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アングル:新型コロナ、国ごと異なる「エンデミック」化の道筋

ロイター / 2021年11月8日 14時3分

 11月3日、新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」が来年以降のいつ、どこで「エンデミック(一定地域で普段から継続的に発生する状態)」に移行するのか――。写真はカラカスでワクチン接種を受ける生徒。10月撮影(2021年 ロイター/Leonardo Fernandez Viloria)

[シカゴ 3日 ロイター] - 新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」が来年以降のいつ、どこで「エンデミック(一定地域で普段から継続的に発生する状態)」に移行するのか――。感染力の強いデルタ株の拡大が多くの地域で一服するとともに、世界中の科学者がこうした予測に乗り出している。ロイターが十数人の有力専門家を取材して分かった。

専門家の見立てでは、パンデミックから最初に脱却する国は、高いワクチン接種率と感染者が獲得した自然免疫の効果が組み合わさっているはずで、米国、英国、ポルトガル、インドなどが該当しそうだ。もっとも専門家らは、新型コロナは依然として予測不能なウイルスであり、ワクチン未接種の人々に広がる過程で変異を続けると警告する。

ウイルスがようやく獲得した免疫をすり抜ける形に進化してしまう、いわゆる「ドゥームズデー(終末)シナリオ」を完全に否定する向きも見当たらない。ただ、多くの国が向こう1年間にパンデミックの最悪局面を抜け出せるとの自信は、専門家の間で深まりつつある。

世界保健機関(WHO)で新型コロナ対応を主導している疫学研究者、マリア・バンケルコフ氏は「今から来年末までの期間に、われわれはこのウイルスを制御し、重症者と死者を大幅に減らせると想定している」とロイターに語った。

そうしたWHOの考えは、今後18カ月のパンデミックがたどる最も蓋然(がいぜん)性が高い経路を専門家と検討した結果に基づいている。来年末までにWHOが目指すのは、ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高めること。バンケルコフ氏は「この段階に達すれば、疫学的に(今とは)非常に異なる状況になるだろう」とみる。

WHOが10月26日に公表した報告書によると、世界のほぼ全ての地域で8月以降、新型コロナウイルスの感染者と死者は減少が続く。例外は欧州で、ロシアやルーマニアといったワクチン接種率が低い国や、マスク着用義務を解除した国・地域をデルタ株の新たな感染の波が襲った。デルタ株は、ワクチン接種率こそ高いが、極めて厳格なロックダウンを実施したため自然免疫がほとんど得られなかった中国やシンガポールなどでも感染者が増えている。

ハーバードT・H・チャン公衆衛生大学院の疫学研究者、マーク・リプシッチ氏は「(エンデミックへの)移行は各地域で違ってくる。なぜならそれは自然感染による免疫を獲得した人の数と、当然ながら国ごとにとてもばらつきがあるワクチン配分量に左右されるからだ」と述べた。

複数の専門家は、米国のデルタ株感染の波は今月で峠を越え、これが最後の大規模な感染急増局面になると見込む。米食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブ氏は「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまりこのウイルスが米国で持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」と説明した。

ワシントン大学の疾病予測分野の有力な専門家の1人、クリス・マレー氏も、米国のデルタ株感染急増は今月で終わり、新たに大きな存在となるような変異株が出現しなければ、来年4月にはコロナ感染症の収束が始まるとみている。

パンデミック局面の規制撤廃に伴って足元で感染者が急増している英国などでも、ワクチンのおかげで入院患者は増えていないもよう。インペリアル・カレッジ・ロンドンの疫学研究者、ニール・ファーガソン氏は、緊急事態としてのパンデミックは大方が過去の話になったと言明した。

<緩やかに改善>

新型コロナウイルスはこれから何年も、マラリアのような他の風土病と同じく、人々に病気や死をもたらす大きな要因となり続けるだろう。WHOのバンケルコフ氏は「エンデミックは(ウイルスが)無害になるという意味ではない」とくぎを刺した。

一部の専門家は、新型コロナウイルスがいずれ、ワクチン接種率の低い地域で感染が急増するはしかのような存在になると話す。インフルエンザのように、より季節性がある呼吸器疾患となりつつあるとの声も聞かれる。また別の専門家によると、新型コロナウイルスは次第に致死率が低下し、主に子どもが感染する方向に進んでいく可能性があるが、そうなるまでに何十年もかかる可能性があるという。

インペリアル・カレッジのファーガソン氏は、英国では新型コロナウイルスのために呼吸器疾患の死者が長期平均を超える状況があと2─5年続く半面、それで医療提供体制がひっ迫したり、社会的距離を確保する措置が再び求められたりする公算は小さいとの見方を示した。

同氏は「進化は緩やかに進んでいく。われわれは新型コロナウイルスをより永続的なウイルスとして扱うことになる」と述べた。

新型コロナウイルスの動向を追ってきたフレッド・ハッチンソンがん研究センターの計算ウイルス学者、トレバー・ベッドフォード氏は、米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算した。

その上で、新型コロナウイルスは変異を続けそうなので、最新の流行株に狙いを定めたワクチンを毎年接種しなければならなくなるとの見通しを示した。

(Julie Steenhuysen記者)

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