1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

焦点:AI安全サミット、早くも米・欧・中が覇権争い 遠い合意到達

ロイター / 2023年11月8日 11時19分

 11月3日、英政府が主催した初の「人工知能(AI)安全サミット」後、スナク英首相は一連の画期的な合意に至ったと、その成果をたたえた。ロンドンで2日、代表撮影(2023年 ロイター)

Martin Coulter Paul Sandle

[ロンドン 3日 ロイター] - 英政府が主催した初の「人工知能(AI)安全サミット」後、スナク英首相は一連の画期的な合意に至ったと、その成果をたたえた。しかし、世界的なAI監視への道のりは、まだ長い。

2日間の討議では、米実業家イーロン・マスク氏や対話型AI「チャットGPT」を開発したオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が、ハリス米副大統領やフォンデアライエン欧州連合(EU)欧州委員長と肩を並べ、AIに関する今後の規制について話し合った。

中国を含む28カ国の首脳が、AIのリスクを認める共同声明「ブレッチリー宣言」に署名し、米英は独自のAI安全機関を立ち上げる計画を公表。来年、韓国とフランスで2回のサミットを開くことも発表された。

AI規制の必要性については一定のコンセンサスが得られたものの、具体的な方法や、だれがその取り組みを主導するのかについては意見の相違が残っている。

スナク氏は、電気自動車(EV)大手テスラ創業者のマスク氏を迎えることができたことは「特権的であり、興奮している」と語った。だが、EUの議員らは、米国という一国の少数企業が技術とデータを多く保有し過ぎていると警鐘を鳴らした。

フランスのルメール経済・財務相は記者団に「全ての技術、民間企業、デバイス、スキルを一つの国だけが持つことは、われわれ全員にとって失敗となる」と語った。

一方、英国はEUのAI法と対照的な軽いタッチの規制手法を提案することで、EUと一線を画した。最終決定に近づいているEUのAI法は、「リスクの高い」アプリの開発業者に対し、より厳しい管理を課す内容だ。

欧州委員会のヨウロバー副委員長は「私はわれわれのAI法を売り込むためにここに来た」と述べた。

ヨウロバー氏は、他国がAI法を丸ごとコピーするとは思っていないが、世界的なルールについて何らかの合意が必要だと指摘。「民主主義の世界が規則の作り手(ルールメイカー)ではなく、規則を受け入れざるを得ない方(ルールテイカー)になれば、闘いは負けだ」と述べた。

出席者らは、米国、EU、中国の3大勢力が、それぞれの覇権を主張しようとしたと述懐した。

英国が1週間前にAI安全機関を発表したタイミングで、ハリス米副大統領が米国独自の同様の機関を公表したことは、スナク英首相を出し抜く行為だとの声も聞かれた。

一方、中国がサミットに参加し、「ブレッチリー宣言」に署名したことを、英国政府は成功として喧伝(けんでん)した。

中国・科学技術省の呉兆輝次官は、AI統治についてあらゆる方面と協力する意思を示す一方、 「AIの開発・利用について、各国はその規模に関係なく同等の権利を有している」とくぎを刺した。中国と西側諸国との緊張関係を示唆するものだ。

多くの出席者によると、非公開の議論では、オープンソースAIの潜在的なリスクというテーマが繰り返し取り上げられた。

一部の専門家は、オープンソースのモデルがテロリストによって化学兵器の製造に利用されるばかりか、人間が制御できない超知能を生み出す可能性さえあると警告している。

ロンドンで11月2日に開催されたライブイベントで、マスク氏はスナク首相と対談し「オープンソースのAIが人間レベルの知性に近づき始めるか、あるいはそれを超える時が訪れるだろう。それについてどうすればいいのか、私にはよくわからない」と話した。

AIの生みの親、ヨシュア・ベンジオ氏はオープンソースAIについて、ロイターの取材に対し「悪者の手に渡り、邪悪な目的で改変される恐れがある。このような強力なシステムをオープンソースで公開しておいて、なおかつ市民を適切なガードレールで守ることはできない」と警鐘を鳴らした。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください