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アングル:気候変動でHIV感染拡大リスク、売春余儀なくされるアフリカ女性

ロイター / 2024年6月9日 8時10分

3月以来、アフリカ東部の一部は豪雨で浸水し、何十万人もの人々が避難した。気候変動危機がもたらした飢餓は女性や少女を性的搾取に追いやり、HIV感染のリスクを高めるという、目に見えない脅威を生んでいる。写真はナイロビで4月、川が決壊して家屋が損壊した後、がれきの中で持ち物を探す住民ら(2024年 ロイター/Monicah Mwangi)

Nita Bhalla

[ナイロビ 6日 トムソン・ロイター財団] - ケニアの首都ナイロビのカワングワレという非正規市街地で野菜を売るビバリーさん(23)は、厳しい現実に直面している。数年ぶりの大規模な洪水により、小さな家をはじめ持ち物一切を失った。2児の母である彼女は今、飢えに襲われ、性交渉と引き換えに食料を手に入れようかと考えている。

ビバリーさんは「仕方なくそうした人々を知っている。エイズなどのリスクは分かっているけど、何もかも失った今でも子どもたちに食べさせなければならない。今は神様助けて、と祈っている」と、トムソン・ロイター財団に語った。

3月以来、アフリカ東部の一部は豪雨で浸水し、何十万人もの人々が避難した。アフリカ大陸は気候変動の影響の最前線にあり、今年は東部で洪水が起こっただけでなく、西部は熱波に、南部は干ばつに見舞われた。

気候変動危機がもたらした飢餓は女性や少女を性的搾取に追いやり、エイズウイルス(HIV)感染のリスクを高めるという、目に見えない脅威を生んでいる。

保健衛生の専門家らは、この危機がHIVとの闘いにおける長年の進歩を逆行させ、せっかくの成果が水泡に帰す可能性があると警鐘を鳴らす。

エイズの問題に取り組む世界60の慈善団体から成るネットワーク「フロントライン・エイズ」が昨年実施した調査によると、気温が予測通りに上昇し続けた場合、サハラ以南のアフリカでは2050年までにHIV感染者数がさらに1600万人増加する可能性がある。

幹部のデービッド・クラーク氏は「気候変動の影響によって、HIVに関する数十年の進歩が帳消しになることを本当に懸念している」と語った。

<危険な行動>

サハラ以南のアフリカでは、40年以上前のHIV発見以来、取り組みが大きく前進してきた。例えば東部と南部では2010年以降、新規感染が57%減少した。

しかし国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、この地域は依然として世界で最も感染者が多く、世界の感染者3900万人のうち2560万人を占めている。

サハラ以南のアフリカでは、15―24歳の新規感染者の77%以上が思春期の少女と若い女性であり、感染確率は男性の3倍以上に上る。

慈善団体幹部は「彼女たちは経済力もなく、適切な教育も受けていないため、コンドームを使って欲しいと交渉することさえ難しい」と語った。

UNAIDSのデータによれば、サハラ以南のアフリカでHIV罹患率が高い地区のうち、思春期の少女や若い女性のためのHIV予防プログラムを実施しているのは約42%に過ぎない。

その上、自然災害によって少女らは働くための学校中退や早婚を余儀なくされたり、お金や食料、水と引き換えの性的搾取に遭っていると、援助活動に当たる人々は言う。

非政府組織(NGO)オックスファムのジンバブエ・ディレクター、ズビッザイ・マブルツェ氏は「干ばつや食糧難の際、女性や少女たちが食卓に食べ物を並べるために危険な行動に出るのを目の当たりにしてきた」と語る。売春のためにバーを訪れたり、井戸で長い行列に割り込ませてもらったり給水ポンプを使わせてもらったりするのと引き換えに性交渉を行うといった行動だという。

また、水や食べ物を確保するため、以前より長い距離を、往々にして涼しい夕方に歩かなければならないため、性的暴力とHIV感染のリスクにも直面しているとマブルツェ氏は語った。

研究者らも同意見だ。ブリストル大学が2月に行った調査によると、レソト、エスワティニ(旧スワジランド)、ザンビア、タンザニア、ウガンダの5カ国では、干ばつが食糧難と貧困をもたらし、農村部の女性たちを売春に駆り立て、HI感染のリスクを高めている。

<気候変動対策から抜け落ちるHIV>

保健衛生専門家や援助関係者によると、気象危機におけるHIV感染の予防、検査、治療という観点は見過ごされており、ほとんどの国の国家災害リスク軽減計画には含まれていない。

HIV対策に当たる組織は、災害時に人道支援組織と連携し、感染予防措置として現金や食糧、清潔な水を女性に提供する必要がある。

ザンビアのカトリック・リリーフ・サービシズの幹部、チャリルウィ・チュング氏は、災害時には脆弱(ぜいじゃく)なコミュニティーに対する食料、栄養、保健サービスへの支援を強化する必要があると訴える。

「気候変動問題への取り組みには多大な投資と関与が必要なため、大半の人々がHIVとの関連というテーマまでは掘り下げたがらない」とチュング氏は説明。「しかし気候変動がHIVとエイズに関する前進を逆行させかねない証拠は十分にある。手遅れになる前に、私たちは今行動し、その成果を守る必要がある」と語った。

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