという流れになるだろう」と市川氏は話している。
◎2000年以降の衆院選時の株価の騰落
日経平均 TOPIX
解散日 投開票日 選挙期間 選挙後 選挙期間 選挙後
2000/6/2 2000/6 1.61 3.84 1.01 2.95
/25
2003/10/1 2003/1 0.93 -7.92 -1.17 -7.01
0 1/9
2005/8/8 2005/9 7.87 3.60 8.76 4.58
/11
2009/7/21 2009/8 12.12 -2.02 10.36 -2.55
/30
2012/11/1 2012/1 10.28 3.52 8.61 4.62
6 2/16
2014/11/2 2014/1 0.41 1.52 0.14 0.96
1 2/14
2017/9/28 2017/1 5.87 2.58 3.98 2.32
0/22
2021/10/1 2021/1 2.67 2.13 1.39 1.70
4 0/31
過去8回の平均 5.22 4.14
「選挙期間」は解散前営業日から投開票日の直前営業日までの騰落。「選挙後」は投開票日の翌営業日からの1週間の騰落。いずれも変化率(%)。
この記事に関連するニュース
-
アングル:外資系4証券、25年の日本株に強気見通し トランプ影響は限定的
ロイター / 2024年12月18日 15時36分
-
午前の日経平均は小幅反発、買い一巡後は伸び悩み 中銀会合前に
ロイター / 2024年12月17日 12時30分
-
米大統領選から約1ヵ月、「上がった金融市場」と「下がった金融市場」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月4日 13時30分
-
【政界】緊張感が高まる国際情勢の中 自公過半数割れで窮地の石破政権
財界オンライン / 2024年12月4日 11時30分
-
2025年の日本経済を左右する「103万円の壁」対策 恒久減税の実現こそ日本経済再生の第一歩だ
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 9時30分
ランキング
-
1車両生産で相互乗り入れ検討 ホンダ、日産にHV供給も
共同通信 / 2024年12月21日 16時3分
-
2オープンAIの新たな生成AI「人間並み」近づく…安全性を確認するため当面は研究者に限定提供
読売新聞 / 2024年12月21日 18時19分
-
3《追悼・渡辺恒雄さん》週刊ポスト記者を呼び出し「呼び捨てにするな、“ナベツネさん”と呼べ」事件
NEWSポストセブン / 2024年12月21日 16時15分
-
4「本当に就職に強い大学ランキング」トップ150校 卒業生が1000人以上で実就職率が高い大学
東洋経済オンライン / 2024年12月21日 7時30分
-
5ゴーン被告「日産にはパニック状態が広がっている」「ホンダは押し込まれた」
読売新聞 / 2024年12月21日 18時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください