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アングル:マスク氏が握った「巨大権力」、ワシントンで広がる動揺

ロイター / 2025年2月7日 13時23分

 2月5日、 実業家のイーロン・マスク氏(写真)は、トランプ米大統領の肝いりで「政府効率化省」トップに起用され、政権発足からわずか2週間でたちまちワシントンに新たな巨大権力を築き上げた。1月、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Mike Segar)

Tim Reid Marisa Taylor

[ワシントン 5日 ロイター] - 実業家のイーロン・マスク氏は、トランプ米大統領の肝いりで「政府効率化省」トップに起用され、政権発足からわずか2週間でたちまちワシントンに新たな巨大権力を築き上げた。自身が経営する企業の従業員、元従業員で結成したチームを駆使し、220万人に上る連邦政府職員に対する空前の支配力や、政府機構を劇的に改変する権限を手に入れた。

こうしたマスク氏の行動は連邦職員の間に動揺を巻き起こし、政府内外から抗議の声が上がり、時にはトランプ氏の掲げる政策に影を落としかねない事態も起きている。

今週注目を集めたニュースとしては、カナダやメキシコとの関税を巡る駆け引きだけでなく、マスク氏が米国の対外援助を管轄する国際開発局(USAID)を「閉鎖する」と表明したことも挙げられる。

マスク氏の取り組みは、トランプ氏が官僚機構の縮小と自身への忠誠心喚起のために進めている政府組織の大規模なリストラの一環だ。

ミシガン大学フォード公共政策大学院のドン・モイニハン教授は、トップレベルの「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」を欠き、議会上院での承認手続きを経ていない人物に過大な権力が集中していると指摘し、「マスク氏は政府の基本的な組織系統を集中的に掌握するかつてない力を持っている」と述べた。

それでもマスク氏は、あくまでトランプ氏の気に入るように動いている。トランプ氏は記者団に3日、マスク氏はいかなる措置もホワイトハウスの承認を得る必要があると明言した上で「イーロン(マスク氏)はわれわれの許可なく何もできないし、やらない。われわれが適切と見なす分野なら承諾を与えるし、そうでなければ承諾しない」と語った。

ホワイトハウス関係者の1人は、マスク氏とともにこれらの任務を主導する人びとについて、部外者のアドバイザーや団体ではなく重要政府機関の一員として適切なセキュリティー・クリアランスを通過し、連邦の法令を完全に順守していると強調した。

しかし連邦政府の資産や契約の管理を担う一般調達局(GSA)のある職員は、解雇の恐れという面では誰がより脅威の存在かと考えるかと聞かれると「マスク氏だ。トランプ氏を話題にする人は誰もいない」と明かした。

マスク氏がもう1人の実業家ビベック・ラマスワミ氏とともにトップに就任した政府効率化省は正式な省庁とは言えず、マスク氏は政府から給与をもらっていない。こうした不透明な実態ゆえに、公務員労組や市民団体などから早速訴訟を起こされている。

政府効率化省の人員構成もはっきりしない。トランプ政権は同省の職員名簿を公表しておらず、職員の給与や各機関の人数も不明だ。

その一方で、マスク氏と腹心らはGSAと連邦人事管理局(OPM)のコンピューターシステムを押さえてしまった。その後OPMから政府職員宛てに早期退職勧告の電子メールが送付された。

OPMには少なくとも4人のマスク氏の腹心が乗り込み、プロバー職員らがシステムにアクセスするのを禁止している、と複数の関係者がロイターに語った。1月30日にはマスク氏がGSAを訪れ、続いて腹心チームがやってきた。

マスク氏のチームは翌1月31日、各省庁のために毎年6兆ドル余りを送金し、社会保障給付や税還付などの対象者の個人情報が含まれている財務省の支払いシステムにもアクセスしている。

バイデン前政権時代に行政予算管理局(OMB)幹部だったマイケル・リンドン氏は、マスク氏腹心らによる支払いシステムへのアクセスは、彼らに行き過ぎた権限を与えかねないと懸念する。「連邦政府の支払いが選別できるようになってしまう」からだ。

<行き過ぎた行動>

マスク氏が率いる宇宙企業スペースXの元エンジニア、トーマス・モリーン氏は「マスク氏の企業で働いていたわれわれには今、連邦政府内部に何が起きているかが分かる。マスク氏の忠実な部下たちには、彼の全ての思いつきや望みを可及的速やかに実行することが経験と勘で染みついている」と述べた。

ガバナンスの専門家の見立てでは、マスク氏は既に、トランプ氏が1月20日に署名した政府効率化省に関する大統領令で定めた任務の範囲を超えているようだ。

この大統領令は、政府の効率性と生産性を最大化するために連邦のテクノロジーとソフトウエアを近代化することを同省に託した。また職員採用や募集凍結に関する他の命令には、政府効率化省が他の省庁と協力して提言を行うと記されている。

ところがマスク氏や腹心らは、単なる提言以上の行動をしているように見える。

政府効率化省の職員はこれまでに、USAID本部の重要情報へのアクセスを巡って安全保障当局と衝突し、USAIDの縮小作業に深く関与している。

こうした中で不安に駆られた政府職員はレディットやシグナル、フェイスブックなどのソーシャルメディアを通じて自分たちの組織内で展開している事態を報告し、対応策を話し合っている様子がうかがえる。政府効率化省の人事担当者は情報をリークしている人を特定するため電子メールに目印などを付けているから注意しろ、と呼びかける投稿もある。

野党民主党議員などのマスク氏批判派は、同氏が政府に敵対的買収を仕掛けたと非難。公務員労組はマスク氏による重要なコンピューターシステムへのアクセス禁止を求める訴訟を起こした。

民主党のジェイミー・ラスキン下院議員は「われわれにはイーロン・マスクという第4の統治権力を持った覚えなどない」とUSAID本部の外で記者団に語った。

また、マスク氏による政府職員への早期退職勧告に関して、ミネソタ大法科大学院のニック・ベドナー准教授は、マスク氏と腹心が政府職員の人事や連邦政府の支払いで強大な権力を持っていることに深い懸念を表明。傘下企業が政府とさまざまな契約をしているマスク氏が、利益相反を疑う声が多い立場にいるのも異常なことだと付け加えた。

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