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アングル:韓国EV電池産業で深刻な技術者不足、電動化に遅れも

ロイター / 2021年10月8日 15時2分

10月5日、世界の電気自動車(EV)バッテリー市場で3割強のシェアを持つ韓国の大手メーカーが今、深刻な技術者不足に直面している。写真は充電中のテスラ車。独ベルリンで2019年11月撮影(2021年 ロイター/Fabrizio Bensch)

[ソウル 5日 ロイター] - 世界の電気自動車(EV)バッテリー市場で3割強のシェアを持つ韓国の大手メーカーが今、深刻な技術者不足に直面している。世界的な競争が進むゼロエミッション車への移行の足かせとなりかねない事態だ。

韓国のLGエネルギーソリューション(LGES)とSKオン、サムスンSDIは、世界の6大バッテリーメーカーに名を連ね、テスラやフォルクスワーゲン(VW)、フォード・モーターなどに製品を供給している。

この3社がそろってロイターに、技術的な要求が膨らみ続ける中で研究開発や設計といった分野の専門家をそろえるのに苦戦していると打ち明けた。

大手自動車会社からの要求ハードルは上がる一方だが、全固体バッテリーなど最先端の技術を維持する上で必要な訓練を受けた技術者を十分に探し出せないという。

LGESのある幹部は「業界のこれほどの成長ぶりを間近で目にしてきたとはいえ、われわれは人材不足に見舞われているようだ。自前の人材を育てつつ、外部から集めることが重要だ」と語った。ライバル2社も同様の見方で、SKオンはこのセクターの拡大を「指数関数的(爆発的)」と描写した。

実際、世界全体のバッテリー産業は過去5年で2倍の規模になり、韓国だけで研究開発・設計などの分野の大卒者の不足が約3000人に上っていることが、韓国バッテリー業協会の直近データで分かる。LGES、SKオン、サムスンSDIの従業員は合計で現在およそ1万9000人だ。

韓国の人手不足は、世界のバッテリー市場で専門家がどんどん足りなくなっている状態の裏返しでもある。IHSマークイットの予想では、同市場規模は2025年までに3倍に拡大し、ほぼ900億ドルに達する。

一部の業界専門家は、こうした世界的な労働力の供給不足が解消されないと、バッテリー技術の進歩にブレーキがかかる恐れが出てくると警鐘を鳴らす。最大の温室効果ガス排出源の1つである自動車セクターのクリーンエネルギー化は、まさにその技術進歩にかかっている。

サムスン証券のアナリスト、チョ・ヒュンリュル氏は「バッテリー産業において人材の需要は供給をはるかに上回っている。メーカー側には、この技術に関する仕事ができるごく少数の母集団から働き手を確保できるか、そして急成長を続ける市場で常に先頭の位置を維持できるだろうかという不安がある」と指摘した。

<外国企業の引き抜き>

LGESは来春、名門の高麗大学に「バッテリー・スマート工場学科」を開設し、卒業生に雇用を保証することを計画。これは、業界がいかに人材獲得を迫られているかを表す現象の1つと言える。

もっと最近では、各社の幹部が相次いで渡米し、現地の大学における採用イベントを陣頭指揮している。LGESの最高経営責任者(CEO)と幹部陣は先月、ロサンゼルスを訪問。SKオンの親会社SKイノベーションのCEOらは2日、サンフランシスコで採用イベントを主催した。

これら韓国勢は、世界最大手の中国CATL(寧徳時代新能源科技)やパナソニックといった既存の有力アジア企業だけでなく、スウェーデンのノースボルトなど欧米の新興メーカーとの競争を強いられている。

2人の業界関係者によると、韓国勢が人材不足に陥っている背景には、一部従業員がより高い報酬につられて外国のライバルに移籍している面もあるという。

VWなどと取引があるノースボルトは以前、従業員にはLGESやパナソニックから引き抜いた人が含まれると述べた。ただ従業員の具体的な報酬額は明らかにしてない。

韓国で博士号を取得した新卒のバッテリー専門家なら年収は最大1億ウォン(8万5000ドル)を得ることが可能で、博士号がなくても2、3年の実務を経れば平均年収はおよそ8000万ウォンになる、と2人の関係者は話す。税務当局のデータに基づく韓国の勤労者の平均年間給与は19年時点で3740万ウォンだった。

<問題長期化か>

韓国のバッテリー産業は、つい最近まで「内輪もめ」も経験。LGESとSKイノベーションの技術、企業秘密、従業員引き抜きを巡る紛争が2年にわたって続き、今年4月にようやく和解が成立した。

EV普及を最優先課題の1つに掲げるバイデン米大統領は、この和解を「米国労働者と米自動車産業にとっての勝利」と評価し、LGESとSKオンの世界市場における重要性が浮き彫りになった。

ただ、各バッテリーメーカーは、人材不足問題を抱えながらも世界的な需要増大に後押しされる形で生産能力増強の取り組みを急いでいる。LGESは年末までに生産能力を155ギガワット時(GWh)に乗せ、25年中にはおよそ720万台のEVに供給可能な430GWhに引き上げる方針。

SKイノベーションも25年までに年間生産能力を今の5倍以上の220GWhとすることを目指し、先週にはフォードと共同で米国に3カ所のバッテリー工場を建設するため10兆2000億ウォンを投じると発表した。

そうした中でIHSマークイットの首席アナリスト、リチャード・キム氏は、技術者が足りない局面はあと何年も続く公算が大きいと予想。「バッテリー産業の労働力不足は既に世界的な問題になっている。多くの企業が増産に乗り出すとともに、働き手の需給がずっと不均衡になるというのが現実だ」と述べた。

(Heekyong Yang記者)

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