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展望2021:需給相場続く日本株、「ユニクロ主導」ならバブル色も

ロイター / 2021年1月8日 15時22分

 1月8日、2021年の日本株市場では、需給相場が継続するとみられている。都内の株価ボード前で2020年10月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

水野文也

[東京 8日 ロイター] - 2021年の日本株市場では、需給相場が継続するとみられている。日銀のETF(上場投資信託)購入や企業の自社株買いで浮動株が減少。少ない買いでも株価が上がりやすくなっている。業績相場への移行が期待されているものの、ファーストリテイリングなどの「品薄株」が主導するような株高であればバブル色が強まりそうだ。

<「ないものねだり」のバブル相場>

相場用語で「ないものねだり」とは、売り板が薄く希望する株価で買えないために上値を買う結果、大幅上昇となる相場を指す。これが起きる要因として大きいのが浮動株の減少だ。市場に流通する株が減少すれば、売り板が薄くなるため、株価変動が大きくなりやすい。

1980年代のバブル期は政策投資という名のもと、事業会社と金融機関を中心に企業間で株式持ち合いが恒常化、流通株式を減少させた経緯がある。反対に、バブル崩壊後には会計基準の変更などの理由から持ち合い解消が進行。相場観とは関係なく売りがかさんだため、厳しい調整をもたらした。

「証券アナリストジャーナル(90年5月号)」に掲載された野村総合研究所・投資数理研究室長・明田雅昭氏(当時)の「インデックス売買の適正規模」によると、最高値を付けた89年後半の半年間で1株あたりの価格変化率と指数における構成率を掛け合わせた影響係数は、松坂屋(現在はJ.フロント リテイリング)の11.02%、片倉工業の10.16%、松竹の5.10%など3銘柄が大きかった。小型株ではない松坂屋は不動産会社の秀和の買い占めで浮動株が激減した経緯がある。

論文では、89年12月月間で日経平均の上昇率4.42%のうち1.30%が3銘柄の寄与分、同じく品薄株だった日本毛織、東宝を加えた5銘柄の寄与率は1.97%と、同期間のTOPIXの上昇率1.95%より大きくなり、いびつな動きになったと分析している。

<現在の「品薄株」>

現在の「品薄株」の代表格はファーストリテイリングだ。同社は大型株ながら、筆頭株主である柳井正会長の持ち株をはじめ、売りに出される可能性が極めて低い特定株の比率が約80%あるとみられている。さらにETFの組み入れで浮動株が減少しており、バブル期の品薄株のような「ないものねだり」相場となる可能性がある。

ファーストリテイリングの日経平均に対する影響係数は足元で10%前後。ファナック、ソフトバンクグループなどが5%以下で続く。

日経平均が2万7000円を回復した昨年12月29日も上昇幅714円12銭のうち、ファーストリテ株だけで140円80銭(当日の日経平均の除数27.769で計算)押し上げた。同社の上昇だけが目立つ「ユニクロ相場」になるか否かが、バブル度を計る基準となりそうだ。

<日銀の3月「点検」に注目>

日本株市場全体の浮動株減少の要因としてみられているのが、日銀のETF購入だ。日銀の昨年末時点の通常ETF購入額は累計34兆0495億円(約定ベース)。ニッセイ基礎研究所が試算した11月末時点での時価は45兆円強で、同時期の東証1部時価総額661兆円に対し7%近くを日銀が実質的に保有する計算となる。

日銀のETF購入は、日経平均型からTOPIX型に重点を移し、マーケットに与える歪みを小さくしたが、年間最大12兆円の購入規模から来る存在感は極めて大きい。市場参加者は、日銀のETF購入の有無に、日々目を凝らしている。

こうした中、日銀のETF購入額が1月4日に501億円となり、16年以来の低水準となったことが市場の関心を集めた。日々のオペなどが政策の先行きを示唆することはないというのが日銀のスタンスだが、3月の「点検」に一段と注目が集まりそうだ。

年金資金の長期投資や、企業の自社株買いも、浮動株減少の要因だ。コロナ禍で減っていた自社株買いが回復して来れば、需給は一層タイトになる。

2021年の日本株相場について「経済回復を織り込む業績相場と言われるようになっても、実態は需給相場と何ら変わらない」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏)とみる関係者は少なくない。

「バブル期はPER(株価収益率)30倍超でも抵抗なく買っていたが、同じことが今後は起き得る」と、大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は指摘する。「2021年相場は日経平均採用品薄株の上昇が目立ったバブル末期と同様の状況になる可能性がある」と、岡三オンライン証券・チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏は話している。

(水野文也 編集:伊賀大記、石田仁志)

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